はなむけ
夜明けの青白い光
真横に倒された部屋の片隅で、花がひっそりと息をしている。
クリーム色の薔薇と、黄色のスイートピー。
その滑らかな肌が愛おしく、
口に含んで食べてしまいたくなる。
私は花束を、お別れの時以外でもらったことがない。
だから花びらの縁が徐々に黒ずみ
瑞々しさを失っていく度に
私は一つ一つけりをつけ、
最後の一輪をゴミ箱に放り入れるとき
別れの実感をようやく得る。
そんなもののために花があるなんて
すこし不憫に思えてしまう。
ベッドから這い出して
花瓶の縁を持ちあげ
ざっと水を排水溝に流した。
そして綺麗な水を入れてやる。
花は甘い呼吸をする。
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