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よすけの短編小説まとめ

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書いた小説を投稿した順にまとめています。短いのから長いの。暗いものから明るいものまで。ほっと一息つけるように。
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#会社員

【短編小説】明日休みの散歩道

820文字/目安1分

 あぁ、疲れた。

 久しぶりだ。こんなに遅くまで会社に残って仕事をしたのは。時計の長針が一周と少しまわれば日付が変わる。終わりそうな気配は全然しなかったけど、どうにかやり切ることができた。
 そろそろ会社から残業時間を注意されそうだけど、来週に仕事を残さなかっただけ自分をえらいとしようか。

 会社を出ると、コートをすり抜けるように冷たい空気が身体を包む。それがなんとなく

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【短編小説】残業

【短編小説】残業

810文字/目安1分

 働いた働いた。
 今日も一日働いた。

 月曜日から金曜日まで、使われるように、むしろ使われにいくように働いた。
 自分の会社は別段ブラックというわけではない。残業せずに帰る人もいるし、自分より遅く残る人もいる。

 仕事は忙しい。どんどん増えて、溜まっていく。一つ終われば二つ降ってくる。

 世の中は動く。会社も動く。それに合わせて仕事が生まれていくのは当たり前。文句を

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【短編小説】二人きり

【短編小説】二人きり

642文字/目安1分

 先輩が一番に出社するから、自分もそうする。

 早起きは苦手。睡眠時間を削っているせいで、午後の業務に支障が出ている。なんなら少し寝ている。

 特に話したりはしない。自分が「おはようございます」と言って、先輩が「おはよう」って言う。これだけ。
 でも、他の人が来るまでの二十分くらい、先輩と二人きり。これがいいんだ。

 長い髪を下ろした姿が見られるのはこの時間だけ。プラ

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【短編小説】ホームタウン

【短編小説】ホームタウン

1,526文字/目安3分

 朝の通勤。電車は満員。これでもかというくらいに、車内は人で詰まっている。なんとか電車を降りる。後ろからリュックで押される。足が引っかかる。
 人を人と思わないみたいに、人が流れていく。
 コンビニでパンとコーヒーを買う。鳩が三羽、道端をウロウロする。公園にはタバコの煙が四つ上がっている。急いでいるスーツの人。横に広がる集団。スカートの短い女子高生。
 信号待ち。待てな

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