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姫崎ゆーの心に響いたnote

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noteの本棚の姉妹マガジン心の琴線にふれたnoteを追加していきます。
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#伊集院秀麿さん

生きている実感がほしくて

生きている実感がほしくて

雨を聴く、雨を耳で、生きている実感がほしくて

2年前の夏
コロナウイルスに感染したわたしは、友達から聞いていた話とまるで違って無症状だった
毎朝保健所から健康観察の電話があっても
特にこれといった症状がない

ただ、ひたすら自室に隔離され
ウイルス感染した弟とそれぞれが2階にこもり
実家にはお風呂が1つしかないので
母に感染させないよう気遣いした

ウイルス感染より、ヒマ死にするかと思った

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小説: ペトリコールの共鳴 ③

小説: ペトリコールの共鳴 ③

←前半

第三話 ネズミへのわずかな恩を
沈痛と悲愴を抱き合わせた冬から、
若葉が目に優しい5月になった。時は疾走する。

「子どもの日か…」意識したのは何十年振りか。
今年は祝ってやりたいがケーキを食わすのも戸惑い、子どもの日と言えば兜や鯉のぼりだが高額な物を買ってやるだけの金はない。

俺は大きな損失を出す寸前に助けられた。
体長がわずか20センチ足らずのキンクマハムスターは、たった1匹で俺を

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暑さが胸に刺さる

暑さが胸に刺さる

炎天下に溶けゆく影
猛暑が肌に刺さる

浜辺で聞こえる子どもたちの笑い声
夏ならではが 気持ちを満たす

あさがおが鮮やかに咲く
ここにも夏ならではの美しさが溢れる

海に広がるきらめき

遠くで聴こえる船の汽笛
音が思い出を運ぶ

海鳴りの音 波打つ心を奪われる瞬間
切なさがわたしを揺さぶる

「嫌いな人のようになりたくない」

過剰なエネルギー配分を置いている

暑い日差し
夏に溶け込む甘い罠

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わたしのお気持ち表明

わたしのお気持ち表明

金魚鉢 捨て鉢 やけっぱち
ヤケのヤンパチ日焼けのナスビ
色は黒くて食いつきたいが
あたしゃ入れ歯で歯が立たないよときた

金魚鉢のお題で、映画「男はつらいよ」
寅次郎のセリフが出てくるほど
わたしは自分の『お気持ち表明』を抑えているつもりになっている

お気持ち表明をしたら
「あら、アタシへの名指ししない揶揄?」となり
『お気持ち奴隷』を作りそうで
他人へ気遣いさせるのもメンドクセー

現在、創

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小説: ペトリコールの共鳴 ②

小説: ペトリコールの共鳴 ②

←前半                  

第二話 一途に相手を想い過ぎ
布団から顔を出すのが、昨夜から愛羅に変わった。

キンクマが死に、俺は掌に乗せて涙を流すと、
「ネズミなんて汚い」
愛羅はキンクマをトイレに流してしまった。

「タツジュンさん、あなたは洗脳されてます。
動物は畜生です。ペットの葬式は搾取ですよ。
こうして自然に還すのが、普通で
真っ当な人間がするべきことです」

今朝まで

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執拗な人には届かぬ声

執拗な人には届かぬ声

わたしの指紋は警察署に保管されていると思う

過去に2回、ストーカー被害に遭い
1度目の被害は夜逃げする羽目になった
2度目の被害は弁護士へも介入してもらった

1度目のストーカー被害は
ストーカーされているのを知らずに生活し
風呂上がりに玄関チャイムが鳴り
無防備にドアを開けた瞬間、人が乱入 

わたしは悲鳴をあげた
壁に頭を押しつけられて、物で叩かれた後
人は立ち去った

それからは神経質にな

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小説:ペトリコールの共鳴 ①

小説:ペトリコールの共鳴 ①

【あらすじ】

妻の遥香が死去し、深い悲しみに包まれたタツジュンの前に、まさかのことが起きる。亡くなった妻の生まれ変わりのようなハムスター"キンクマ"が話しかけてきたのだ。キンクマの言葉に導かれるタツジュンは少しずつ心の重荷を下ろす。

しかし、SNSで出会った謎の女性"愛羅"が、タツジュンの生活に変化を及ぼし始める。愛羅の本性は一癖ある人物で、遂にはタツジュンを危険な状況に追い込む。

そんな中

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5月は、うさまろと散歩

5月は、うさまろと散歩

5月は、うさまろと散歩

青空は
天宮から降り注ぐ恵みだね

心地良い風が今日を包む

爽やかな気分な五月の日々
花々が愉快に、新緑は跳ねる
鳥の声が耳へ軽快に響き
この瞬間を丁寧に進む

薫風によって心は開放され
五月晴れは「どうにかなる」望みを与える

美しい季節を共に楽しもう

心地良い言葉がひらめき
幸福感を胸に、うさまろは歩み続ける

詩: 今こんな気分

詩: 今こんな気分

世界の彩りは
喜びと憂いが交差して起こる

ひと降りの雨に命の尊さ
ひと降りの雨に命の脆さ

濡れた路地に広がる静謐
生命の途上で息遣いを交わし
時は来て 
そして去る

集う人々の笑みや涙
雨に打たれ濡れても
それぞれの魂がここに宿る

喜びが宙に舞い上がる
雨が祝福に変わる
心が潤い輝きを生む

傷みが芽生える懐
喪失の痛みが心に刻まれる音
雨が涙となって落ちる頃

雨駆ける生命の神秘をまとい

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伊達にお姉ちゃんはやってない

伊達にお姉ちゃんはやってない

午後の着信は、弟が救急搬送された内容で
スマホの向こうから脳梗塞だと告げられた

うちは、脳家系とガン家系で
「弟は脳だったか」
こんなことを考えながら病院へ向かう

日曜日
弟が特大のボストンバッグに荷物を詰め
「何かあったら、よろしく」
豊後水道を震源地にした地震のあとで
柄にもなくナーバスになっているのか
わたしは適度な返事をしておいた

救急外来で1時間ほど待たされて
処置室へ通されると

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詩: ある女との出逢い

詩: ある女との出逢い

星空にできる月の輪は
穏やかな笑顔のあなたを映す

壮齢になっても色褪せない美は
画廊にかかる絵のようで

時空を止めることなく心を奪う輝き
知性と深慮が滴り
周囲を煌めかせる光彩

雅やかな雰囲気に身を包み
品位と気遣いが目を惹く

人々が見惚れる姿に
たくさんの思いが集中する

経験を積み重ねた温かさに
男性たちは魅了されてゆく

透明な俊敏さが
中年でありながら永遠に続く清らかな詩を思わせる

黄昏まだ先のこと

黄昏まだ先のこと

猫の奈々へ
たまにはあなたへ詩を贈ろう

もうすぐ17歳
奈々は若くはない
グレーの毛並みには白髪が混じり
でも緑色の目は輝きを持つ

奈々は鮮やかな存在を放ち
掴みどころのない在り方は
心地よい距離感でわたしに欠かせない

寝るとき
わたしはあなたへ手を差し出す
あなたは手のひらを枕にし
朝になるとお尻を乗せている

奈々が冷たく感じる

奈々、冷たいってなんだろうな
わたしは今でも言われてしま

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いじめっ子天国

いじめっ子天国

昔の上司が誕生日だと気づいた

当時、上司は御令嬢のなりゆきを心配され
悩んでいた
御令嬢は教師で
自身の受け持ちが学級崩壊し、うつ病に陥った

学級崩壊に至った原因はクラスのイジメだった

クラスにはイジメがあり、親分児童が子分を従え
好き放題だったという
イジメられた児童は不登校になり
教師が親分児童を叱っても聞く耳を持たない

教師は、子分児童を集めて叱ったところ
子分児童が堪りかねて親分児

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余計なお世話かもしれない

余計なお世話かもしれない

また人を拾った
フィクションではなく、実社会で

昨夜、お使いの帰り
徘徊する女性がおり、車道に飛び出しては
猫背の姿勢で遠くを見ている

車を路肩に停めて女性に声をかけてみた
女性は目を丸くし
「探し物がある。見つからない」らしい
懐中電灯も持たず、不自然に感じ
名前を聞いても、よそを向いて歩いていく

わたしを無視して空家の庭で右往左往する女性
とりあえず交番へ電話し
警官に引き取ってもらった

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