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しらふじ・あめの良いnote
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閉鎖病棟にふせんを100枚貼った夜

閉鎖病棟にふせんを100枚貼った夜

大学4年、11月。わたしは閉鎖病棟にいた。
真っ白の部屋の、真っ白のベッドの上。

10月2日朝7時、ほとんど毎日働いていた塾の仕事をクビになった。
その後、お昼を迎える前に、わたしは睡眠薬とお酒を飲んで倒れた。

救急車を呼ばれたわたしは、そのまま病院へ搬送された。
記憶は断片しかない。
さいわいにして飲んだ量が少なかったので、点滴を一晩して、退院した。

2日目の朝に、お医者さんに「初めまして

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閉鎖病棟体験記 ~暇つぶし編~

閉鎖病棟体験記 ~暇つぶし編~

わたしが閉鎖病棟である4病棟、通称「4病」で2週間の間にした暇つぶしをご紹介します。

ネットもなくて、自由にどこかへ行けない鍵付きの世界。
思ったより、結構、苦痛ではなかった。

文を書くこれが1番長かった。大量のルーズリーフと多種多様なペンを持ち込んで、ずっと日記だったり、思い出したことを書いていました。
何も浮かばない日には文を書き写しました。とにかく書きました。
日記は2週間で224ページ

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「エモい」を知ったのは深夜の渋谷で

その人はTinderで「今日は朝までマッチングした人と通話し続ける」をしていた日の4人目でした。5時半。朝でしたね。

薬を飲んでから眠るまでの記憶が消えてしまうというやばい副作用を抱えたまま通話するのは楽しすぎました。わたしの知らない、わたしを知っている人がこの世にどんどん増えていきます。

その人と終電後の渋谷で会って、大衆的な飲み屋で哲学の話をしました。たまたま大学が同じなのが面白かったので

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イマジナリィふぁごさん

イマジナリィふぁごさん

入院してから、もしくは最初の手術をしてから、もしくは飛び降りてから、わたしは悪夢ばかり見ていた。悪夢、と名前をつけていたそれは「せん妄」だったらしいことを後から知る。せん妄とは、認知症のような症状が一時的に出る意識障害。わたしは確かに、病室にいろいろな人が来て、いろいろ言われたような気がした。でもわたしは誰にも何も言わなかった。ただ、変だな、嫌だなと思っていた。何も言えないのだ。言える性格だったら

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思い出に残るのは、ひと春の恋

その日のお酒は、消毒液かのような濃いアルコールだった。
割りものというより、混ざりものでしかない。
それがピッチャーで大胆に出てくる。
コースで出てくるご飯は取り分けずらいし、量も少ない。
幹事をしてくれた先輩には悪いけれど、これでお金を取られるのはさすが、やはり「交流」って接待みたいなものだと感じた。

そんな酒を、下手に座って皆についでいる男がいた。
席順からして同い年らしい。
大学サークル間

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エナちゃんになりたくて

エナちゃんになりたくて

わたしは今年、けっこうな人数の女の子にDMをした。
なぜかというと、エナちゃんになりたかったからだ。

エナちゃんのことを考えていると、涙が出てくる。
そのとき一緒にわいてくるのは、悲しいとか、嬉しいとか、何か名前のついたわかりやすい感情ではない。
向きのわからないベクトルの、数字がぎゅんと大きいやつだ。
そういうときは、きゅっと心の中のちいさいわたしを抱きしめる。
エナちゃんがいつも、わたしにし

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生きてていいよの貰い方

生きてていいよの貰い方

わたしは「生きてていい人間」と「そうでない人間」がいると思っていました。

幼いころのわたしは、自分の感情は出さないようにしよう、と努めていました。例えば、お菓子をねだらない、など。逆に困ることもあったかもしれませんが、概ね育てやすい子どもだったのではないかと思います。

少し成長したわたしは、ネットにだけ自分の感情を吐くことにしていました。リアルのわたしは明るくて大人びていて賢かった。若さに限り

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