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逆噴射プラクティス

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ふたりいるだろ?

 10年前だから……中2ぐらいの時か。
 「エコーロケーション」って知ってるか?イルカとかコウモリが音を出して、反射した音でモノの位置を特定するという奴だ。実は訓練すれば人間でも出来る。目の見えない人は杖の音で障害物の位置を特定するそうだ。

 俺は世界まる見えだったかで見て、学校で話してたら山田のやつがソレ出来るっていってな。マジかって疑ってたらアイスとジュースを賭けてやることになった。
 学校

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マッチ売りの中年男性

マッチ売りの中年男性

「マッチ買ってくれんかのう、マッチ買ってくれんかのう」

 ジングルベル、ジングルベル、たのしげなクリスマスソングが流れ、雪降る街中で中年男性は穴の開いた服をまとい、震えながらマッチを売っていた。誰もが中年男性を視界に入れようせずと、子供連れやカップルたちが中年男性の前を去っていった。父に金でも稼いで来いと家をマッチと共に蹴りだされ数時間、このままマッチを売らずに帰ればまた蹴りだされるだけだろう。

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生きる意味おじさん

生きる意味おじさん

 これは私が小学3年生の時の話だ。
 夕暮れ時公園でドッチボールをしていたら、50代ほどの無精ひげを生やした古ぼけた帽子を被ったおじさんが急に近づいてきた。

「君たちなんで生きてるの?」

 私たちは急な質問に驚いて何も答えられずにいた。

「君たちは歴史に残る偉業を為すのでなければ、世界に必要とされる人物でもない。ただ消費され摩耗し、やがて老いて死ぬ人生だ。なんで君たちはそんな人生が待っている

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最強格闘技 禅羅

最強格闘技 禅羅

僕は見たんだ。
不良に絡まれたとき、通りがかったおじさんが突然服を脱ぎ始めた。パンツが宙を舞ったとき、三人の不良は倒れていた。
そして僕は知っていた。おじさんがかつてパンツを脱いで反則負けした格闘家であることを……

神の料理人マサシ

神の料理人マサシ

「かつてここは何もないのに作物が育つってんのに気づいた奴がいてな。それで人を集めて村を作ったんだが、しばらくして神を名乗る奴が現れた。ここは私の土地だ、使うなら貢物を寄越せと。その貢物が人だったんだが、当時の村長が頭を利かしてな。今は人が少ないから30年待ってくれ、そしたら村も人が増えるからまとめて出すってな。そして今が30年目、また神が現れた。まとめて300人差し出せだとよ。そんなの知らんと今の

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殺し屋ノボルのでたらめ暗殺術

殺し屋ノボルのでたらめ暗殺術

「ノボルや、正しく生きるのは大事じゃ。じゃが正しいだけでは人生はつまらん。時にはでたらめに生きるべきじゃ」
「それってどうするの?」
「占いはでたらめの塊じゃ。たまにはアレに従うといい」

――

「焼きが回ったな……」

 パンツ一丁で狭い台所に立ち、汚れたコップに水を注ぎながら今日見た夢をぼんやりと思い出していた。子供の頃の夢を見るなど、俺はよっぽど現実逃避したいらしい。
 ロキソニンを二錠飲

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練習:あらすじ アイアムマザー

練習:あらすじ アイアムマザー

今読んでる本「面白いストーリーの作り方+物語が書けないあなたへ ストーリーデザインの方法論 」小説の練習法として映画のあらすじを書くというのがあった。

表現は違うものの逆噴射聡一郎センセイも映画のプロットを書く練習は良いことを語っていた。

ということで見た映画アイアムマザーのあらすじを書く。当然ネタバレであるので注意。あと一回見た後曖昧な部分を見直した程度なので間違ってるところはあるかもしれな

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続きを探して

続きを探して

「おい!全員死んだぞ!どうなってんだ?」

「全員じゃない。半分だ」

「かわらねぇだろ、さっさと続きだせ」

「ない。やる前にこっちに来たからな」

唖然とした顔を心太郎に向けた。

「マジかよ。じゃあ行くしかねぇな」

「どこに?」

「お前の国に決まってる」

竜は立ち上がり、翼を左右へ伸ばした。

「ハァ?俺も帰り方がわからんのだぞ」

「探しまわりゃ行く方法ぐらい見つかるだろ。乗れ」

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戦え!スモウアーマー!

戦え!スモウアーマー!

「ノコッタ!ノコッタ!」二人の野良力士が人力主義者用コンビニの強化ガラスをぶちやぶり襲撃!「アイエエエエ!」初老の男性店員は恐怖のあまりレジでうずくまる。

2050年、相撲バブルがはじけ、部屋に所属しない大量の野良力士が生まれた。2050年の相撲は30年前とは比べ物にならないほど、過酷な戦いとなり、遺伝子レベルの改造を求められた。それゆえ力士をやめても、一般人には戻れなかった。力士は生きるために

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紅茶パルプまとめ!

逆噴射小説大賞の最終選考に残れなかったのは残念だが、俺にはまだ「#紅茶のある風景 投稿コンテスト」がある!大賞発表前に紅茶パルプ振り返るぞ!

最初は敵キャラがお嬢様だったり、紅茶を丁寧に入れるシーンがあったりと何回も書き直した。一度今とほぼ一緒のやつが出来てもしっくりこなかった。そんな中とう腐さんの茶修羅のパワーに圧倒され、バイオレンスシーンを増やして、納得のいく形になった。

その後さまざまな

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女ターザン:クリスマスパーティは危険がいっぱい!



今日はクリスマスパーティ!広い会場、一流シェフの料理、山のように詰まれた世界各地のフルーツ、きらめく衣装の美男美女たち。マークに連れられて来たマリアは、はじめてみた光景に心を躍らせていた。

「スゴイわ!マーク!こんなクリスマスパーティ、はじめて!」
「伯父さんは大金持ちなんだ。僕には見慣れた光景さ」

マークが得意げな顔で言うと、会場が突然暗くなり、スポットライトが壇上の一点に当たる。キレ

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魔法少女応援隊!心に響け男の雄叫び



ゴワァアアアアアア!

ウォオオオオオオオ!

トラックほどの体格を誇る魔犬のうなり声に、男たちは肌と肌を合わせ、肩をつなぎ叫ぶ。両者一歩も引かず、火花を散らす。そんな激闘の後方で、魔法少女サオリが困惑していた。

知らない半裸のおじさんたちが、応援し始めたと思えば犠牲者が出る。そんな光景を目の当たりにしても下がらず前に出る。信じられないことの連続、ただ態勢を立て直すに機会は得た。

息を整

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通りゃんせ

通りゃんせ

これ15年くらい前の話なんだけどね。私の友達がケータイの着信音を『通りゃんせ』にしてたんだよね。
とーおりゃんせ、とーおりゃんせってやつ。一度ぐらい聞いたことあるよね?

それでさ、信号で待ってるとき、『とーおりゃんせ』ってケータイが鳴りだしたの。
カバンの中に入れてたらしくて、取り出すのに手間取ったみたい。
その時隣に腰の曲がったおばあちゃんがいたらしいんだけど、その人ね、『通りゃんせ』が鳴り出

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午後のティー劇場こどもスペシャル 茶葉を踏んだ娘

午後のティー劇場こどもスペシャル 茶葉を踏んだ娘

今までのあらすじ
お金持ちの家に養子にいった、わがまま娘インゲルは、親のすすめで故郷へ帰る。途中水たまりがあり、靴が汚れるのを嫌ったインゲルは、お土産にと持たされた茶葉をばらまき、その上を歩こうとする。足を茶葉に置いた瞬間、水たまりの中に引きづりこまれ、地獄まで落ちたのだった

茶葉を踏んだ娘
茶葉を踏んだ罪で
地獄に落ちた
神様に背いたインゲル
神様に背いたインゲル
地獄に落ちた

インゲルは地

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