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モテ学4「笑顔の秘密」

素敵な笑顔の男がいた。
彼の笑顔は周囲を明るくした。
彼が微笑むと皆がつられて笑顔になった。
それがモテるポジティブな笑顔である。
モテる男の笑顔には、そういう意味がある。

どういうことか?

例えば……。
男が笑顔で笑っている。
彼の笑顔にも素敵な魅力があった。
彼は何を見て笑っているのだろう?
彼の目線を辿っていくと、横転した車の側で泣き叫んでいる人々の光景があった。
それを見た私は彼に恐怖を覚えた。

笑顔とは共感だ。
同じテーマで楽しいことを共有できて初めてポジティブな笑顔は真価を発揮する。
モテる男は、いや、モテる人々は、皆この笑顔を獲得している。
協調性のある共感。
周囲を明るくする笑顔には、そういう力があるし、逆に皆が笑っている時に、まったく笑っていない人がいるのは、協調性の笑いに疎いと言える。
なにも、それが悪いというわけではない。
私も若い頃は、これに近い人間だったし、現在もいくらか、その片鱗が残っている。

映画館が分かりやすい。
皆が泣き出しそうないわゆる、「泣きどころシーン」で、思わずププっと笑えてきたりする。
連れに不謹慎と注意を受ける。
笑いはポイントを間違えると、相手に不信感を抱かせ、命に関わる時は恐怖すら与えることになる。

笑顔にもいくつかの種類がある。
大笑い、高笑い、爆笑、せせら笑い、ほくそ笑む、嘲笑、微笑、泣き笑い。
他にもいろいろとあるが、やはりモテる男の笑顔は、屈託のない無垢な笑いだ。
裏のない優しい笑いは、周囲に安心感を与える。
私は仕事柄、笑顔を徹底的に研究した。
お客の中には、仏頂面の不満顔の人もいる。
そういうお客と会話を続けるのは至難の技だ。
だが、笑顔を引き出すためのキーワードが、やはり笑顔なのである。
私は笑顔で相手を探りながら会話を始めていく。最初はいわゆる「テッパントーク」をぶち込むが、まったく笑ってくれない。
大体のお客は、最初のツカミで8割は笑顔に変える信頼ネタも通じない。
なるほど、この人は少し協調性に欠けているのだと解る。
ならば、と私はトークの方向性を変えてみる。
私自らが話を進めるのではなく、相手にトーク権利を渡してしまうのだ。
相手には質問だけをする。
その時も、決して笑顔は忘れてはいけない。
笑顔は、無抵抗の意志表示や、敵意がないと思ってもらえる作用もあるからだ。
相手にリラックスしていただき、彼の「ツボ」を捜し当てる。
15分ほと話すと、彼はイヤホンが好きらしい。
私はイヤホンの知識はないから、ただ感心して聞く側に回る。彼は満面の笑みで会話を進める。私は笑えなくなってくる。
これは狂気だ。
なにが面白いのか、まったくわからないのだから。
するとそこに、興味津々に聞いていた女性がカットイン。
彼女もまたイヤホンが大好きのようで、熱心に彼の話に耳を傾ける。
私は、ゆっくりと距離を空ける。
いつしか二人はイヤホンという共通の共感で、笑顔が溢れていた。あの仏頂面の不満顔が、今ではモテ男の笑顔だ。
不思議なものだ。

笑顔ができるのには、他者との共感が必要だ。
だが、笑顔を引き出す内容によっては、安心から恐怖まで表現ができてしまう。

さて、皆さんは笑顔で相手に安心感を与えていますか?




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