YYI

超短編!

YYI

超短編!

マガジン

  • to him, for him

    5篇からなる短編集。

  • ひとこと

    小説に盛り込めなさそうな歌詞のようなひとこと集。意味はあまりない。

記事一覧

予感

私はきっと、不幸になるなあ。 あなたの視線の先を追っていればわかること。 いまいちメイクの映えない素朴な顔や、 寂しい胸元。 今ですらあなたを惹きつけられる魅力…

YYI
1年前

正直な話

あなたと一緒にいるようになって、正直、見えていた世界が見えなくなったの。 それはあなたが悪いとかではなくって。 自分でも不思議なんだ。 あのうっすら白い、昼でも…

YYI
1年前
1

さいごの一人暮らし

意外と人は荷物を抱えてしまうもんだなと思った。 どこかしら開けるとモノが湧いてくる。 自分は割とミニマリストだと思っていて、必要なモノしか持っていないつもりだっ…

YYI
1年前
5

やさしいひと

いつも誰かに遠慮して いつも自分を庇っている。 そんな自分はずるいやつだと君は言うけど、 僕にはそこかしこに残った君のうちなる傷を見て、 そんなことを思えない。…

YYI
2年前
3

他人どうし

みな仕事を終え、狭いホームを歩くその背中達は丸まっている。 私は線路に落っこちないよう、つま先の向く方向を気をつけながら、彼の2、3歩後ろを歩き、そのうなじを眺め…

YYI
2年前
1

いつもギリギリのタイミングで、巧妙なタイミングで、あなたは夢に見た言葉をくれる

YYI
2年前

わりと上手くできてしまった食事も、どこかしら悲しい味がしてしまう。

YYI
2年前

この本を取ったのは、こうなる運命を見越してのことだったかもしれない。

YYI
2年前

宇宙逃避行

明日はどこへ行こうか。 熱い風を感じに火星へ 仕事で疲れ切った体を癒しに水星へ ちっぽけな悩みを消しに木星へ 眩ゆい神秘を見に金星へ 軽い運動に土星へ この星は…

YYI
2年前

はなむけ

夜明けの青白い光 真横に倒された部屋の片隅で、花がひっそりと息をしている。 クリーム色の薔薇と、黄色のスイートピー。 その滑らかな肌が愛おしく、 口に含んで食べてし…

YYI
2年前
1

しっぽ

猫がいたらなぁって思ってしまった。 そんなのだめだよ、終わりだよ 遠く鳴るラジオに揺られて 心を部屋の隅に浮かべて 瞼の裏の白さに照らされて シーツの皺を蹴飛ば…

YYI
2年前
1

月の影

夜だというのに、自分の足元から影が伸びていた。 ふと見上げると、月が異様に白く発光していた。 空はそれに照らされ、黒くなりきれず紺色をしていて、雲が一つだけ浮か…

YYI
3年前
2

倫理

誰かにとっては悪だとか 誰かにとっては正義だとか そんなのいいじゃん、生きているのは僕と君だ。 頭ではわかっているよ、でも出来ないよ。 何が僕らを縛っているんだ…

YYI
3年前
1

コンビニ

気分の沈みを、身体の右斜め後ろあたりから眺められるようになった自分は、とても大人になったなぁと思う。 仕事を終え、胃の奥あたりに重さを抱えて駅に着き、あぁあのこ…

YYI
3年前

悲しい目

みんなが今まで隠し持っていたもの もうこんな混沌とした世界ならさ 全部全部一緒だから みんなが悪いわけじゃないからさ 晒してしまおうよ そうしたら世界は一つにな…

YYI
3年前

マスクからチラッと口元が見えると、生々しい、エグい、グロい、と思うようになってしまった…

YYI
3年前
予感

予感

私はきっと、不幸になるなあ。

あなたの視線の先を追っていればわかること。

いまいちメイクの映えない素朴な顔や、

寂しい胸元。

今ですらあなたを惹きつけられる魅力がないのだから、

これから先、きっときっと

私のことを何とも思わなくなってしまう時が必ず来る。

どんどんと二人の未来を作ってるときに

こんなこと言ったら私最悪だね。

あなたは泣くかもしれない。

でもね、泣きたいのはこっち

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正直な話

正直な話

あなたと一緒にいるようになって、正直、見えていた世界が見えなくなったの。

それはあなたが悪いとかではなくって。

自分でも不思議なんだ。

あのうっすら白い、昼でも夕方でもない白昼夢のような世界はなんだったんだろうって。

視界に映る端々に、私の心は異常に掴まれていた。
そして言葉や思考のようなものが抜け落ちて空っぽだった。そうやって一人心を宙に浮かばせて、やっぱりたまに寂しかった。隣に誰かいた

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さいごの一人暮らし

さいごの一人暮らし

意外と人は荷物を抱えてしまうもんだなと思った。
どこかしら開けるとモノが湧いてくる。

自分は割とミニマリストだと思っていて、必要なモノしか持っていないつもりだったので、その一つ一つにさらに見切りをつけなければならないのは大変だ。

この部屋に来たばかりに百均で細々と揃えてきた収納グッズは、全てゴミ袋に丸め込んだ。振るとたぷたぷ残っているクレンザーや洗剤の替えも、バサバサと突っ込んだ。
白いセラミ

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やさしいひと

やさしいひと

いつも誰かに遠慮して

いつも自分を庇っている。

そんな自分はずるいやつだと君は言うけど、

僕にはそこかしこに残った君のうちなる傷を見て、

そんなことを思えない。

どうしても他人を思いやってしまう、

癖とも言えるそれは優しさとしか言いようがない。

それは弱さかもしれない。

でも僕はそんな弱い優しさがたまらなく愛おしい。

他人どうし

みな仕事を終え、狭いホームを歩くその背中達は丸まっている。

私は線路に落っこちないよう、つま先の向く方向を気をつけながら、彼の2、3歩後ろを歩き、そのうなじを眺めてみる。

昨日の夜も、今日の朝も、私はあそこにキスをした。

次の電車に乗る人がわっとホームに流れてくる。入り乱れる。その背中は丸まって、波の間に見え隠れする。

本来の世界を見た。

私は足を止める。
どんどん離れていく背中。
でも

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いつもギリギリのタイミングで、巧妙なタイミングで、あなたは夢に見た言葉をくれる

わりと上手くできてしまった食事も、どこかしら悲しい味がしてしまう。

この本を取ったのは、こうなる運命を見越してのことだったかもしれない。

宇宙逃避行

宇宙逃避行

明日はどこへ行こうか。

熱い風を感じに火星へ

仕事で疲れ切った体を癒しに水星へ

ちっぽけな悩みを消しに木星へ

眩ゆい神秘を見に金星へ

軽い運動に土星へ

この星はどこまで行っても

おんなじ道が巡らされ、

おんなじ人と、おんなじお店と、おんなじ景色ばかり。

手を握る君の瞳がぼんやりしている。

私はその横でなんとも健気な気持ちで握り留めている。

ここにいる限り、私たちには永遠なんて

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はなむけ

はなむけ

夜明けの青白い光
真横に倒された部屋の片隅で、花がひっそりと息をしている。
クリーム色の薔薇と、黄色のスイートピー。
その滑らかな肌が愛おしく、
口に含んで食べてしまいたくなる。

私は花束を、お別れの時以外でもらったことがない。

だから花びらの縁が徐々に黒ずみ
瑞々しさを失っていく度に
私は一つ一つけりをつけ、

最後の一輪をゴミ箱に放り入れるとき
別れの実感をようやく得る。

そんなもののた

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しっぽ

猫がいたらなぁって思ってしまった。

そんなのだめだよ、終わりだよ

遠く鳴るラジオに揺られて

心を部屋の隅に浮かべて

瞼の裏の白さに照らされて

シーツの皺を蹴飛ばして

鼻の奥がつんとして

涙を一筋頬に引いて

辛いような、心地良いような

頑張ってる、頑張ってるよ。耐えているよ。

誰がそんな夜を知っていてくれるだろうか。

月の影

月の影

夜だというのに、自分の足元から影が伸びていた。

ふと見上げると、月が異様に白く発光していた。

空はそれに照らされ、黒くなりきれず紺色をしていて、雲が一つだけ浮かんでいる。

こんな夜らしくない夜が、愛おしくて切なくてたまらないのは、きっと誰の目から見てもそうなのだろう。

でも今だけは彼との間だけのものだけであってほしい。

幸せな子供時代の続きを辿るのは、彼とであってほしい。

倫理

誰かにとっては悪だとか

誰かにとっては正義だとか

そんなのいいじゃん、生きているのは僕と君だ。

頭ではわかっているよ、でも出来ないよ。

何が僕らを縛っているんだろう。

それは最近の繋がりやすい世界のせいかもしれないし、

それは小さな頃から唱えられた呪いのせいかもしれないし、

それは生まれる前からめぐるDNAのせいかもしれない。

今囚われていることがしょうもなくて意味が無くてくだらな

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コンビニ

コンビニ

気分の沈みを、身体の右斜め後ろあたりから眺められるようになった自分は、とても大人になったなぁと思う。

仕事を終え、胃の奥あたりに重さを抱えて駅に着き、あぁあのことがそうさせているんだと電車の中で熱をさまし、自分の街に辿り着く。

しかしそれはいつも諦めで無理に締めくくられ、解決とはまた違う。そしてその積み重ねが軋み、危ない音が聞こえた日は、あのコンビニに行く。

そこには母くらいの年齢の女性が大

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悲しい目

悲しい目

みんなが今まで隠し持っていたもの

もうこんな混沌とした世界ならさ

全部全部一緒だから

みんなが悪いわけじゃないからさ

晒してしまおうよ

そうしたら世界は一つになれる気さえするよ

お世辞とか愛想笑いとかやめてさ

よくわからないものに疲れたりしなくなる

でもそんな中でも

きれいなままの人はいると思うんだ

揺るぎない根を持ってる人が見える

悲しい目をしているのが浮かぶ

マスクからチラッと口元が見えると、生々しい、エグい、グロい、と思うようになってしまった…