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ステキ・ギャラリー

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皆様のステキな作品集です。
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#ショートショート

怪談 水茶屋の娘 【#赤い傘】シロクマ文芸部参加作品 (1600文字位)

怪談 水茶屋の娘 【#赤い傘】シロクマ文芸部参加作品 (1600文字位)

 赤い傘を見つけると走り寄る。しとしと霧雨がふりはじめた。

「おみつ」
「真さん」

 おみつは、年の頃は十七くらいの水茶屋の看板娘で真之介とは仲が良い。仕事の合間に近くを通ると茶を飲んだ。みなに好かれる娘で、誰かれなしに愛想をふりまいていたが、真之介とは本気の恋仲だ。

「あのな……」
「これ、きれいでしょ」

 くるくると赤い傘を回す。おみつは自分が店に出る時は、その傘を置いて客に知らせてい

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娘は親をコピーしていく

娘は親をコピーしていく

ひとり娘が社会人となり
有休を使い、帰ってきた

娘は元旦さえも納期が迫り、家族が揃うことなく
平日と変わらぬ三が日を過ごした

でも、今は元旦と似た
浮いた気分で娘と買い物へ行く
「なにか、美味しいものを食べようか」

私が教えてない所作で、娘は食事する
「ここはアタシが払うね」
レジへ向かう娘の頼もしさに
親の役目が終わったような
安堵とは、少し違った寂しさを覚えた

二十数年前、春
入園式に

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【終了】「夏の香りに思いを馳せて」投稿企画開催💫【xu×rira企画第二弾】

【終了】「夏の香りに思いを馳せて」投稿企画開催💫【xu×rira企画第二弾】

【告知動画はこちら↓】

みなさま、お久しぶりの企画でございます。
この度、riraさんと共同で企画を開催することが決定いたしました!!
(riraさん、俳句大会でお忙しい中ご協力ありがとうございます!)

正直、noteのモチベが下がりつつあったわたし。
SNS疲れも相まって、なかなか表に顔を出すことをしていませんでしたが、この時期は何を隠そう、思い出深い時期でもあるのです。

noteが初めて

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小説:指で、そっと。【4663文字】

小説:指で、そっと。【4663文字】

「いらっしゃいませ」

 蔦の絡まる古風な骨董品店。冬の深まりを感じさせる寒い午後、店に入ってきた男は、黒い皮のロングコートを着た洒落た老紳士。店主は男を見るなり、すぐに声をかけた。男はこの店の常連客で、特に美術品に目のない男だった。

「旦那、気に入りそうな品が入りましたよ。旦那が来るまで、誰にも見せないでおきました」

 小柄で色白、丸眼鏡の店主は、揉み手をしながら男に話す。

「おお、そうか

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大人の鮨 再び

大人の鮨 再び

ムーンサイクルの姐さんが、冬の真中に帰国されるとの事。

今回もお鮨を楽しみにして居られる御様子なので、今宵も大人の鮨を握らせていただきます。

表現が不適切と感じるお客様もいらっしゃるかと思います。
苦手なお客様は此方で引き返していただければ幸いで御座います。

へい!らっしゃい!

助六が握らせていただくのは、鮨といってもいわゆる鮨じゃあ御座いません。

俳句、短歌、都々逸を詠んだものをシャリ

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DEEP 【完全版】

 強い陽射しに輝く海原に飛び込んだのは、とびきり暑かった8月の事。

 どう考えても奇跡としか思えない。黒く美しく輝く髪、頭の先から足先まで美しく描く曲線。美人でスタイルも抜群の女性が、まさか僕の彼女になってくれるなんて。

 その夏、そんな彼女と海に来ることが出来た。美しい彼女と美しい海、それもまた一つの奇跡。

 彼女は一足先に駆け出し、砂浜を抜けて海に入っていった。駆け出した彼女の美しい曲線

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