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〈実録〉奪還父さんブライアン ―片親疎外・子供拉致と戦う話

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帰宅すると家の中がやけにがらんとしている。妻と子供たちの姿が見当たらない。家財道具が無くなっている。 警察に捜索願を出しに行くと「ご家族は無事ですが、あなたには行方を伝えられませ…
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#cakesコンテスト2020

相手の言葉に耳を貸さず、自分の要求だけを伝える。元妻の態度は徹底している。

相手の言葉に耳を貸さず、自分の要求だけを伝える。元妻の態度は徹底している。

■29
 私の心中を慮ることのない彼女は、一気に決着をつけに来た。
「ハガキに『やり直したい』って書いてくれたよね。調停でも、そう言ってたよね。あれってまだ有効?」
(無効だよ、無効。とっくのとうに無効の向こう側に行っちゃったよ、そんなものは)
 もしかしたら本当に、本当に、本当に改心したのかもしれない。相手を信じて後悔するか、信じずに後悔するか、どうする。

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子供を連れ去り三年間、断絶させた元妻は遠い目をして言う。「独りで子育てするのに疲れた・・・」

子供を連れ去り三年間、断絶させた元妻は遠い目をして言う。「独りで子育てするのに疲れた・・・」

■28
 頭の中で、何度もその言葉がリフレインした。
「わたし、ひとりで子育てするのに疲れちゃった……」
「わたし、ひとりで子育てするのに疲れちゃった……」
「わたし、ひとりで子育てするのに疲れちゃった……」
「わたし、ひとりで子育てするのに疲れちゃった……」
「わたし、ひとりで子育てするのに疲れちゃった……」
・・・・・・・・・・・・。
(えっ)
(は?)
(えぇ?)
(はぁぁ?)
(えええええ

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「今、付き合っている人はいるの?」元妻の予想外の質問に、たじろいだ。

「今、付き合っている人はいるの?」元妻の予想外の質問に、たじろいだ。

■27
 「今、付き合ってる人はいるの?」話は予想もしていない方向へ振れた。 正直に言えば、元妻と別れてから二人の女性と交際したことがある。
 友人から「新しい出会いがあれば、考えも明るくなって、人生が好転していくよ」というアドバイスをもらったことも理由ではあったが、私があまりの淋しさに耐えられなかったというのが実際のところだ。
 二人とも素敵な人だったが、長くは続かなかった。元妻と結婚する前は楽

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「再会により、娘の心は平和になり、息子は父親を見つけた」と、元妻が言った。

「再会により、娘の心は平和になり、息子は父親を見つけた」と、元妻が言った。

■26
 元妻の車に乗り、近くにある二十四時間営業の大型スーパーストアに行った。駐車場に車を停めて、スーパーで買ったコーヒーを飲みながら話をした。田舎だからカフェなど無い。
 元妻によると、私の「学校凸撃再会」以来、娘の「改善」はめざましいものがあったそうだ。
朝、起きられるようになった。忘れ物が少なくなった。勉強がはかどるようになった。居残りをさせられることも少なくなり、なにより情緒が安定して明

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元妻を虐げてきた毒親。その二人の日常を目の当たりにし、言葉を失った。

元妻を虐げてきた毒親。その二人の日常を目の当たりにし、言葉を失った。

第二部 プロローグ

 二つの気持ちが、私の中にある。
 子供たちと暮らしたい。しかし同時に、元妻とは暮らせない。
 元妻と暮らせば、私は確実に「ダメ」になる。彼女は、自分の両親を怨みながら、反面で自分が育った家庭を再生産しようとする。
そして自分が「そういうこと」をしてしまうと、絶対に認めない。
いまこそ少し態度をやわらげているが、時間がたてば、また彼女は私を抑圧するだろう。それに耐えられるだろ

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果たせなくても、最後まで果たそうとする。約束とは、そういうものだ。

果たせなくても、最後まで果たそうとする。約束とは、そういうものだ。

■22
「パパ、七月に会いに来てよ」
 態度を豹変させた学童から私が追い返されそうになったとき、娘はこう言った。なぜ七月なのか。意味は特になかったのだろう。とっさに、何か言わなくちゃと口をついて出た言葉なのだと思う。
 七月を待たずして六月の運動会に出向いたのだが、前述の通り打ち砕かれた。ようやく見つけた突破口である学校。その道筋も塞がれた私には、もはや為すすべがない。そううなだれていた私にとって

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「パパ、いじめちゃってごめんなさい」私との絆が、娘を傷つけていた。

「パパ、いじめちゃってごめんなさい」私との絆が、娘を傷つけていた。

■20
「わたし、パパのしゃしんみて、ないてた……」
 二年三ヶ月ぶりの再会を果たしたとき、娘はぽつりともらした。
 会いたいけど、どうすれば会えるのかわからない。母親に「パパにあいたい」と言えば、嫌な顔をされる。
 そして私に「ぱぱ いじめちゃってごめんなさい」という手紙を送ってきたのだ。いちばん身近で泣いている娘を見て、娘が自分を責めている内容の手紙を送ってきたのは元妻だ。
 それでも、母親と

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両親に虐待された元妻は、女権団体の手先となり、今や片親疎外の急先鋒。だが、誰も指摘できない。

■19
「お母さん、落ち着いてください。お父さんが来たのは、娘さんが望んでいるからです。おかしなことにはならないと私たちが責任を持ちます。娘さんが頑張る姿を、どうかともに見守ってあげてください」
 教育者とは、こういう言葉を持っている人だと思っていた。だが教員といえども生活者。家には家族がいて、いまの仕事を失うわけにはいかない。元妻のようなモンスターを引き受けてしまえば、そんなささやかな幸せが瓦解

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私を怒鳴りつけた女教師は、モンスターシングルマザーのクレームに怯えていた。

私を怒鳴りつけた女教師は、モンスターシングルマザーのクレームに怯えていた。

■17
 歩き方から、大きな足音が聞こえてくる。体格のいい女性だった。紅潮した顔は、張り詰めている。学校側との関係は良好だったので、私は刑事と対峙した時よりも緊張した。
「お父さん、学校にくるのはやめてください!」開口一番、担任は私を怒鳴りつけた。
「私は先々月に、校長先生から『学校に会いに来ていい』と言ってもらいました。先月は学童の先生だって『また来てください』と言ってくれたんです。それで会いに

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「私にとっての保護者は、お母さんだけです!」ヒステリックな物言いに絶句。

「私にとっての保護者は、お母さんだけです!」ヒステリックな物言いに絶句。

■16
 翌月、学童を再訪すると、すっかり様子が変わっていた。学童の入口で、私は先生に止められた。先月対応してくれた、あの優しかった先生だ。
 そこへ娘が、私を見つけて駆け寄ってくる。その後ろからは、いっしょに遊んだ子供たちも駆け寄ってくる。
ところが先生は娘を「こっちに来ちゃダメ!」と叱りつけ、奥へ追い払ってしまった。
「どうしたんですか。先月、『学童でなら娘と会っていい』って言ってくれましたよ

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娘と再会した翌月から、元妻の猛反撃。先生は人が変わったように、私を拒絶した。

娘と再会した翌月から、元妻の猛反撃。先生は人が変わったように、私を拒絶した。

■15
 本気を出せば、わが子に会える。今回の体験が、どれだけ私を勇気づけただろう。
息子にはまだ会えずにいるが、娘には会えた。娘に会いに行っても、警察は手出しできなかった。娘と会うのは、犯罪でもなんでもないことだったのだ。
 警察や裁判所が絡むと、それらの機関が許さなければ「会ってはまずいのではないか」「おおごとに発展してしまうのではないか」「子供がよけいに傷つくのではないか」と思い込ませられる

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「この子を叩く家に、なんでこの子を連れて行くんだ」私の問いに、刑事は何も答えなかった。

「この子を叩く家に、なんでこの子を連れて行くんだ」私の問いに、刑事は何も答えなかった。

■14
「この子はね、祖父……元妻のお父さんにたたかれているんです。虐待されているんです。その子を父親から引き離して、そんな環境に連れて行く。そんな仕事をしていて、いいんですか」
「……」
 刑事たちは完全に言葉を失っている。
 モンスターにおののく無力な警察を責めるのは心が痛んだが、私が守るべきは刑事たちではない。この子だ。一歩たりとも引く気はない。私自身がモンスターになったとしてもだ。子供の心

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「パパは優しい。叩かないよ」7歳の娘は、私のために警察と戦った。

「パパは優しい。叩かないよ」7歳の娘は、私のために警察と戦った。

■13
学校としては、警察を呼ばざるをえない。気骨のある校長先生だ。学校の自治を放棄するがごとき判断は、忸怩たる思いだったに違いない。
私もこの校長の(世間の風潮を鑑みて、教員を守るための)判断ならば、尊重したい。もっとも、すっかり警察への免疫がついている私にとって、警察の登場など想定内のことだった。
 警察は、私が出向いたところで相手にしてくれない。実際にはじめの「連れ戻し」の後に、抗議文と菓子

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「パパ…いなかった…」 幼い娘の、しぼりだすような声が胸をえぐった。

「パパ…いなかった…」 幼い娘の、しぼりだすような声が胸をえぐった。

■11
 一ヶ月後、私は準備万端ととのえて、娘の通う小学校を訪れた。
 下校時刻になり、黄色い帽子をかぶった子供たちがぞろぞろと出てくる。
四月。娘は今月から二年生になっているから、帽子をかぶっていない子たちを注視しなければならない。
私は門塀越しに娘の姿を探した。見当たらない。黄色い帽子にまじって、身体の大きな二、三年生も出てきた。しかし娘だけが出てこない。
 児童の姿がまばらになってきたころ、

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