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続ける!毎日掌編小説

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プロの小説家になるために毎日掌編小説を投稿します! 正確には毎日(00:00までに)必ず一つ投稿します。 もし投稿が過ぎた場合は、勉強も食事も睡眠も無しでその日に作品を5つ出しま… もっと読む
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2024年1月の記事一覧

『沈む星、昏い未来(Sinking Star, Darkened Tomorrow)』続ける!毎日掌編小説第20回

『沈む星、昏い未来(Sinking Star, Darkened Tomorrow)』続ける!毎日掌編小説第20回

 [1200]

 カビと生ゴミが混じった匂いが、喉の方で痞えているように臭った。これは私が小学校に入学して半月してからの話だ。

 凍りつくほど冷たい何かが足先から腰まで、腰から手の先まで登ってきた。

 祖母に買ってもらった赤いランドセルはその時すでに鮮やかさを失っていた。

 視線をほんの少し下に落とすと、赤と白のボーダー柄の子供用テーブルに置かれた、三百円が目に入った。ジリジリになっている

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続ける!毎日掌編小説。19回目『世界最強のコピー人間を倒したい』

続ける!毎日掌編小説。19回目『世界最強のコピー人間を倒したい』

[1200]

 特殊能力を持っている人間は全人口の半数を超えた。

 人の持つ力が増して、世界の均衡が崩壊されるものの、能力者が増えてきたことによって落ち着いてきた頃。何の前触れもなく最強の能力者が現れる。

 その能力の名は、「コピー」他者の能力を完璧に真似て、使用することができる。ストック数は無限。

 現時点での弱点は、コピーするためには相手に触れなければならない。そして、真似た能力の有効

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続ける!毎日掌編小説。18回目『パフェが食べたすぎて』

続ける!毎日掌編小説。18回目『パフェが食べたすぎて』

 お腹がすいた。甘いものでも食べたい気分だった。
「パフェでも食べたいな」
 家を出ると外は真っ暗だった。深夜の冷たい空気を肌に感じる。体が凍りそうだった。それでもパフェが食べたかった。パフェの口になってしまっていた。
 私はよく深夜に目が覚める。3時とか4時がほとんど。
 そしてよく、この時間に起きると甘いものが食べたくなってしまう。

 しかし、こんな時間だからか、店はどこもかしこも閉まってい

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続ける!毎日掌編小説。17回目『遠い幸せの地』

続ける!毎日掌編小説。17回目『遠い幸せの地』

 毎年の金がかかることだけを思わせる冬だ。

「×△○××」

 僕は体の中に溜まる憎悪を吐き出して、すっきりした。恐ろしい言葉だ。

 君は泣き出しそうな顔をしていた。ざまぁみろ、そう本気で思った。

 どうせ本当に死ぬわけじゃない。明日謝れば終わりだ。

 みんな僕の前から消えた。

 すぐに謝れば良かった。そんな後悔が今さら現れる。もう謝る君はいないのに。

「リア充どもめ、消えろよ」

 

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続ける!毎日掌編小説。『水』

続ける!毎日掌編小説。『水』

 痛かったのを覚えている。そうだ、私は殺された。ただただ深い海の底を見つめ思い出す。私は周りの水と一体化していた。

 殺されるのは時間の問題だった。学校に行くのが怖かった。行けば肌に印を押される。トイレに閉じ込められて水をかけられた。恥ずかしくて、体は次第に溶けていくから、私が私でなくなっていくのを感じた。
「お前はゴミだ」
 だからなんだ。そう思えるほど、それを腐るほど聞いた。耳がダメになるほ

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毎日続ける!掌編小説『痺れる痛み』

毎日続ける!掌編小説『痺れる痛み』

 痛い、腕がひどく痺れる。いったいなんなんだ。ますます痛みが大きくなる。
 この時間が無限に感じられるほどの凄まじい痛みだ。苦しい。
 しかし、今は会議中だ。席を立つどころか、声も出せない。どうしよう、どうしたらいいんだ。くそ、mめまいが。
「しゃ、社長、少しいいですか」俺は立ち上がって同僚のプレゼンを中断させた。
「ん、なんだ。質問か?」社長はこちらを見た。「質問なら本人に許可を……」
「違うん

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続ける!毎日掌編小説『あなたの優しさ』

続ける!毎日掌編小説『あなたの優しさ』

「時折僕は優しくなくなるんです。あ、逆に言えば優しい時はある、とは言えないです」ソファに沈み込み、俯いている男は弱々しく言った。「なぜなら、僕は人に優しくする方法がわからない」
 男はトゲトゲとしたこめかみを掻いた。
「お願いします。どうか、僕に優しさを教えてください!」
 男は勢いよく立ち上がり、机を乗り上げた。その衝撃で向こう側にちょこんと座っていたぬいぐるみが倒れた。
「はぁ、何してんだろ、

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毎日1作品!掌編小説。13回目『飛べ』

「棒高跳び男子。決勝に進出できる選手が決定しました!」奥の座敷から実況がテレビ越しに聞こえた。
 花柄のエプロンに扇子を広げた時と同じぐらい腰が曲がている女がお盆を持って座敷に入ってきた。
「よくやった、カツキ」
 このテレビに引っ張りだこな人は、カツキの実の祖母である。カツキには、母親がカツキが生まれてすぐに亡くなり、父は当分家に帰ってきていなかった。だから小さい頃から祖母に面倒を見てもらってい

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第12回、毎日続ける!短編小説「ゆうウォンとキルみー」

 夏の始まり、蒸し暑くなる頃だった。そして後もう少しでやってくる夏休みに浮かれる私たちは、少しばかり思考を怠っていた。

 ノートを忘れて教室に戻った私はあるものを目撃してしまう。滅多に人が入ることのない倉庫になっている部屋。そこにメガネをかけた、ビクビクしているやつと、ヘラヘラしながら周りを見渡しているのが二人、そこに入った。
 
 怪しい、昨日先生が朝のHRで言っていた。最近イジメが急増してい

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毎日続ける!短編小説、11回目『あいランうぃじゅユー』

 僕たちに家はない。

 ただ逃げ続けなければいけない。ヒューマンは僕たちを研究するために、手段を選ばず襲ってくる。逃げなければ実験にされる。

 ずっと一人だった。孤独と、走ることを胸に僕は生きてきた。人間年齢で、齢10。こんな僕は無事みんなを救出できるのだろうか。でも、諦められない。絶対にみんなを救ってみせる。
 宇宙船で我が母星から地球にまで逃げてきたのはいいものの、こっちでも終われることに

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続ける!毎日掌編小説、第10回目!『ジュネーヴの別れ』

 19世紀からフランスの植民地になった僕たちの国、ベトナムはいつの日か、たどり着く先は自由であるべきだ。
 そんな思いを、誰かに届いて共感して欲しくて、伝えまわる毎日を過ごしていた。
 ある日のこと、僕の前にある集団が現れた。

「君が、独立を誰よりも訴えかけてる、ホットなボーウィ、かい?」
 喋り口調がとても独特な彼女はウインクをして言った。
「どなたですか」
「私は、ハイン。君を私たちの組織に

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続ける!毎日掌編小説、第9回目!『現実より』

「どうしてそれができないんだ」この言葉を最後に、私は現実から飛び出した。

 忘れていたいことなら無限に出てくるのに、幸せだったものはすぐに消えていく。

 あなたに今の私を教えてあげないと、うん、手紙が一番いいな。

 私は鉛筆と青の折り紙を取り出した。

 1枚目の手紙

 私の居場所はここだけ。手を汚したわ。ごめんなさい、やっぱり抑えられなかった。

 したくもない仕事だった。だからやめて清

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続ける!毎日掌編小説、第8回目!『気分が良かった』

 僕は恋愛に興味をそそられない。

 何事にも情熱を注ぐことができない人間だ。ただ毎日を呆然と過ごしている。何の彩りもない人生だ。

 しかし、ある日のこと、心から自分の気持ちを打ち明けられる相手と出会う。

 それは雨の日、仕事帰りに傘を刺しながら住宅の外壁のすぐそばを歩いていたとき。角を曲がると君はいた。湿って今にも崩れてしまいそうな入れ物。君はビニールから顔をのぞかせる。

 君は優しくて、

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第7回目。続ける!毎日一作品掌編小説!『be worth it]

「なあ、みなと、俺少し太ったと思わないか?」
 俺は皿洗いをしているミナトに声をかけた。みなとは俺の彼女だ。
「んー」みなとは俺をじっと見た。「太ってないと思うけど?」
「体重が上がっているんだ」
「だったら間違いないね」何枚も厚着した彼女の頬は赤く火照っていた。「今度一緒にランニング行く?」
 やっぱりみなと優しいな、今日だって本当は仕事で疲れているはずなのに率先して皿洗いしてくれている俺もそん

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