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奨学金は負債か

母はいつも「欲しいものはない?何かあったらいつでも言うてや。お金使って、お願い」と言う。
自営業の父の仕事は大きく景気に左右された。受験生になった頃、うちはとても貧乏だった。
それでも都内私大に行きたかった私は、奨学金を貰うことにして上京した。
奨学金の手続きで父の所得証明を取得し、初めて父の稼ぎを知った際、あまりの低さに言葉を失った。
薄々お金がないことは感じ取っていた。だけどあからさまに言葉に出すこともなく、私の希望で入った私立の高校に最後まで通わせてもらったことへの感謝の念も湧いた。それまでは当たり前だと思っていた。
利子がつかないよう上位の成績を保ち(給付になるほど優秀ではないのが残念)、週六でバイトをした。
それでも貸与の合計額は350万円になった。
社会人になった私は、未来の夫や子どもに迷惑をかけないよう、返済額が貯金できるまで結婚しないと決めていた。
同僚と同じようには旅行に行けなかったり、ボーナスが出てはお披露目会となるお洒落な高いコートも買えない。
彼氏ができても、招くのが恥ずかしいボロアパートに住んだ。
奨学金のことを話した同期に、「それっていえば借金持ちってことだよね?結婚するつもりの彼女だったら正直困るわ〜」と言われたこともあった。
そりゃそうだよねと思う反面、怒りも、悔しさも湧き上がった。証券マンであるエリートパパをもつ学習院育ちの坊ちゃまには分かるまい。

その「借金」や「負債」と呼ばれる学費の返済は確かに、結婚が遠のいた要因のひとつ。(あくまでひとつ)
だけど決めたのは私。それも私の人生。
両親は、進学を、東京に出ることを、反対しなかった。それだけで十分。
これがよかったとは言わないけど、これでもよかったよ。
時には悔し泣きをすることもあったけど、稼ぐことの大変さも、お金の使いどきも、たくさん考える機会を貰った。

「お父さん、お金なくて苦労させたこと、いつも悔いてるのよ」

だから。そんなこと思わないでいいよ。

ようやく貯まった頃に病気が分かって破談になったけどさ。お陰でいきなり百万円もかかった治療費入院費も一括で払えたし!ははは。

私は「負債」のお陰で、強くなったし優しくなった。少しね。たぶんね。
だからいいの。

久しぶりの冬ボーナスが出たよ。何か贈ります。



人生第二章を歩むための、なにか"きっかけ"を与えていただけたら嬉しいです!あなたの仕事や好きなことを教えてください。使い道は報告させていただきます。(超絶ぽんこつなので遅くなっても許してください)