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月と六ペンス サマセット・モーム:著
https://www.shinchosha.co.jp/book/213027/ 原田マハのリボルバーを読んで、ゴーギャン、ゴッホをもう少し深めたいと思い手にとった。この物語がゴーギャンに着想を得た…
福田村事件 森達也:監督
https://www.fukudamura1923.jp/ この映画は物語はフィクションである。ただ、100年前に日本人9名が集団リンチを受けて死亡したという事は確かである。本作ではなぜ集団リ…
月と六ペンス サマセット・モーム:著
https://www.shinchosha.co.jp/book/213027/
原田マハのリボルバーを読んで、ゴーギャン、ゴッホをもう少し深めたいと思い手にとった。この物語がゴーギャンに着想を得たのは間違いないのだろうが、実際には全く独自の物語であった。本書の扱うテーマは現代人にとって益々、切実なものとなっているだろう。また、グローバル化し、画一化されつつある世界においては、決してたどり着け
アンメット ある脳外科医の日記
ほんの少し脳が損傷しただけで、半身が消えてしまったり、性格がガラッと変わったりと、人間というものの存在がいかに紙一重の領域にあるのか。自分が自分であることの奇跡を思い知らされような物語だった。派手な手術シーンも神業を操るドクターも出てこない。だけど理不尽に抗い続ける人間の苦悩、人と人が繋がる喜び、記憶や理性がなくなっても人間に最後に残る愛、心、そんな濃密な人間ドラマを見せてもらった。自分が自分とし
もっとみるリボルバー 原田マハ:著
最後までピンとこないというか、カタルシスを感じるとはいかなかった。そもそも、ゴッホもゴーギャンも名前くらいしか知らないというのもあったかもしれない。加えて、ゴッホ視点でもゴーギャン視点でもない、美術史の研究者視点の話では尚更である。私もまた、なぜ?と素朴に問いかけた警官のように、蚊帳の外に置かれっぱなしの物語であった。
悪は存在しない 濱口竜介:監督
連休中とはいえ、昼の回が満席だった。濱口監督にファンがしっかりついている事が見てとれた。
コロナ後の世界を描いているが、率直に現代人は猫も杓子もここまで心が病んでいるんだということを思い知らされる。これは自分の体感ともズレていない。と同時に、その病みに同居する現代人の思考の浅さ、軽薄さというものも炙り出している。派手ではないが人間存在に向き合った丁寧な物語の運びが感じられる。だからこそ、見た人全
ドライブ・マイ・カー 濱口竜介:監督
展開自体は結構ベタで、不倫してるんだろうな、死ぬんだろうな、最後は自分が演じるんだろうなという展開はことごとく予想通りだった。
ただ劇中劇の『ワーニャ伯父さん』のセリフと登場人物の心情をリンクさせる部分は非常に巧みだった。
演出家である家福は、役者が辟易するほど本読みをさせ、彼の表現によるとテキストが語りかけてくる状況にまで芝居を昇華させる事を求める。しかし、彼自身が真実を見ようとしていなかった
私にとって神とは 遠藤周作:著
遠藤周作さんにとって神とは何なのか、その答えは神とは働きである。こんなにも神を分かりやすく表現した例はないのではないか。とても腑に落ちた。人間誰しも神の導きによりとしか表現できない状況に遭遇したことがあるだろう。その瞬間、確かに神は存在したと言えるのかもしれない。
映画 ゴールデンカムイ 久保茂昭:監督
何の予備知識もなく見に行って、物語の中盤あたりで気がついた。あ、これ絶対シリーズものだと。後から知ったが、コミック3巻分の内容だったらしい。シーズン5くらい軽く行きそうなイメージだった。エンタメとして十分面白かった。
ただ、2月3連休明けにふらっと映画を観に行こうとして、シネコンくらいしかない地方都市では他に観たいと思う映画がないというのは何とも物足りない。あるのはアニメかマンガ原作か、アイドル
福田村事件 森達也:監督
https://www.fukudamura1923.jp/
この映画は物語はフィクションである。ただ、100年前に日本人9名が集団リンチを受けて死亡したという事は確かである。本作ではなぜ集団リンチが起こったのかをかなり丁寧に描いている。もちろんこれは一つの仮説にすぎない訳だが、作品に登場する福田村が100年後の今の日本と大差ない事に驚愕する。もちろんこれは、製作陣の目を通した日本の姿だが、笑い
君たちはどう生きるか 宮崎駿:監督
あの内容で物語を途中で破綻させず、最後までもっていったというのは流石の一言。アニメーションも素晴らしい。ただ、殆どの人物の心情がよく分からなかった。もう少し踏み込んで言うと描かれていなかったように思う。監督の中にはあったのかもしれないが、それを感じ取るのは不可能だった。近年の宮崎作品全般に言えるが、登場人物に魅力が感じられない。世界観を表現する為のコマに成り下がっているような気がする。
ハンチバック 市川沙央:著
上手いなと思う。ただ、好きか嫌いかと言えばあまり好きではない。作者のインタビューでこの作品は最初から芥川賞を想定していたという話があったが、選考委員のコメントを読むとまんまんとその術中に嵌ったなという感じがした。かなり強かな印象を受けた。ただ、誰にでも取り上げられるテーマ・題材ではないだけに、そのインパクトを超えて物語へと昇華出来ていたのか?選者は、本来その視点から評価すべきではなかったのか。こん
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