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逆噴射小説大賞2020ライナーノーツ ~終わりのある旅に出よう~
俺だ。高梨蒼だ。今日は一週間前に無事応募期間が終了した逆噴射小説大賞2020のライナーノーツを書く。
リアル生活がなんだかんだとバタついてしまっていたので遅くなったが、ケジメと区切りは大事だ。
ここの区切りがつかないと、いつまで経っても次の作品に行けないし、なんなら映画にも行けない。心残りがあるのは本当によくない。これはマジ。鬼滅も羅小黒戦記もプリキュアも魔女見習いも見に行けてないんだよ!!!!
そして煙草は尽き、勇史帳は埋まる。
亡き祖父の自慢の店の残骸の真ん中で、元女主人の少女は肩を落としていた。少女は恨み言を吐くことはせず、代わりにただ、夜に佇む男に問う。
「あたし、これからどうなるの」
「おそらく、俺を匿っていた背信者として別の部隊が捕えに来る。その先は、運だ。祈れ」
「……ウェ」
漠然とした絶望を前に、少女は力なく落胆した。
彼女の問いに応えた男、ギエンはほんの一月前までこの一帯を支配していた大魔族である。彼は
カグライ・ライジング!―英雄なき俺達の夜明け―
鋭い風が異様な気配を乗せて吹き抜ける。今の季節は街の誰もが刃から身を隠すように厚着をするのだが、防刃防神コートを着ている俺達の前では生温い。
「コグロ、今まで有難う」
「今更クソ真面目に何言ってんだ」
「礼節。お前に教わったこと」
相棒は殊勝に笑った。噂では、王都の協会はこのアホを儚い男前として売り出したいらしい。無理な目論見と気づくには雨季までかからないだろう。
「礼節弁えるんなら、王都行
太陽の仮宿と月光の姫君
高度に体系化された魔術は科学と見分けがつかない。
リンゴを投げれば落ちるように、決まった手順で杖を振れば風が吹く。そういう風に出来ている。
〈座の一端/贖罪の木片/西から東〉
「黙れッ!」
俺は入り組んだ都市迷宮の上方、辛うじて詠唱の聞こえた方角へ一喝した。怒声は俺たちを狙う魔力の流れを遡り魔術師を卒倒せしめた、ハズだ。姿は見えないが、遠くで魔力の群れが消えた。
「やりすぎだよマハル!」
「
逆噴射小説大賞2019ライナーノーツ!-プロト!ポイント!ペイン・アンド・パワー!-
逆噴射小説大賞2019、お疲れ様でした。
800字の5本限定って発表があったときは衝撃ではあったけど、意外と何とかなったみたいですね(ぼんやり)
実際凄い。400×1900本よりは楽かもしれないが結局審査チームには必死になってもらうほかないようだ。
800×640は400×1900より少ない。がんばれ。
なんで「なったみたい」なんて伝聞調かっていうと、僕ほかの人の作品全然読めてないんですよね。
いつか僕たちが、この革命劇に名前を付けよう。
「ね、貴方は大きくなったら何になりたい?」
「いきなり何です」
赤と黒が入り混じる空を見つつ、女性は言った。感慨深げに目を細める女性と対称的に、少年は目を見開いている。時折ゴーグルを調整している姿には緊張感があるが、会話をする程度には余裕もあるらしい。
十人程度による簡素な山中のキャンプは暗い。いくつかの控えめな灯りも、すぐに消灯できるように全員が備えている。
彼の視界には、依然変わらない山の
Bet everything But no-life
誰もが怯え、しかし騒然とすることさえできないホールで笑っていたのは、銃口を二つ突き付けられていた男本人だけだった。
不自然なほどのチップの塔の前に座る彼は、ラフに着崩したスーツスタイルだ。白いジャケットから覗く黒いシャツには皴がない。ホールドアップした手首に光るアクセサリーも厭らしくない。整った身形の中で、今は卓に置かれている黒いパナマハットだけがくたびれていたのが印象的だった。
「ベック、少し
ニューマンライツ、カメラ、アクション!
そして、雄大な地球を背負ったスタッフロールが終わった。「国際連環」「国際人類和平機構」の堂々たるロゴがスクリーン中央で止まる。
――止まって一分、何も起きなかった。
君の周囲が、演出でなく事故か、とざわついて数秒。背景の地球が高速逆回転を始めた。同じく昇りの数倍速で、スタッフロールも下へ流れていく。
「『和平伝』をご覧頂き、有難うございます」
逆流する名前たちを隠さぬよう、向かって右隅。三
俺と元俺の国喰いのススメ
★
「ひったくりだね」
「……捕まえろって?」
「勿論」
俺の隣の小さな影は長い髪を波立たせ、軽く頷いた。
俺は、背を押す風めいた銀色を視界の端に見て、両手の暗器グローブをぎちりと嵌め直す。黒い革が指を締め付け、瞬間、血が巡る感触が強くなる。
「焼き肉屋の路地。突き当りの右、質屋の裏口への階段前」
つま先で地面を叩く。重く硬く、仕込んだ金属はいつも通り頼もしい。
「一発殴ったら、懐から銃
大天空大相撲取組帖 発機良揚―ハッキヨイ―【初日・一番目・夕羽 対 猛雲】
天高く力士肥ゆる秋。
令和元年九州場所初日の空は、十五日間の健闘を祝うに相応しい快晴だった。
大天空大相撲の会場である九州国際体育塔から響き渡る櫓太鼓は、福岡市の秋の風物詩。世界最大の自立型相撲塔である両国国技塔に高さでは劣るものの、街の熱気は負けていない。
市街にかかる九体塔の影も短くなった。
地上十階、満員の観衆が見守る中、夕羽関と猛雲関が睨み合う。
両者は各々のルーティンを執り行う。そ
【逆噴射高梨蒼】逆噴射小説大賞を振り返り、おれはおれを知る
おれだ。高梨蒼だ。
おまえは逆噴射小説大賞という熱い熱いMEXICOをサヴァイヴし、息て11月を迎えた。銃撃戦で危機にさらされ、きけんなパルプ成分弾丸で頬を切り、額に穴をあけたおまえは、死んで生き返ったのだ。マサルやリーゼは「自分は一度死んだのだから怯えるのはおかしいことだ」と笑ってのけたが、おまえも…少なくともパルプの荒野では…すでに何度も死んだ。あとは笑って前に進め。
おれはパルピックさの
アカシック・カフェ ―全知と珈琲の番人―
「もうアカっちゃいなよー!」
「でも、あたし的にはエージ信じたいし」
常連の女子高生のいつもの恋バナ。しかし、どうも雲行きが怪しい。シュウカがアカシックレコードを提案したのだ。一方ハヅホは曖昧な返事。そりゃそうだ。『世界の真実』によって浮気が確定したら目も当てられない。
十数年前、人類はついにアカシックレコードに接続した。が、蒸気機関やインターネットのように社会が激変することはなかった。一般市