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淡園織葉の短編小説たち

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自作の短編小説をまとめています。 それぞれ10分程度で読めるお話ばかりですので、どなたさまも、お暇な時やちょっと物語を補給したいなというときにご活用ください。
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#ショートショート

【短編小説】キュウリの味噌汁

【短編小説】キュウリの味噌汁

 給食を食べ始めて五分と経たずに思いっきりゲロをぶちまけた吉田の顔を思い出して笑ってしまったのは、妻の香澄が用意してくれた朝食の味噌汁を啜った時だった。
「どうしたの?」と香澄が咎めるような視線を向ける。
 彼女は過去の話を嫌う。思い出話は止そうと思った矢先、娘の沙也加が僕の膝の上にちょこんと座った。
「パパ。何かいいことあったの?」
「どうして?」
「笑ってたから」
「んー、それはねぇ」
 鬼の

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【短編小説】ゆらぎ

【短編小説】ゆらぎ

 どこか、遠くて近くて仄暗い場所に僕はいた。どうやらここでは、文字通りすべてが、文字になる前のすべてが、規則正しく生活していた。
「例えば、あそこを見てみな」
 ここに来て最初に出会った男。ふらふらと寄る辺なく立つ、湯気みたいな男が口を開く。彼が指差した方向に目を凝らすと、そこにはゆらぎがあった。本当に、ゆらぎという他ない、輪郭のぼやけた何かが中空を飛翔していた。泳ぐように、跳ねるように、全てから

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【短編小説】灰と橙

【短編小説】灰と橙

 嵐が来るよ、と君は眉尻を下げながら言う。それはそれとして、行かなければならない用事があったから、僕は制止を振り切って外へ出た。昨夜から降り続く雨は尚も地表を濡らし、もうこのまま乾くことなどないように思えた。そんなことはないと知っているから、それが悲しくて、傘を差さずに歩くことにした。

 目的地は近くの小さな漁港。漁に出る船もなく、静かに水面を打つ雨の音が寂しく響く。開けた緑地の真ん中にぽつりと

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