魔女ペス・カンポサント(墓の魚)
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魔女ペス・カンポサント(墓の魚)

魔女達のユーモラスな物語

■ぺス・カンポサント(墓場の魚)
カスティーリャ地方出身
ドイツ文学の研究者。

いつも黒い服を着ているのは、
敬愛している詩人インゲボルグ・バッハマン(詩人)に対して
喪に服している為。

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彼女は三人姉妹の末っ子として生まれた。
裕福な両親から、姉妹の中で最も人形の様に愛されたが、
それは彼女の最も気に喰わない事だった。
しかし、詩が好きで、詩学を学んでいた彼女は、
ある日、唐突に悟った。
「私がこの世に生まれたのは、愚かな両親に愛を求め、
自分の本当の姿を見てもらう為じゃない!!
男に愛を与える為でも、
この世の秩序と良識を守っていく為でもない。
私は、私自身が楽しむ為に、この世に生まれた!!」

それからというもの、彼女は自分勝手に生きる様になった。
両親の前では美しい人形を演じた。
美味しいものを一番もらって、
まずい時には一番に逃げるという魔術を彼女は身に着けたのだ。

彼女は寵愛によって得たあらゆる財産で詩学を学んだ。
それを姉達は妬み、口々に末っ子ペスを罵った。
「なんてずるい事!!
自分の事しか考えていない!!
あれだけ愛されておきながら、その恩を返さないなんて!!」
そんな姉達に彼女は言った。
「どうぞ、義理堅く、徳に厚いお姉様方。
親や、世の殿方や、立派な騎士達の為に、どうぞ、その身を捧げて下さい。
私は自分の事しか考えていないので失礼します。」

ある日、彼女が教会の前を通ると、
そこにキリストの磔刑像が捨てられていた。
彼女はその像に話しかけた。
「なんて、愚かなキリスト!!
人間の為に自らを捧げるなんて!!」
するとキリスト像は言った。
「それは違う。娘よ。
私は自らの為に行ったのだ。お前の様に。」
ペスは驚いて言った。
「私の様にだって?
私は悪女で、貴方は聖者さ!!」
するとキリスト像は言った。
「そうだ。だが、自らの為に行う者は、
少なくとも自分を救うのだ。
お前の姉達は一体、誰を救うのだ?
私にそれを求めてばかりで。」
それは、彼女が自分の中で妄想した会話だったかもしれないが、
彼女はすっかり機嫌を良くして歩きだした。
「私はキリストとおんなじだ!!
自らの為に歌って、求めて、生きる。
こんな神々しい事がありますかね!!」

やがて彼女が自分勝手に、自分の為に行った詩の研究は、
沢山の人を助け、沢山の人を救った。
一方、姉達は、他人の為に自分を抑え、善良に生きた。
そして、その分、他者に見返りを求め、それが得られないと知るや、
罵り、呪い、罵倒した。
また、自分の娘達に自分と同じ目に遭う事を求めた。
結局、姉達は誰も救わなかった。

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スペイン・オペラ楽団「墓の魚」
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