野口 桃花

大した特技もないふつうのOL。素直さと謎の行動力だけが取り柄。 旅と美味しいもの、ぷー…

野口 桃花

大した特技もないふつうのOL。素直さと謎の行動力だけが取り柄。 旅と美味しいもの、ぷーちゃんを愛しています。 5年生存率6%のクライマックスはいつ? ここは、小さな嘘を混ぜるつもりがすぐに忘れてありのままを書いちゃった結果です。

マガジン

  • 独身女が結婚指輪を買う話

    末期がん宣告されたアラサーOLが、破談を乗り越え、自分で自分の結婚指輪を買ってトラウマから脱する、哀れでふざけたストーリー。おそらく、もたもたはがゆいプロセスになるかと思いますが、見守ってくださると嬉しいです。

  • サポートで覗かせてもらった世界

  • ぷーちゃん日記

  • "雨は五分後にやんで" 本ができるまで

    『雨は五分後にやんで 異人と同人Ⅱ』 *内容紹介 浅生鴨による責任編集の元、「『五分』という単語を作品中に使うこと」だけを条件に、各分野の書き手19人が自由に書いた文芸アンソロジー集。小説、エッセイ、漫画、イラスト、インタビュー、パズルなど、文芸同人誌の枠を超えた幅広いジャンルの作品を多数掲載。 ▽Amazon amazon.co.jp/dp/4991061431/… ▽ネット書店 https://bit.ly/2VQancH ▽お近くの本屋さんでお取り寄せ (下記URLを店員さんにお見せください) http://asokamo.com/shoten.html *著者一覧 浅生 鴨 今泉力哉 岡本真帆 小野美由紀 河野虎太郎 古賀史健 ゴトウマサフミ 今野良介 スイスイ 高橋久美子 田中泰延 ちえむ 永田泰大 野口桃花 幡野広志 山下 哲 山田英季 山本隆博 よなかくん

  • ここにしかない旅

    2010年の夏の終わり。大学生だった私の、少し変わった東北一人旅。

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「ママ」をゆるしてください

「ママ」をゆるしてください

初めて会ったときは0歳2ヶ月だったぷーちゃんが、今日で2歳になった。

用があって訪れたペットショップで、高値で売られていた仔犬だった。
おめめが大きくてかわいいお顔だなと思ったけど、鼻水垂れであまり元気はなかった。
小食で食べムラもあるらしい。
相談していた父に「飼うなら元気な子にしなさい」と言われていた。この子は体弱そうだな…と思った。

命に向き合うことを余儀なくされた今の私だからこそ、同じ

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家族

家族

3ヶ月の仔犬だったぷーちゃんが「うちのこ」になってくれたあの日から5年経ちました。
仕事で疲れた時も、病院で心が乱れた時も、これからが不安になった時も、メンタルを保てていたのはぷーちゃんのお陰なのだとおもいます。

真剣に話しかけたら首傾げながら一生懸命聴いてくれるし(途中でどう見ても飽きちゃってるけど)、
分けっこして「これ美味しいね」って言えるし(好きじゃないものはぽいぽい床に捨てられるけど)

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死後の世界

死後の世界

ばあちゃんのいない家で、薪をくべて風呂を焚く。
いつもしてもらっていたから、まともに焚くのは初めてだった。
赤く燃える薪を眺めながら、火葬の時を思い出す。
このときわたしは初めて、仏教の死後の世界観について調べた。

よく耳にする三途の川。
これは死後七日目にたどり着くらしい。
いわゆる初七日法要のある日だ。
「死にかけて〜三途の川が見えて〜」みたいな話あるけど見えるはずないらしい。

手前にある

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終活

終活

終活しなきゃな。
病院の無愛想な天井を眺めてそう思ってから、四年が経った。
終活といってもあれこれあるだろうけど、ここで指すのは「物の処分」のこと。
小さな言い訳をすると、どっちが家族にとって幸せなのか、分からなかった。
終活について調べても、著作権フリーのおじいさんおばあさんのイラストで、「娘息子に負担をかけないように〜」と出てくるのもうんざりした。
逆やねん。逆、逆。
亡くなった娘の物を処分す

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終の住処、リフォーム完成

終の住処、リフォーム完成

祖父を数年前に亡くしてから、山に囲まれた電波も入らない地で、一人暮らす祖母。
少しずつ体も弱り、「おじいさんに早く迎えに来てほしい」「寂しい」と電話越しに言う。
部屋も荒れ、実の娘である母たちまで、泊まるのを敬遠する。
体調も悪化しいろんなことが自由に出来なくなり、一人で死を待つことの心細さ。今のわたしには少しは分かる気がした。

子ども部屋と称し、孫であるわたしたちが遊んでいた離れ。
あの頃から

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さよなら東京

さよなら東京

大学生になったときから十年ちょっと住んだ東京を離れ、地元に帰ってきました。
もう一ヶ月ほどになります。
この決断に至るまでに、いろんな感情や理由があったのだけど、今は少しほっとしています。
まだ未成年の真っ黒に日焼けしたじぶんが、たくさんの希望を抱えて出てきた東京。
標準語もマスターした。
キャンパスの紹介画像で見た、銀杏並木も(臭いけど綺麗)、でっかいクリスマスツリーも(もみの木ではないらしい)

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流星群

流星群

帰省初日、「いってらっしゃい」と見送られ、ぶんぶんとしっぽを振るぷーちゃんとおさんぽに出た。
春らしい草の匂いがして、夜はまだ少し冷える。
子どもの頃ツツジの蜜をよく吸った公園を通り抜けた。
今日はこと座流星群が見えるらしい。
坂道をのぼりながら広がる星は、東京よりもずっと多い。
立ち止まって、ぐるぐると夜空を見渡す。邪魔になる高いビルやマンションもない。
ぷーちゃんは星なんて知ったこっちゃなく、

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ぐるぐる

ぐるぐる

コロナ禍以降、固定されたメンバーとしか会わなくなった。
その友人たちと約束のない休日は、愛犬ぷーちゃんを連れて近所の河川敷か公園に行くだけだ。
「ずっとテレワークで、決まった人にしか会わない。そろそろつまらなくない?」
電話越しの友人の意見に、何も考えてなかった頭が動き出す。
当たり前だと思ってた。だってコロナだし、しょうがないし。
友人が私の本音を引き出す。
「言われたらつまらないなとも思うけど

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終の住処に関するご報告

終の住処に関するご報告

ぽんこつすぎていろんなことがのびのびののびのびで、野比のび太くんにも頭があがらない野口桃花です。
ドラえもんを待っていますが、愛犬ぷーちゃんしかいないので、癒しを与えられてさらにだらけてしまう日々です。
ただもう完遂を待っている状況じゃにゃい!ということで、とにかく、突然になりますが謝ることと報告をすることにしました。

noteのコメントやサポートをいただいてのメッセージにようやく一通り完全に目

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三年生の私が伝えられること

三年生の私が伝えられること

結婚指輪を買うまでのプロセスです。
こちらにまとめています。
https://note.com/4848momo/m/m1496e472cace
____

がんになって初めて、病気にも「進級」という考え方があることを知りました。
「二年生になりました」
「一年検診クリア!無事進級できました」
そんなツイートやブログも、この界隈ではちらほら見かけます。
告知を受けた当時は、この進級がとても眩しく思

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それぞれの味方

それぞれの味方

④すべて終わった日2

-------

⑤それぞれの味方

マンションの階段の下で泣き崩れた私は、友人に電話をしていた。
「もっしもっし、うっうっ、ゆうっ、ちゃんっ。うっうっ」しゃくりながら話す私に驚いた彼女は「えっ?!どうした」と言ったあと、いつもよりずっと優しい声で「どうした〜」ともう一度言った。
「うん…うん……」ととても丁寧に相槌を打ってくれる。

「はぁぁぁああああ?!?!」
ブチギレ

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すべて終わった日2

すべて終わった日2

③すべて終わった日1

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④すべて終わった日2

そわそわが止まらない。
店員さんに名前を告げて、着席する。
少ししてついに彼のお母さんが現れた。
「はじめまして!」
はっと立ち上がり、深々と頭を下げて、はにかんだ。つもり。緊張でうまく笑えていたかは分からない。
入院の見舞金をいただいていたお礼もあり、菓子折りを渡す。
彼のお母さんは、「私もあるの」と和柄の菓子折りを贈ってくれた。

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すべて終わった日1

すべて終わった日1

②プロポーズ

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③すべて終わった日1

地下鉄から地上へと続く階段の先の光が、眩しくて憎たらしい。
エレベーターを見つけることがこんなにも大変だなんて、知らなかった。
こうも分かりづらいものかね、そう文句を垂れながら駅をさまよう。
やっとの思いで出てきた二ヶ月ぶりの池袋の街は、何も変わっていなかった。
ホットペッパービューティーを開き、お店の場所を確認する。
「えっと、こっち

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プロポーズ

プロポーズ

①桃花、結婚指輪を買う

②プロポーズ

スマホを片手に欲しい指輪を検索していると、頭の中に過去の自分の映像が流れてくる。
病院の大部屋。カーテンで仕切られたわずかな一角。陽も差し込まないそのベッドの上で、寝転がりながら同じようにネットサーフィンをする私。

ステージ4の癌の告知をされてから、一週間くらいが経っていた。
7月に入ったばかりのその日は、よく晴れたいい天気だった。
「外は暑いよー。夏が

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桃花、結婚指輪を買う

桃花、結婚指輪を買う

メリークリスマス。
あちこちでプロポーズされてるのかなぁ。
指輪に目を輝かせてるかなぁ。
一緒に買いに行くパターンあるか。

死ぬまでにやりたかったこと、欲しかったものっていくつかしかないんだけど、そのひとつが結婚指輪(婚約指輪)なのです。
ありきたりな女子の夢です。

「ゼクシィ買いに行こうね」「退院したら、指輪選びに行こうね」との彼の言葉に楽しくなっちゃった分、二年も経つのに未だにその夢の消失

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奨学金は負債か

奨学金は負債か

母はいつも「欲しいものはない?何かあったらいつでも言うてや。お金使って、お願い」と言う。
自営業の父の仕事は大きく景気に左右された。受験生になった頃、うちはとても貧乏だった。
それでも都内私大に行きたかった私は、奨学金を貰うことにして上京した。
奨学金の手続きで父の所得証明を取得し、初めて父の稼ぎを知った際、あまりの低さに言葉を失った。
薄々お金がないことは感じ取っていた。だけどあからさまに言葉に

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