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中編小説

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短編よりもちょびっと長め。 『アクセサリーを探して。』完結 『人生の戦友の話をしようか。』連載中
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#ホテル

アクセサリーを探して⑦Fin.

アクセサリーを探して⑦Fin.

テーブルの上に並ぶ非売品のSNOWMANのストラップと、
彼が私の為に探してくれたブレスレットと、
子犬の様な目でこちらを見る真正面に座る彼を見て、

私は「ありがとうございます」としか言えなかった。

貸し切り

あれからまた月日は流れ、4月になり、私は変わらず東京に居る。

世間は相変わらずコロナで大変で、でもその今、私は生きている。

大変という言葉で片付けるのはよくないと分かりながらも、

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アクセサリーを探して④

アクセサリーを探して④

ストーカー被害の相談を先輩にして以降、
「東京の夜道は話しかけられても無視しなさい。危ないからね」と忠告されていた。

私はそれをずっと守っており、今夜もまた守って帰宅するはずだった。

カイロ

実家で年末年始を迎えた時に、妹にあるお願いをされていた。

「誕生日プレゼントは、SNOWMANの3rdシングルの初回限定版を含めた3つのCDが欲しいから、予約して郵送して」と。

まさか妹がいつの間に

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アクセサリーを探して③

アクセサリーを探して③

先輩が好きなアイドルのCDのジャケット写真を見て真っ先に思ったのは、
面接に来ていた彼の事でもサクマ君の事でも無く、交差点で出会った彼の事だった。

すぐに気づけなかったけど、分かった時には自分の中で時が止まり、
まばたきを忘れ、呼吸が一瞬止まり、思い出した時に目をぱちぱちさせた。

メール受信1件

あれから数か月が経ち、間もなく忘年会やらで盛り上がる頃になった。

あの衝撃的なCDを見てから、

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アクセサリーを探して①

アクセサリーを探して①

信号待ちして周りを見渡すと、
「あ、私、本当に東京に居るんだ」と心底実感できる。

周囲にある高い建物ばかりが私を見下ろし、イヤホンをしても車の騒音は消える事が無い。
信号待ちには大勢の人が並び、同じ方向に向かって行く人も居れば、違う人も、急いでる人も、マイペースに歩く人もいる。

似ている服装をしている人や、持ち物はそれぞれ違う為、
毎日一緒の通勤を繰り返す日々では、この人は駅行きとか、あの人は

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