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お菓子の箱の中

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しまっておく。 ほかのひとの。
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2017年12月の記事一覧

もし、いつか失明しますと診断されたら、あなたはどう生きますか?

僕の目の病気は、網膜色素変性症というものです。人により、発症する年齡や進行の速度が違いますが、視野が徐々に狭くなっていくことで多くの人が最終的に失明します。僕の場合、14歳のときにこの病気の診断を受け、医師から「いつか失明するかもしれません。」と伝えられました。それから20余年、僕の場合も例に漏れず症状が進行してきました。現在は左目が失明している状態で、右目の視野は残すところあと1%程度です。

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未読の本を君に勧める

未読の本を君に勧める

「カフカの変身を読み終わったんだけど、他におすすめない?」

と、Rさんから連絡が来た。

うん、あの、いや、お前すげぇよ。よく読めたなあれ。私はダメだったよ。途中で挫折したよ。と、思いつつも、変身の感想を聞いた。

Rさんは古典文学や純文学にハマっている。この前まで、やれ走り込みだ腕立て伏せだと体づくりをしているかと思ったら今度は本である。

Rさんは古典を読んだことを自慢するでもなく「なんとい

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恋人と別れ話

恋人と別れ話

恋人と6年も付き合っていると、別れ話が始まることもある。

だいたい切り出すのは私の方で、その時は大変真剣なのだが「相手に全くその気がなくても、別れ話をしたことがきっかけで別れることになっても致し方ないのでは」と思うことが多々ある。

先日、関西に引っ越すことが決まった。就職先が兵庫県で、大阪の近くなので神戸からはずいぶん離れているのだが、Iターンをすることになった。Iターンって全然ターンしていな

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物語は、ちと不安定

物語は、ちと不安定

一生、「あぁ痛いな」って、
じくじくと心の臓を膿ませながら、

一生、「あぁ逃げてるんだな」って、
喉の奥の奥をヒリつかせながら、

一生、気がつかないフリをして、
見え透いた嘘を嘘のまま大切に育てて、

いつかきっと、
それが小説になると信じて生きていくよ。
#2015 #1119 #SNSの身辺整理 #tumblerより

ベランダのソファ

ベランダのソファ

はじめての1人暮らしは、当時でもレトロすぎた、古い木造住宅。前の住人の置き土産である黄色いソファが、2階の1Kにぽつりと残されていた。

暮らし始めた際、ソファはありがたくいただいたものの、置いたままでは布団すら敷けないので、ベランダに置くことにした。
多少広い作りのベランダではあったけれど、2人掛けソファを置いてしまえばかなりの狭さになるうえ、そこは景色もなにもあったものではなかった。向かいの一

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魔法がとけた夜のこと

魔法がとけた夜のこと

 

 22歳になるまで、わたしは自分のことを特別な子だって思いこんでいた。
 でも、絵が上手かったり、足が速かったり、これと言って才能があったわけじゃなくて、結局のところ自分が平凡な人間だと気づいたのは、思う存分若くてきれいな時間を使った後だった。
 だれのせいでそう思い込んだかと聞かれたら、間違いなく、8年前に死んじゃったママのせいだった。

 子供の頃はそれでも絵を描くことが好きで、アニメの

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受け取る準備

受け取る準備

もうかなり前、そう10か月程前の話になりますが、忘備録の意味も添えて書きたいと思います。
友人とラインでやり取りした時の話です。

彼女の文面を読んで、なるほどな~って思ったことがありました。

彼女、友人とのやり取りの中で、なんか気持ちにパンチを食らったみたいなんですよね。
ちょっと思い切ったことを言われたようなのですが…… その彼女というのは、絵を描く人で、やり取りをした友人というのは、創

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ことば

人間
同じ言葉を使っていても
その人の感覚や
バックグラウンドによって
言葉の意味が結構違ってくるから
話なんてたいてい
かみあってないよ

話なんて
ずれるのが基本だよ

誰も悪くない。

うちの子は本が読めない

うちの子は本が読めない

私は小さい頃から読書が大好きで、いつも本を手にしていた。親友も本で、恋人も本、困ったときの相談相手も本。とにかく生活のすべてが本だった。そのおかげか、国語の成績はずば抜けてよかったし、いまは文章を書くことを生業にできている。

だから、「子どもに本を読ませよう」とか「読書が豊かな心を育てる」といった、ここ最近の教育スローガン的なものにも納得していたし、「その通り! 読書こそ正義!」みたいな読書原理

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きれいなのはきれいな言葉だけじゃない

きれいなのはきれいな言葉だけじゃない

小学4年生の時に、祖母について書いた作文が、市だか県だかの文集に載った。

祖母が入院し、そのお見舞いに行った時のことを書いた作文だ。「早く元気になってほしいです」。そう結ばれた文章を読んで「涙が出ちゃったよ」と、先生はほめてくれたけれど、私はちっとも嬉しくなかった。

実のところ、私は祖母のことがあまり、というか全然、好きではなかったし、早く元気になってほしいなんて、1ミリも思っていなかった。そ

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さよならの都

もう長いこと憑かれている夢がある。
でもそれももう終わる、終わってしまうのだと思う。

もとは中学の頃に友人が見た夢の話で、私に聞かせてくれたのだった。
なのに何度も繰り返し思い出しているせいで、今ではもう自分が見た夢だったような気さえする。
この頃はもうどこまでが友人の見た夢で、どこからが私が勝手に作り出したものなのかも、よくわからなくなってしまった。

あれからずいぶん時間が経ってしまった。

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