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戦え!スモウアーマー!

「ノコッタ!ノコッタ!」二人の野良力士が人力主義者用コンビニの強化ガラスをぶちやぶり襲撃!「アイエエエエ!」初老の男性店員は恐怖のあまりレジでうずくまる。

2050年、相撲バブルがはじけ、部屋に所属しない大量の野良力士が生まれた。2050年の相撲は30年前とは比べ物にならないほど、過酷な戦いとなり、遺伝子レベルの改造を求められた。それゆえ力士をやめても、一般人には戻れなかった。力士は生きるために成人男性の2倍以上のカロリーが必要となる。食費が払えぬ野良力士は、セキュリティが甘い人力主義者用コンビニを襲撃し、日々の糧を得ていたのだった。

「アニキ!やっぱり人力主義者用コンビニはいいっすね。メタル警備員はいないし、手作り食品が大量にある」小柄な力士が手作り唐揚げを食べながらいう。「無駄口叩かず、さっさと袋に入れろ。サツが来たら逃げるのが面倒だ」頬に十字傷のある力士が、手当たり次第、手作りおにぎりを袋に詰めながらいった。

「死ね!てめぇら!」休憩室で状況をうかがっていたロン毛の若者店員が、殺人用ショットガンを十字傷のある力士に発射する。全弾命中!だが傷一つ負ってない。鋼鉄をも穿つ張り手に耐える力士の肌は、そこらにあるショットガンではダメージにならないのだ。「象撃ち用の銃でも持ってくるんだったな!」ロン毛店員の顔面に強烈な張り手が飛ぶ!破裂!

「あーあ、アニキの手を煩わせて。おい、ソコのおっさん。もっと飯あんだろ。裏にあるやつ全部もってこいや」小柄な力士はうずくまる初老の店員の背に足をのせる。「全部持っていかれたら潰れてしまいます。許してください!」必至の懇願。だが鼻で笑い足を大きく振り上げる。「ならお前に潰れてもらうかな!」店員の背中に危険な四股が振り下ろされようとしている!このまま店員は潰され、この非道がまかり通るのか!

CRAAAAAASH!!!

コンビニの壁を突き破り、白い物体がぶちかましで小柄な力士を吹き飛ばし、ドリンクコーナーにぶつける。ペットボトルがぶちまけられる。「な、なにが……」小柄な力士は状況が理解できないままダウン!

その物体は2m半ばの大きさをほこり、曲面を多用した真っ白なボディ。そして伝説の力士「雷電爲右エ門」を模して造られていた。増加する相撲犯罪を受け、開発された対力士用兵器スモウアーマーである。

「今すぐ略奪行為をやめなさい。殺人許可が出てますよ」威圧的機械音が店内に響く。だが十字傷の力士は怯まない。「出来は良さそうだが、俺はメタル警備員を何体も破壊してきた。スクラップにしてやるぜ!」

「ドスコイ!」ロン毛店員を殺害した危険な張り手が、スモウアーマーの頭部に飛ぶ!命中!だがスモウアーマーは潰れず受け止めた!力士は目を見開き、驚愕した。実物の力士とも劣らない弾力性ある素材で作られ、この程度ではビクともしない。スモウアーマーはお返しとばかり、殺人張り手を顔面に叩き込む!力士は吹き飛び、冷凍食品コーナーに叩きつけられ、餃子が飛び散る!だが顔は潰れておらず、闘志も消えていない。

「このまま勝負を決めます!」スモウアーマーの乗り手花田は、外で控える移動土俵に通話し、背部ブースターを開きロケットぶちかましで勝負を決めにかかる。「待て!そいつは!」司令の二子山が何かに気付いたがすでに遅し!

ブースターで急接近!スモウアーマーが力士に触れたその時である!「モラッタ!」力士が不敵な笑みを浮かべ、強力な電流が走る!頬に十字傷を持つ力士、その正体は相撲リーグでも活躍したプロ力士、江歴(エレキ)であった。生体電気を利用し相手を痺れさせる力士であったが、行司の判定を気に入らず感電死させ、そのまま逃走し行方不明になっていたのだった。

「このままスクラップだ!」逃がさぬよう組み付く。精密機械は電気に弱い!スモウアーマーは行動不能!かろうじて内部まで電流は流れていなかったが、このままでは死は免れない。花田は必死に脱出方法を考え……ひらめく!

緊急用アーマー脱着装置を作動!胸部アーマーが前にせり出し、江歴を弾き飛ばす。そして再び装着。性能が7割まで低下しているが闘える。

「そいつに関するデータを送る。スモウアーマーが正式採用されるかの大事な戦いだ。これ以上無様は晒すなよ!」二子山司令の言葉をしっかり抱き留め、花田は敵を見据える。触れれば再び電流。覚悟を決めた花田は、腰を落とし、股を広げて蹲踞の構えを取る

「今度こそスクラップだ!」まっすぐ江歴が突っ込んでくるが動かない。ただ腕が届く範囲に来た時、張り手を突き出した。「モラッタ!」突き出した腕を掴み、電流を流そうと試みる。だが流れるより早くスモウアーマーの腕が取れた。

取れた断面から火が吹く。ロケット張り手だ!急加速し、張り手は江歴を再び冷凍食品コーナーに叩きつける。「ガアアアッーーー!」江歴は獣のような唸り声を上げ、必死にロケット張り手を外そうと両手で掴むが、はがれることはない。壁を突き破り、江歴ごと太陽へ向かって飛んでいく!空中爆破!江歴の肉片が四方八方へ飛び散る。

「やりました!司令!相撲反応はゼロです!」「回収班を向かわせる。それまで待機せよ」「なら頭外していいですか。電流のせいで換気が悪くなったみたいで息苦しいです」司令から許可をもらい、頭部パーツが左右に分かれた。戦いが終わったことで初老の店員は、おそるおそるレジから出てきた。そこで露になった顔を見る。そこには可愛らしい黒髪のポニーテールの女性がいた。

「あっ!そこにいたんですね。今から人が来ますから待機してください。」彼女は笑顔でいった。

【完】

さぽーとすると映画館にいくかいすうが増えます