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逆噴射高梨蒼

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よく来たな。ここは逆噴射記事、逆噴射小説大賞参加作品などを纏めたMEXICOだ。
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#逆噴射小説大賞

【逆噴射高梨蒼】逆噴射小説大賞を振り返り、おれはおれを知る

【逆噴射高梨蒼】逆噴射小説大賞を振り返り、おれはおれを知る

おれだ。高梨蒼だ。

おまえは逆噴射小説大賞という熱い熱いMEXICOをサヴァイヴし、息て11月を迎えた。銃撃戦で危機にさらされ、きけんなパルプ成分弾丸で頬を切り、額に穴をあけたおまえは、死んで生き返ったのだ。マサルやリーゼは「自分は一度死んだのだから怯えるのはおかしいことだ」と笑ってのけたが、おまえも…少なくともパルプの荒野では…すでに何度も死んだ。あとは笑って前に進め。

おれはパルピックさの

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アカシック・カフェ ―全知と珈琲の番人―

アカシック・カフェ ―全知と珈琲の番人―

「もうアカっちゃいなよー!」
「でも、あたし的にはエージ信じたいし」

常連の女子高生のいつもの恋バナ。しかし、どうも雲行きが怪しい。シュウカがアカシックレコードを提案したのだ。一方ハヅホは曖昧な返事。そりゃそうだ。『世界の真実』によって浮気が確定したら目も当てられない。

十数年前、人類はついにアカシックレコードに接続した。が、蒸気機関やインターネットのように社会が激変することはなかった。一般市

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ヴァンパンダ ―吸血大熊猫奇譚―

ヴァンパンダ ―吸血大熊猫奇譚―

衝撃!奇跡の珍パンダ!悪戯の疑いも?
――あるニュースの見出し

その日、ジャイアントパンダは『白黒』ではなくなった。白黒に加え、紅。そんな新種の群れが中国の奥地で発見されたのだ。目や口には隈取りのように、背中や手足には内功の流れの如き紋様で紅色が確かにあった。

正式な新種認定を受けた翌月、世界周遊は始まった。若い紅流大熊猫、雄のホンホンと雌のフアフア。彼らは東洋神秘の体現として喝采を浴びた。一

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デッド・オア・ライブ!! ~アイドル狂騒協奏曲~

やられた。いくら無法のアイドル戦国時代とはいえ対戦相手の新曲を歌うなんて、誰が想像するだろう。必殺の隠し玉でオーディエンスは盛大に湧いている。ペンライトの輝きが力強く波打つ。

シエン。現代アイドルの絶対女帝。その二曲目はファーストステージで初披露した私たちの新曲『フォーリン♡オータムラブ』。たった五分のパフォーマンス、一時間のインターバルで覚えたってこと?会場の困惑も、サビの頃には興奮になってい

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俺と横綱の無限土俵 ~世界一短いタイムリープ~

俺と横綱の無限土俵 ~世界一短いタイムリープ~

初顔合わせは上手投げにて瞬殺。
十五戦にして叩き込みで初金星。

撒いた塩が煌めく。満員御礼の熱気が肌に伝わる。

現人神の存在感が世界を塗り潰す。

発揮揚揚!

やられた!思った時には既に廻しを引かれ、よろめくことすら出来ない。数秒の攻防、天地逆転。

これじゃダメだ。これじゃ――

幻の決まり手、襷反りに敗れたのは三十ニ番目。

撒いた塩が煌めく。満員御礼の熱気が肌に伝わる。

直前の対戦を

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念装戦記ストライカーズ・ハイ

念装戦記ストライカーズ・ハイ

鋼鐵と鋼鐵が激突し、閃光が散った。光が失せるまでに、もう一撃!500㎏級最強の念動鎧装使いは瞬く間に重厚長大ナックルを十度振り抜く!挑戦者は浮遊する四本腕と二本の尾で見事に受け流した!
「潰せ!セイントボックス!」「流鏡 夢の王座へ」横断幕が余波で裂ける。地上から戦士を見上げる観客は気にしない。
火花、火花!王の拳は純粋なパワーとスピードがウリだ。一方、特殊鎧装の挑戦者は精密なサイココントロールで

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Silver Snow & Black Blade

Silver Snow & Black Blade

爆発!清廉な森が赤く染まる!カルト邪神官三人の同時詠唱!煙の量は炎の強さを、流れる速さが爆風の壮絶さを物語っている。

「メイ・リューナーも今度こそ終わりだ」

小柄な神官が担いだ武具は二人よりも大きい。

「詰めるぞ」

モノクル神官が仕切る。次の瞬間、燃える森に着地音。嗚呼、我らの英雄もここまでか?それとも既に吹き飛んでしまったのか!?

否!断じて否!爆ぜる木々の間からメイ・リューナーだ!銀

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ジニィ・イン・サイバーランド

ジニィ・イン・サイバーランド

バヅン!
ひったくりから放たれた帯電弾は狙いを大きく外し、張り出したパイプを撃ち抜いた。一瞬の放電で雨の路地が閃光に満ち、目が眩む。違法スタングレネードも無効化するアサルトメットさえあれば問題じゃないんだが、如何せん通常パトロールで持ち出していい物でもない。一瞬立ち止まり、すぐに駆けだす。

〈そいつ麒麟屋の下っ端だ!逃がすな!!〉

耳元でタツキの通信が響く。被せるように第二の銃声。俺の前を行く

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鳥宮恵里は俺の”何”?

鳥宮恵里は俺の”何”?

人類はあと四半世紀でタイムトラベルが出来るようになるンだとさ。

「パパ!中庭でお昼食べよ!」
「パパじゃねぇよ!」
この問答にも慣れたもので、もう教室はざわめかない。一ヶ月前は俺の元に駆け寄ってくるだけでモーゼの海割りの如く人が避けたモノだが。
「あっ……ごめんなさい、えーと、恵弥くん」
「いいよ。行こう」
クラスメイトの手前とはいえ、強く否定したのには罪悪感がある。しょげた顔は見ててつらいし、

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街角フロートマーダー

街角フロートマーダー

『さて、そんなこんなでもうお別れのお時間がやってきました』

ナイフは殺風景な部屋の中に入り込む街灯で幽かに輝き、蛍の如く尾を引きホルダーへ収まる。逆側に拳銃。傍目にはだらしなくレシートで肥えた財布を仕舞っているようにも見えるが、実態は無造作な二種類の死。

『秋も深まってこの時間から外が真っ暗。運転中の方もそうじゃない人も気を付けて』

ケーブルから抜いたスマホをスワイプし、標的を確認。ある区画

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