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財務モデリング Tutorial⑤ - 3 Statement model to DCF/AVP

前回の財務3表model(Operating model)作成の後に行う、DCF法によるバリュエーションの回である。

DCFによるバリュエーションの解説は以前もしているが、前回の記事では文字中心の解説であったため実際にモデルのスクショを多用しながらイメージしやすいようにしている。


DCFシートの組み方

DCFシートの組み方はカッチリとした決まりがあるわけではないが、基本的にトップライン(売上高)、EBITDAからスタートして、アンレバードフリーキャッシュフロー(UFCF)を計算するように組めていればOKである。最もシンプルなイメージは下記のようになる。

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売上高を行として表示しているのは、EV/Revenue マルチプルを事後的に計算することを意図しているためである。UFCFの計算基礎になる売上高、EBITDA、DA、運転資本増減額、CapexはOperating modelから参照されるため緑色で表示されている。なおここでは、Capexは全てMaintenance capexとしてGrowth capexとの区分をしていない(本来であれば、Capexは財務DDレポート等で成長投資と維持投資で区別され、そのうち維持投資を毎期定期的に発生するCapexとしてDCFモデルに織り込む)

今回はバリュエーション基準日を2021年9月7日にしているので、2021Fにおける年間UFCFはプロラタで計算する必要がある。そのために、”Portion of CF"という項目を設けている。なお2022F以降はそのまま1をインプットしてUFCFを計算に反映させる。

次に、UFCFの現在価値と継続価値に関する計算前提条件については、下記のようにDCF Sheetの下でまとめる

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Terminal valueそのものは、割引前の数値をGordon model(永久成長率:PGRを用いて計算する手法)と、Exit multiple(=Terminal EBITDA × Exit multipleで計算する手法)がある。これは上記の図においてGordon model/Exit multipleスイッチを設けることで計算できる。Gordon modelを採用する場合は1を、Exit multipleを採用する場合は2をインプットすればよい。

Baseline Terminal EBITDA exit multipleはエグジットマルチプル法により継続価値を計算する際の採用マルチプルである。

WACCとPGRに関しては、今回は個別の計算過程は論点ではないので割愛させて頂き、Illustrativeな数値として見て頂ければと思う。なおPGRはUFCFに対する成長率であることは理解する必要がある。

今回のモデルでは、プロジェクション最終年度までDAとCapexの絶対値がほぼ等しくなるようにKey assumptionの数値を調整しているので、継続価値計算時点ではDA=-Capexという式が成り立っている。

参考|Exit multipleの設定方法

エグジットマルチプル法を採用する場合のマルチプルの数値をどうするかは論点になりやすい。

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