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書評

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文学、芸術、歴史を中心に、書評だけでなく、そこから思い付く思想を展開します。
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#宇宙人

<書評>『転身物語』

<書評>『転身物語』

『転身物語 メタモルフォーセス Metamorphoses』プブリウス・オウディウス・ナーソ Publius Ovidius Naso 著 著者は紀元前43年に生まれているが、ラテン語の原著はおおよそ7世紀ごろに発行されたもの 田中秀央・前田敬作訳 人文書院 1966年初版発行 1978年重版

 いわゆるギリシア・ローマ神話として知られている物語を、一冊の書物としてまとめたもの。既に西ローマ帝国

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<書評>『生命 この宇宙なるもの』

<書評>『生命 この宇宙なるもの』

 『生命 この宇宙なるもの』 フランシス・クリック著 中村桂子訳 思索社 1989年 原著は、『Life itself Its Origin and Nature(生命それ自身 その起源と宇宙)』Francis Crick , Simon & Schuster, New York 1981年発行

 著者は、イギリスの生化学者で、アメリカ人の生科学者J.D.ワトソンと二人で、DNAの二重螺旋構造を

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<書評>『メソポタミアの神話』、『シュメール神話集成』

<書評>『メソポタミアの神話』、『シュメール神話集成』

『メソポタミアの神話』 矢島文夫著 ちくま学芸文庫 2020年
『シュメール神話集成』 杉勇及び尾崎亨訳 ちくま学芸文庫 2015年

 概説書である『メソポタミアの神話』の方が先に発行されたのかと思ったが、専門書に近い『シュメール神話集成』の方が先に発行されている。つまり、そもそもメソポタミアやシュメールの神話を読もう、または知りたいという人は、そうした分野に特別関心を持つ人に限定される一方、一

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<書評>『ギリシアの神話 神々の時代 英雄の時代』

<書評>『ギリシアの神話 神々の時代 英雄の時代』

『ギリシアの神話 神々の時代』、『ギリシアの神話 英雄の時代』 カール・ケレーニイ(Karl Kerenyi)著 植田兼義訳 1985年 中公文庫 ドイツ語の原著(Die Mythologie der Griechen)は1951年と1958年に(Rhein-Verlag, Zurich)で発行。

 1985年以前に、単行本で中央公論社から出版された『ギリシアの神話 神々の時代』を購入したものの

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<書評>「人類最古の哲学」

<書評>「人類最古の哲学」



「人類最古の哲学」中沢新一著 講談社選書メチエ 2002年

1.著者について著者自身が言うところの,フランス語でCahier Sauvage(カイエ・ソヴァージュ,野生の練習帳)シリーズの第1冊。このカイエ・ソヴァージュという表現は,フランスの偉大な文化人類学者レヴィ・ストロースの,20世紀を代表する構造主義・神話研究・文化人類学の人類の文化遺産となるべき名著「La Penser Sauva

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<書評>「皇帝フリードリッヒ二世の生涯」

<書評>「皇帝フリードリッヒ二世の生涯」



「皇帝フリードリッヒ二世の生涯」 塩野七生著 新潮文庫 2020年1月1日

文庫本の帯にこう書いてある。
「封建諸侯から司法権を返還させ、中央集権国家を構想した」
「絶大な権力を誇った法王と対立し、政教分離を志向した」
「イスラム世界のトップと外交交渉し、武力行使なしに聖地を奪還」
「独語、伊語、仏語、ラテン語、ギリシア語、アラビア語を自在に使った」
「学芸をこよなく愛し、ヨーロッパ初の国立

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