逆噴射小説大賞2019

逆噴射小説大賞2019ライナーノーツ!-プロト!ポイント!ペイン・アンド・パワー!-

逆噴射小説大賞2019、お疲れ様でした。
800字の5本限定って発表があったときは衝撃ではあったけど、意外と何とかなったみたいですね(ぼんやり)

実際凄い。400×1900本よりは楽かもしれないが結局審査チームには必死になってもらうほかないようだ。
800×640は400×1900より少ない。がんばれ。

なんで「なったみたい」なんて伝聞調かっていうと、僕ほかの人の作品全然読めてないんですよね。自分のを書くので精一杯。
最初は「最初の一本を書いたら読む!休憩する!」って言ってたんですけど、途端に二本目が浮かんできてねぇ……書いちゃえってなって……そこからはもう、書く!考える!考える!ほかの人のを見たら影響喰らうから逃げろ!考える!書いた!!次!!だったもので。
今は「ライナーノーツが書きあがったら読む!」って言ってます。(10月31日現在)

じゃあ行くぜ!!
ワン!現代転生国盗りバディピカレスク!
ツー!社会派異能告発ムービー!の導入!
スリー!不思議で奇妙な凄腕コンビの噂!
フォー!命懸けでも命賭けない博徒亡霊!
ファイブ!演じろ、己の手で己の革命を!
ライナーノーツ、レディ!スパーキング!!

1本目:俺は俺で、あいつも俺…だった。

あらすじ:俺と俺の来世で最強だ!九輪横丁も国も食い散らかせ!

一本目ですね。これが結構大変だった。一本を仕上げるまで、うんうん悩んだんですよね…パルプとは…?俺はミステリとかラブコメとか少年漫画とか会話劇であって血と埃のパルプには向かないのでは…?って悩みまくったんですよね。いやぁ…しんどかった。

書き上げたらもう脳みそぐるんぐるんに回り始めるんだけどね。

主な要素は以下。
HELLO WORLD:自分と未来の自分のバディ
お前なんぞに娘はやれん!:前世・転生
異世界転生:うるせぇ!!現代転生だ!!という反骨。
九龍城:→九輪町→九輪横丁

シンプルな素材ミックスですね。でも、プロトタイプは別物でした。

「お前は、俺の前世だ。前世っつーか、もう三つくらい前だけど」
「はぁ?何言ってんだ、あんた」
「何、すぐにわかる……あの人、見憶えないか?」
「……ア!?」
直感で分かった。あの人は、俺の前世だ。
「わかったか?そんで、それを知ってる俺は?」
「……俺の、来世……?」
「正解。まぁ、もう三つくらい先だけどな」

過去と未来が極めて短いスパンで入り組むリインカーネイティング・群像サスペンス「この街に俺は何人いる?」
「自分」が「自分」のために情報のリレーを行い、あるいは示し合わせて社会を煽動し、先導し、その先に起こる未曽有の大事件を防ぐ!という…やつは…まだ捨ててない。
ただ、考え始めると本当に「先」ばっかり考えてしまって、「今」面白い引きの冒頭になるかとか、「設定を説明することに800字使い切ってしまうのではないか?」という懸念がぐつぐつしてしまって…。

結局、転生してるラインは(見せるのは)一本だけ。明確なヤバさを街とガラの悪さでカバー!アクションメインで転生はスパイス!って感じでパルプ適応しました。うーん難しい!

ひとこと:自発的にアクションを手札にしようとしたのは成長か

2本目:御覧じろ!人類の英雄の皮を剥ぐ60分の決死告発ムービー!

あらすじ:プロパガンダ・ドキュメンタリーかと思った?ノンフィクション・暴露大会だよ!!もうちょっとだけ映画は続くぜ!!

国喰いはあれだけ悩んでたのに、ニューマンライツはそこから24時間くらいで書きあがってしまった。「ぐるんぐるんに回りはじめ」た結果ですね。

プロトタイプを800字くらいで書き上げて、「……違う!!」って言って捨てて、これを書き上げる……っていうのを全部夜行バスの中でやる、というエクストリーム具合でした。

成分は以下!
HELLO WORLD:「映倫表示の後も本編が続く」構成から、「エンドロールの後こそ本編」と言い放つ。あと指パッチンで魔法みたいなことするのもここからか。
ライツ、カメラ、アクション!:映画の掛け声。特にここ最近は「サマータイムレンダ」って漫画で使われたのが印象的でした。
映画大好きポンポさん2:主人公の映画監督がスポンサーやプロデューサーの意向を無視した完成ディスクを提出しちゃったシーン

最初は「ライツ(照明)」を「ライツ(人権)」に引っ掛けて、
「エルフやドワーフに虐げられる人間……だけどトリック・ムービーで暴露するぜ!」っていうのをやろうとしたんですけど、「ヒューマンライツ、カメラ、アクション!」ってなんか…「シャレにならなさ」あるじゃないですか……。

「題名とはそのまま本の表紙に書いていいか」って指針に照らして考えると、そういう「無関係で面倒なノイズ」が入りそうなタイトルはやめよう→でも響きはいい→新人類と人類の闘争だ!ってなったんですね。ニューマン、いいでしょ。

「ニューマンライツ」になってからも脳内ひと悶着がありました。

映画を撮り始める企画会議、ニューマン映画チーム
「俺たちの今度の映画は議長サマだ」
「あのクソ野郎を?」
「勿論、まともなプロパガンダ撮る気はない。やっちまおうぜ」

で、こんなプロトタイプを800文字くらい書いてから「パッとしない!」「メリハリがない!」「説明臭い!」と脳内ブーイング。
結果、真逆から始めることになりました。結果的には超楽しかった。

ニューマンたちが新能(作中では全然説明してなかったけど、いわゆる超能力です。「時間系」みたいなやつもいるあたり、能力にバリエーションがいるのは匂わせられたはず。でも、冒頭なんて用語の説明なんていらねぇんだよ!ビビッとさせればいいんだ!って詳細は割り切ってました)を使いまくって映画を撮るのは楽しそうだ。プロトタイプ版の企画会議では撮影チームの新能も描写されてたんですよね。
多分「映画を撮るチーム」が本編で、幕間に「映画のカット」が入る構成になるんでしょうね。

ひとこと:二人称小説を試せたのは非常にプラス!楽しかった!

3本目:舞うは黒、傅くは貴金色。

あらすじ:「あの人たちは」「あの人たちは」「あの人たちは」

どんな依頼だってきっとこなす「二人組」の話。でも二人は出ない。二人が巻き込まれた事件、依頼人、関係者が彼らを語る。

主な成分は以下でございます。
千紫万紅:異能者がたくさん!
:同業者の組合のこと。
刃牙とかのアレ:「あなた花山薫って漢を理解ってないですよ」
十六夜咲夜:投げナイフのメイド。
ノックスのミステリ十戒「双子を出すべからず」:このお話はミステリじゃないんですけど、まぁ詳しいことはあとで。
去年の逆噴射アイディア帳「200×2を書いてもいいのでは?」:よっしゃ!じゃあ今回は200×4書いちまえ!!

構成としてちょっと特殊な形式をとりました。なんでかっていうと、書きかけてた「執事とメイドが現れて下郎どもをぶっ飛ばすぜ!!エレガント・アンド・エゴイスティックラブ!!」って感じ原型が、全然ワクワクしなくて……。アクションが冗長というか、山とか谷とかが…不慣れで…ハイ…。
だけどこのコンビは捨てたくないから、ちょっと悩んで、過去のネタとかと練り合わせて一つにしました。

「本人の活躍が書けないなら、本人が活躍した”後”を書こう」
「活躍を一本書くと冗長なら、何本も書いちゃおう」

結果として、うまくいったみたいです。どうやら(そう、僕はほかの人のを読む余裕がなかったからわからないのだ)、こういうスタイルは珍しいらしい。フム…?みんな「やべーやつの活躍を語る一般人」って好きだろ…?やってないの……!?

究極的な話、小説の冒頭は何より無茶が許される場所だと思っています。千年後から始めようが神話の抜粋しようが詩文載っけようがパロディしようが何でもアリなんですよね。
だからやってやった。まいったか。

さて、じゃあ、伝聞法に切り替えた原因の方の話ですが。
こう…実際に書けてるかは置いといて、自分のアクションイメージが自分の求めるアクションイメージに噛み合ってないんだろうか…?と思った。
灼眼のシャナとか、問題児たちが異世界から来るようですよ?とか、凄いアクションを見てきた、その割に修練が足りてないのだろうな。求める側の「目」と実際に書ける「手」が一致しない。
プラス、アクションそのものへの苦手意識が染みついてるのかなぁ。
感情・情動的な部分とか、会話の話は演劇で練ったり、いつも扱ってる題材が題材だけに経験値が溜まっているから、こっちは目と手のギャップが起きていない……という感じなんだろう。

物語の構築としては、「段階的な情報の開示」ができていると思う。
1.少年の話:不思議な二人がいる。
2.砂漠の男:この世界には砂漠狼がいる。つまり「この世界」ではない。さらに、女の方はメイドで、おっかない。
3.森の種族:「種族」の違う人間がいる(=エルフか?)。男の方は仕込み杖の使い手で、紳士的。そして、どうやら執事らしい。
4.講の受付:「異能者」がいる。依頼の観念がある。二人は一緒。
だんだんと「異世界」と「違和感」を仕込んでいく流れ。つまりは、冒頭で物語の丁寧なスロープを創れたんじゃないかなぁ。

ちなみに、根源的な意味でのプロトタイプはこんな感じ。

「お嬢様。……本当に、その格好でよろしいのですか」
「いいわ、いいわよ。もちろんいいわ」
「……もう深くは言いません。ただ、あくまであなたは主であると、それだけは忘れないでくださいね」
「わかってるって。そっちこそ、いずれはただの友達になるって、わすれないでよね」
同じメイド服。同じ髪型。違う髪色。違う立場。
少女が二人、今日も往く。

つまり、「双子めいて双子じゃない」コンビですね。これがバディであれ、百合であれ、ちょっと先と全体像が上手く見えなくて…。
これもなんか、いずれ出してみたいキャラクターではありますね。

うむむ、単純に書いたと思ったけど、想像以上に色々考えてたらしいですね。ライナーノーツはこれだから楽しい。

ひとこと:実はお互いに「自分が従者、相手がお嬢様/ご主人様」だと思っているぞ。だけど相手が自分を主と呼ぶのも、なんか慣れてしまったから別に認識齟齬でおかしくはならないのだ。

おまけ

千奇万講はイラストも描いてもらっちゃった。ありがとうございました!

4本目:賭けることこそ我が人生。まぁ、もう死んでるんだけどさ。

あらすじ:ギャンブラーが変わり果てない姿で帰ってきやがった。

今までは大体「うーんうーん…うーん…800字書けた…けど違ェ!!全部ポイ!!!別の作品(またはシーン)書く!!!!」ってやってたんだけど、BetButは野菜買ってる途中に「思いついた!見えた!」その夜のうちに「書けた!!!」だった。すごい。
シーンも大して書き換えてないし、本当にプロトタイプがない。今回の5本の中だと唯一だ。

主なサウンドトラックは以下
RapidRockは視聴が見つからなかったからアレだけど、後の2曲はYouTubeに飛ぶよ。
RapidRock/8/pLanet!!:ギャンブル!
ゼウスの仲裁/ラ・レヴュー・エターナル:ジャズ調のカッコよさが脳に響く!
御してぎょしゃ座/ラ・レヴュー・エターナル:舞台はぐちゃぐちゃの調和しない混沌なんだぜ。
めだかボックス、時間の支配者:ギャンブラーの”オールベット”という姿勢について

というわけで、根源成分がほとんど音楽なんですよね。

ちょっと音楽の話。

音楽、とりわけ「別の創作をしているときの音楽」って扱いが難しいと昔から思っています。楽器や曲調を紐解くとそれだけで文化的な根源やイメージを掘り起こすことになったり、歌詞はそのまま物語だったりします。よく言えば世界を創ってくれる。悪く言えばその世界に飲まれる。自分でうまく制御できない限りは、本番執筆中は歌詞入り音楽はあまり摂取しない方がいいと思ってたりもします。歌詞のない曲、サウンドトラック、あとはめちゃくちゃ聞きなれて今更意味を再解釈しないような曲がいいと思う。

……というのも、僕が舞台演劇をやっていたころ、音響の師匠が「歌詞入りの曲はキャストや舞台の雰囲気に影響しすぎるから扱いはよく考えな」って言ってたんですよね。もちろん、言われたからじゃなく僕自身それに同意してるからこそ、ここに書いたりしてる。

で、逆用して、音楽からインスピレーションを受けることも、受けたやつを自力でガンガン広げることも可能だよなーとも思います。今回、この3曲はその日にスマッホに入れたところだったので、もう衝撃がドバドバ。カジノで踊る狂気がどわーって。

その結果生まれた「ベック」ですが、幽霊としての特性はどこから出てきたんだったっけ。勢いで書いたから全然思い出せない…。けど「挑発」とか「飄々」に、さらに一般的な強さの尺度とズレた存在って考えた結果がこれでした。
白いスーツを着ているけれど、「黒いスーツに白い糸の縫製」「白い糸が赤く染まり、輪郭が赤く染まり、炎の亡霊に…」みたいなことも一瞬だけ考えたりした。少なくとも800字に詰め込める内容ではないのでやめた。

キャラクターとしてのベック。
口癖は「Aだぜ、Aじゃないけど」。こういうと気恥ずかしいけど、恥ずかしながら僕の口癖の「まぁいいか、よくないけど」を調理したもの。
性格は軽妙で自信家。天才的で強運を信じた上で何でもする。演劇で一番悩んだ役作りがこういう『自信と余裕と軽妙に溢れた天才』だったので、そうやって向き合い続けた結果、逆に手癖が馴染むようになったのかな。
キャラクターも物語も虚空から生まれない。フィクションにせよノンフィクションにせよ、体験から出てくる。頭ではわかってるんだけど、ベック、こんなに僕から出てくるとは思わなかった。

弥津彦は「演技としてヘラヘラしている」。
ベックは「(多分)素のノリが割と軽い」。
似ているけどちょっと違うのだ。

ベックは「ベット」と「賭博」。ベットバットのベックで語呂が良い(結果論)

タイトルの話。
Bet everything But no-life」、直訳すると「すべてを賭ける、だけど命は賭けない」みたいな感じ。意訳、本意、原案は「全賭け、されど命懸けにあらず」。オールベットって言葉は使いたかったんだけどなぁ。BetButの響きと並びが丁度良かったから、All bet But no-lifeはやめたのだ。AllButもありなんだけども。

ただ、世界観的には完璧に地中海をイメージしてたので日本語はなぁっておもったので、英語に。なんでイタリア語にならないのか。わかりにくいからだよ!!
Scommetti tutto, Non morto」なんて言われてもわかんないでしょ?僕もわかんない、今翻訳しました。
分かりやすさを求めると、時に拘りを捨てなきゃいけないのだ…。

舞台設計の話。
なんで現代地中海になったか、っていうと、「視えた」のが「煌びやかなカジノが騒然として、ヘラヘラ笑う」って画だからですね。
正直、時代感に悩みました。魔法はちょっと迷ったけど、幽霊が軽くなるのでなし。そこの切り捨ては割と即断。
結局悩んだ果てに現代にしたのは、組織を相手に煙に巻くヤバい奴としての強さを強調したかったから。中世カジノ、警備つーか即座に客同士で殴り合いしそうじゃん。ゴロツキ相手より上流階級の場と組織化された現代暴力を嘲笑うゴーストがよかった!そんなすごい奴が、「娘が今度パーティに行くんだ、見逃してくれや」って言葉だけ残して消えるの、カッコいいでしょ?
相手が強いほど主人公が輝くんですよ。

ところで「娘」は、本当の実子なのか、霊能者の身寄りのない少女と奇妙な関係になっているのか、それはわからない。未定!

色々あったけど、結局は音楽一発(三発)で数時間で書けちゃったんだから面白かった。創作の光が見えるの、ほーんと気持ちいいね!

ひとこと:褒められてから初めて「ストレートな真の男系パルプ」だと気づいた。僕も書けるんだねぇ…(しみじみ)

5本目:生きることは劇的で、しかし劇か?

成分表はこちら!
HELLOWORLD:棚や百科事典がよく出てきて、そのタイトルがあったり見えなかったりしたことから
Who am I:姉貴分と策略家の男が率いる無法者。男、出てきてないけど。あと「魔法」の形式も同じ。
逆噴射小説大賞2019:今回ほんとタイトルに悩んだから…
「悲劇」:後で詳しく。
そしてセットリストはこちら!
アルキオネ/SPR5:『演じることやめた私たちは今、演じることを決めた』。革命。熱砂の旅人。
ぎょしゃ座/ラ・レヴュー・エターナル:演じて足掻け、このエンディングはどこにある?
Outer Existence/8/pLanet!!:管理の外側、足掻け、暴れろ、牙を剥け、生き延びろ!

国家を旅し、人々の中に混じり、地元の人たちを陰に日向に導いて、「彼ら自身がそうされたと気づかないように」革命を引き起こす劇団の物語。

「生きることは劇的だ」って黒神めだかは言ったけれど、「生きることは劇」ではない。

所謂「見出しとしての悲劇」ってあるじゃないですか。痛ましい事件とか、しんどい病気や障害と戦うとか、ニューマンライツ・新人類権利闘争とか…。そういう意味で、新聞とか広告に踊る「悲劇」。
そういう意味での「悲劇」が、好きじゃない
だって、被害者も誰も彼も、劇の中に生きてるわけじゃないし、エンドロールが終われば終わるわけじゃない。苦しみや悲しみは劇なんかじゃあないんだよ!

っていうわけなので、そういうことを言う連中に対して牙をむく少年と少女が「逆転劇」をやろう、ということを決起する話を700文字くらい書きかけて…。
「いや、これはうまくまとまらないし、やるとしても物語の中盤くらいだろ」となったわけですね。

「悲劇。あたしたちのこの村が焼けたのは、劇なの。あたしたちは、ここに生きてるのに。作り物のお楽しみなの」
「まぁ、そういうものだよ。説法とか、童話とか、それと同列。『二匹の犬』『イリナ王妃の献身』『昼夜神仲裁』」
「『エインベルの赤い悲劇』……」
(中略)
「じゃあ、僕たちも“劇”を創ろう」
「……”劇”」
「“逆転劇”だ。」

こんな感じ。エインベルは「ein」と「bell」、「1ベル」…開演前に入場を促して鳴らされるアナウンスですね。「2ベル」は本当に客席照明が消える。エインベルの炎は、革命劇が始まる前触れなのだ。
演劇部で習ったんだけど、これローカル用語だったら出自がバレるな…。まぁいいか。

で、「名前を付けよう」。

「革命をしよう」
「それで?」
「その後は、その革命に名前をつける」
「……それって、どういう意味?」
「この革命の勝者になるって意味さ」

これはプロトタイプですらない、下書きなんだけども。
「歴史を残すのも、名前を付けるのも、すべては勝者の特権」ってことですね。「あたしたちの村が燃えたのはあんたたちのための悲劇じゃない!」という激情を満たすものでもある。

……そして、「題名」に気を向けたのは何より今回の逆噴射小説大賞2019で悩みまくったから、ですよね。
今回超悩んだ、超悩んだところから作られたイメージはファンタジー・ロードムービー。「この大図書館で唯一、題名のない本がある。これを知っている人を探しに行こう。じゃ、借りていくね」

でも色々練ってたら「アルキオネの”革命”」とかの要素が混じってきて、結果こんな感じになりました。

全ては俺の手の内本のウチなのだ、ってのは悪役やられ役の発言だけど、あえて突き抜けると面白いかもしれないね。ちゃんと書くなら群像劇かなぁ。「どこに彼らがいたでしょうか?」って感じで、諸国諸地方の事件が起きるまで、「劇団」がそれを起こすまでを描く。

あと、言葉選びも無意識に演劇系のを使ってたみたいで、それも皆さんの目を引けたらしい。正直無意識だった。
人目を惹き、無駄な寄り道なく世界観を示せるという意味ではかなりおいしいので、今度は意識的にできるといいな。

「ゴーグル」「炎雷」の話。
Who am Iって、昔書いたファンタジー・サスペンスで使った「日用品に術を纏わせるのが前提」の魔法体系を濃く継いでいます。
Who am I、面白いから読んでくれよな!!!!

さらに、「男女二人組が率いる無法者」って組み合わせもWho am Iなんだよね。術は意識してたけど、こっちは気づかなかった。

ていうか、仕込みブーツを基本にするって意味で国喰いもWho am Iを継いでるんだよな……! いや、これは偶然かな…?

だからみんな、Who am I読んでくれよな!

ひとこと:このお話そのもののタイトル、完璧だと思う。

数字の話

軽く一か月の間でダッシュボード統計。

各項目の1位!
閲覧:銀と金と千奇万講
スキ:いつか僕たちが~
閲覧×スキ:銀と金と千奇万講
スキ/閲覧:いつか僕たちが~

スキパーセント(スキ/閲覧)は、『いつか僕たちが~』が12%、ほか4作(と航空相撲)が7,8%なので「突出したスキパーセントの『いつか僕たちが』が強い」とも、「他と同じようなスキパーセントでも話題性で群を抜けた『銀と金と~』が強い!」ともいえる。

この二つの共通点は…「二人の人物の会話」が基本ってところかな。やっぱり会話劇が勝負所なのかなー?

あと、『ニューマンライツ』がちょっと伸び悩んだ感があるのはなんでだろう。癖が強すぎたのかなぁ…。

でも、去年と比べてしっかり練った分、去年みたいに「9本の中ではっきり明暗が分かれたー!」ってことはなかった。一応ジャンルを分けて書いてみたつもりだったけど、コンスタントに戦えるだけの技量は着いたのかな?

少なくとも去年よりは成長してるぞ、俺!

没になったみなさん

・「赤い星の冒険」
前に「世界のひとつの要素がすり替わったらすべてが変わる」って理屈を立てました。
その自分の理論に従って、「星の循環物がすべて血だったら」って話ですね。生体めいて星を循環し、赤と黒に分かれる海。鉄がとにかく多い大スペクタクル。
……だったんだけど、タイミング悪くこしぬけが赤十字に難癖をつけてきやがったので、タイミングが悪かったのだ。
義憤のままに献血はいいぞ!って言ってたら、なんとなく「話題が直結しすぎて面白くないな…」という邪念が入ってしまいまして、お流れになってしまった。
「鉄が豊富にある」をちゃんと使った血の海描写は「鋼の錬金術師」にありましたね。グラトニーの腹の中、「血の海、鉄だらけ、武器は錬成し放題」って。

「なぜヒロインは主人公をフルネームで呼びたがるのか」
記憶喪失の主人公が目覚めてから、数人のお見舞い少女がやってきた。容姿、性格、その他いろいろ、個性はあるが申し分なし。ただ…「なんでみんな、”それぞれ違う名前”で、しかも”フルネーム”で僕を呼ぶんだ?」

かねてから「フルネームで人を呼ぶヒロイン…ていうかキャラクターって何考えてるんだ…?」と思ってたので、あえて正面からぶつかってみることに。

ラブコメすぎだなぁ……と思って試し書きもしなかったけど、やるならこれも「銀と金と千奇万講」と同じ、200×4システムかな。

いっそラブコメ逆噴射小説大賞でもあればいいんだけどね!

「(タイトル秘匿)」
(ここにタイトルとあらすじを書いていたけど、割とマジで大事に使いたいネタだからこういうオープンな場には書かないでおきます!)

またラブコメじゃねーか!!

いっそラブコメ逆噴射小説大賞でもあればいいんだけどね!

2020年3月31日締め切りのラブコメ小説賞に間に合うかなぁ。今すぐ仕事やめてすべての予定を切って死に物狂いでなら…?

世界崩壊一年前
世界があと1年で滅びる、と確定的になったから、あたしは一年間旅をすることにした。世界は、意外と何とかなってる。ワーカホリック様様だね。さぁ、今日はどこまで行こう。

たのしい。けどパルプみたいな乾きはない。

ゾン・ヴィーガン
ヴィーガンの…ゾンビ
!!一発ネタすぎるぞーっ!!
こんなやつに5本のうちの1本を託す勇気はなかった。

まとめ

パルプとはなにか?
……正直まだ、わからん!
誇りを賭けた闘争である。っていうのはわかる。その割にラブコメは毛色が違う、と感じるのは、愛に誇りがないのではなく銃弾が飛ばないからかな…でも暴力や武力がないとパルプじゃない、っていうのは違う気がする。

今回ラブコメをやらなかったのは、「僕にとってのパルプじゃない」から。結局、どこかスカッと決まったりピリッと緊迫しないとパルピックでなくて。僕がラブコメやると空間が柔らかく甘くなりすぎるんだよね。そう望んでるから。
そういう意味だとヤマや谷を作るのが苦手な俺は(平和に生きてイチャついたらそれでよくない?)、パルピック意識くらいでちょうど良いのかも。

じゃ、パルプってなんだ?

例えば僕の中では「サスペンスは謎によって命が脅かされる、よりアクションなもの」「ミステリは謎によって心を脅かされる、よりメンタルとロジカルなもの」って分岐がある。
言ってみれば「マリオ64はサスペンス」「ゼル伝はミステリ」なんですよね!(「マリオはアクションに寄り、時のオカリナは謎解きに寄ってるけど、本質的には同じゲーム」って宮本さんだったかがインタビューで答えていたような)

だから、きっとどこかに(少なくとも僕の尺度で)「パルプか、それ以外か」を分かつものがあるはずなんだけど……。

奇妙なもので、今回の5本はパルプだって言えるから、「無自覚だけどなにかの分岐点はもう僕の中にある」はずなんだ。つまり5本(と、去年のやつらのいくつか)の中に共通点を見出せば…あるいは、なにか僕のパルプが見えるのかもしれない。僕のパルプ道、そして小説道はまだまだ始まったばかりだ。

だからみんな、色々感想頂戴ね。
それは道しるべで、足跡で、燃料だから

ラフ、プロトタイプの話。
今回は、5本中4本でプロトタイプを創った。原案も作ったし、「……違うな!!」って切り捨てもした。書き直しもした。

昨年が「とにかく多作でとにかくアウトプットに慣れろ!」だとしたら、今年のレギュは「今度は精度を上げてぶっ殺せ!自分が納得できなきゃ捨てる勇気も持て!」ってことだ。
量の2018、質の2019。鍛えられたなぁ。

そもそもの作成方針の話。
「400字で落とす」「800字で種明かしする」は本意ではない。
「数万字の長編小説の最初の800文字である」って考えると、大冒険な奇策や大実験な秘策、大仕掛けの策はできない……というより、適切じゃない、と思うんだよね。
だから、基本的には全体的な話の流れはイメージにあったりする。かけるかはわかんないけど…。
「冒頭を書くだけ」のコンテストに見えるけど、実は「全体のイメージ・プランを創り上げる訓練」でもある、と思った。

じゃ、それを鍛えられた今どうするか?書いていくしかないんだよ!

カバー画像の話
Unsplashさんすげーわ…。
あ、ちなみにこのライナーノーツのヘッダは、今回使ったヘッダを全部PowerPointに突っ込んだらテンプレデザインでいい具合にしてくれました。やるじゃん。

終わりに

色々書いてはみたけれど、とにかく書き続けなきゃいけないぜ。

小説家として、物書きとして、創作者として、生きていきたいんだからさ。

生計を立てるという意味でも、誇りをもって立つという意味でも、僕にとって物語はなくてはならない。

今回の戦いは、発見もあったし、悩みもあったし、戦えた実感もあった。結果が出る前に言うのもなんだが、実りあるものだ。

あとは結果が着いてきてくれたら一番なんだけどな。

さぁ、戦え!みんなも達者に戦え!

おまけ:今回のタイトルは、「プロトタイプの話をしたり、ポイント解説したり、悩んだところとか新たに向き合った”力”の話をします」の意味でした。

Twitterとかマシュマロ(https://marshmallow-qa.com/A01takanash1)とかで感想頂けるだけでも嬉しいです。 サポートいただけるともっと・とってもうれしいです。