記事一覧
自分を大事にしたら自分を失う:「岡本太郎展」を観て
上野の東京都美術館で開催中の岡本太郎展を観てきました。岡本の人間性のようなものも感じられる、とても面白い展示でした。
彼の絵画は、正直言ってあまり好みではありません。ただ、今回たくさんの絵画を観ることで、彼の内面のエネルギーを晩年まで絵画で表現し続けたことに、感銘を受けました。どんな天才でも、齢を重ねるにつれて内面のエネルギーは衰え、よく言えば枯淡の境地に達するものでしょう。彼はそうではありませ
欲求7段階説(藻谷説)に思う
人は何らかの欲求に従うことでしか、生きることはできません。では、欲求とは何でしょうか?
マズローの欲求5段階説は有名です。
生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求の順に、人は求めるというものです。定番中の定番ですのでいいんですが、なかなか腹に落ちるとまでは(少なくとも私は)いきません。人間はもっと複雑だと思うからでしょうか。例えば、自分の安全を危険にさらしても、しなければならな
舞台で体感した、心身をコントロールすることの難しさ
何度舞台に立っても、緊張しなくなることはありません。本番の恐怖のようなものがあります。
私はお能の稽古をしており、その成果披露の場として毎年二回ほど舞台に立ちます。昨日が今年二度目の舞台でした。忘れないうちに、自分の内面(心の動き)とそれが外部化した身体の振舞いについて、振り返っておきたいと思います。
舞台は、神楽坂の矢来能楽堂。昨日は二回出番がありました。13時ごろから謡、16時半ごろか
「あわい」を求める:映画「川っぺりムコリッタ」を観て
「川っぺりムコリッタ」。まず、不思議なタイトルです。「川っぺり」はともかく、「ムコリッタ」?
私は最初耳にしたとき、フィンランド語だと思い込んでいました。荻上直子監督のことは、フィンランドで撮影した「かもめ食堂」で知ったのだし、また「キエルトティエ」というフィンランド語を店名にしたカフェによくいくのですが、その響きと何となく似ていると感じたからです。
全然違いました。仏教の時間単位の一つで約4
メンタライゼーション:心がうまくはたらかない時
誰でも失敗した経験はたくさんあるでしょう。齢を重ねてくると、それら失敗経験の多くにみられる共通点のようなものに、気づくようになると思います。
恥ずかしながら告白しますが、私の場合は「時間プレッシャー」です。それは、締め切り時間を守れないという意味ではなく、約束した時間(勝手に自分で決めたもの含め)を守ることに必要以上に敏感になり、予期せぬ理由でそれが危うくなるとそれをプレッシャーと感じてしまい
本を媒介にした対話を通して、ものの見方を変える「読書体験会」
昨年末、「人の顔した組織」(東洋経済新報社刊)という本を出版しました。それを知った旧知のアカデミーヒルズ担当者から、その本の読者会をライブラリー会員向けにやりませんかとのお誘いを受けました。
大変ありがたいお話だったのですが、どのような読書会をしたいのか、すぐには思いつきませんでした。
それまでコロナ禍で他者と直接会う機会が激減したこともあって、いくつかのオンラインでの読者会に参加しました
空間と時間を俯瞰する
達人同士の会話には、興味深いものがあります。
ショパンコンクール第二位のピアニスト反田恭平さんのラジオ番組に、オーボエ奏者の荒木奏美さんがゲスト出演したときのこと。
短い会話ですが、すごく印象的でした。
反田さんは荒木さんの演奏を色気があると表現しています。ここでの色気とは、自分の望みを十分に理解してくれて、「痒い所に手が届く」ような対応をしてくれることだと、反田さんは捉えているようです
よい暮らしとは?:「じゅうぶん豊かで、貧しい社会」読んで
1930年頃、ケインズはこう指摘しました。
技術が進歩するにつれ、単位労働時間当たりの生産量は増えるので、人びとがニーズを満たすために働かなければならない時間はしだいに減り、しまいにはほとんど働かなくてよくなる。そういう時代が100年以内にくるだろう。
もちろんこの予言は当たっていません。なぜでしょうか?
それを探ったのが本書です。
理由は簡単です。
「ニーズを満たす」ことは、
既成概念を打ち破ること:Chim↑Pom展を観て
「変革するには、既成概念を打ち破らねばならない!」と盛んに言われます。では、既成概念を打ち破ることとは、具体的にどういうことでしょうか?
それは、そうたやすいことではありません。想像力と創造性とリスクを取る勇気、そして反対する人々と対話するオープンマインドが必要です。
森美術館で開催中の、「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」を観て、それについて考えさせられました。
Chim↑Po
疑心暗鬼の連鎖:ウクライナでの戦争から
ウクライナでの戦争の情報に触れるにつれ、世界から戦争をなくすことの困難さを痛感します。とても残念ですが、ヒトは戦争をするようにプログラムされてしまっていると思えてなりません。
それは、ヒトは疑心暗鬼せざるを得ない生き物のようだからです。
私の知る限りですが、今回の戦争も、疑心暗鬼が背景にありそうです。以下は、私の想像です。
ロシア:
事実:(2004年、バルト三国がNATO加盟) 2007
生きる意味とは:「夜と霧」を読んで
先日映画「ドライブ・マイ・カー」を観て、人が生き続けることの意味を考えてみたくなりました。そこで、あらためて「夜と霧」を読んでみました。
第二次世界大戦中、ナチスによってユダヤ人強制収容所に入れられ、かろうじて生還した精神医学者ヴィクトール・E・フランクルにより書かれた名著です。強制収容所内の人々の内面を、当事者として、また研究者として記述したものです。死を目前にした究極の絶望の中で、人間はどの