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二年目

121
2020年の詩まとめ
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#詩的散文

きらきら

きらきら

早朝、マスクをつけたまま 自転車を漕ぐ
呼吸した証が 水滴となって睫毛にうまれて 視界が溺れる
苦しくないけどすこしだけ 不安になって
ぼやけながら きらきらと揺れる景色が
ほんとうの世界なんじゃないかって、視力の良いわたしには思えたんだ
朝は誰にでも平等に 始まりを与える
リセットされて、繰り返す 365日
いつだって始まりは輝いているけれど、美しい景色を 美しいと思える真冬の朝は とくべつすき

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うそつき

うそつき

君は嘘をつくときに少し首を傾けて笑うこと、わたしに気づかれていないと思っているのだろうか、どこか苦しそうになにかを諦めたとき、自分が傷ついて終わるなら良いといつから君は正義のヒーローになってしまったの、ヒーローはもっと自分勝手に他人を救うものだと、誰かを救うことで自分も救われた気になっているのだと、オーディエンスは傷つける、言葉は一瞬で音は消えても届いた瞬間、確かに形をもって跡になること、君は知っ

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わんにゃん

ひとの心も満足にわからないのに、イヌネコに過剰な感情移入できるひとがすこしこわい

殺処分も民間保護施設も人間のエゴでしかなくて、イヌネコはわたしたちと同じ言語を発しないからわかったふりして同情する
自分は味方だから、傷つけないから、でもごはんもトイレも人間の決めたルールに従って、人間が愛せるイヌネコになってね、って笑顔で抱きあげる

イヌもネコも嫌いでないけれど、ノラネコの気ままさがすきだし、神

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性別年齢学歴肩書き恋愛対象なんか背負わずに、ただの人間でありたいだけなのにそれを許してくれない社会が嫌いだからはやく人間やめたいと願ってしまう、夜空はいつだって美しく世界を照らしてるからえらい人たちは勘違いして社会をまわした気になっているね、どうして人間は一年で一歳しか年をとったことにならないのだろう、それだけ成長が遅いってことなのかな犬猫みたいに年を重ねていつの間にか世界から消える存在で居たかっ

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どうしても

居なくなりたい日に限って夜中にふらっと外にでても野良猫はブロック塀のうえでのびてるしコンビニ前でたむろしてるおにいさんたちはいないし帰りのHRで不審者情報も聞かなかった、平和すぎた、うまくバランスとってるなぁ世界、せめてこのあとうっかりサンダル滑らせて田んぼに落ちたりしないとわたしが保っていられないよ

▶️

すきなシンガーソングライターのアルバムを買いました、発売は二年前だけれどわたしのなかでは最新の歌声、ライブに行ったことありません公式SNSもフォローしていません、それでもわたしはいつだっていちばんその人の音楽がすきだよ、アップされてる猫の写真も食事の写真も知らないし知らなくても困りません、だってシンガーソングライターだから、歌詞が音が声が、すきになるしかなかったんだ、CD離れって嘆かれるけどあのプ

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道徳

心のノートで正しい人間をインストールしたはずなのにそれにらくがきしてた人間たちがちやほやされる社会に放り投げられてしまった

おはよう

寝ること、怖くなくなったのは君が眩しい朝日と共にわたしの寝顔見ていること、知ったから、うっすらと目を開けて幻かと手を伸ばす、あたたかい
おはよう、目覚ましは心地良い君の声、窓の外で囀ずる小鳥より身に染みた
今夜もわたしは深い闇に包まれて、君を待つ
眠っているあいだに世界がわたしを置いていってしまう夜は昔のこと

目覚めること、怖くなくなったのは君が夜に安心しきっていたから、夜の一部に深く沈んだ冷た

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311

まだ冷たさが勝つ砂浜、軽々と裸足で突き進み膝まで汚れを知らない青に浸かる
何処からか降ってきた梅の花が水面に模様をつくり境界線
今年も君にあえなかった
すこし透けたそれが腐る前に底の君に届きますように
重たい脚を無理矢理引き揚げて数分間の繋がりシャワーで消して束の間の忘却

停電

暗闇に浮かぶ体育館のステージ、月光だけが僕らを照らして青白い
ステージ下の収納、パイプ椅子の隙間から取り出すのは黄ばんだ外国の絵本、開きたいのに開いたらいけない気がしてそのまま集めて重ねて重い扉を開いて退出
目覚めて教室、かわらず月光が僕らを照らしてる、黒板は新学期初日のように濃い緑でチョークの粉は見当たらず、日直の名前に覚えはなく、扉は開いたままなのに誰も廊下にでようとせずなにかに怯える
埃っぽ

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数年前に山を切り開いて大規模団地を建設しました、広場でこどもたちが賑わってる、食糧不足で人里おりてきた猪鹿熊は大根とうもろこし美味しいところだけ頂きます、収穫時期は人間よりも正確で羨ましくなるよ、たまたま知恵をもった僕らの誰かが食べられたなら食べ返せ、あそこの息子は目黒のレストランで炙られたらしいよ、賄賂の金で頂きます、復讐を受け入れよう、来年は一族でとうもろこし畑食べ尽くしてニュースで騒ぐタレン

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エンドロール

どうしようもうすぐそこまでエンドロールが待機してる、出演者クレジットの先頭は勿論君、知ってるメイクさんも知らない美術さんも僕らの歴史の一部です、蟻の行列はつい目で追ってしまいます、自分と同じ苗字を発見してすこし嬉しくなったりしてる、終わりは始まりだって神様は言いました、その始まりに君が隣にいてくれる保証はなくて終わりを逆再生したくなるのはいけないことですか、始まらなくていい、監督でとまるエンドロー

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届く

おいていかれたくないから離れないで、
僕の我儘だってわかっているのに頷いてくれた
安心してしまった僕はきっと約束を破ってしまうだろう、その泣き顔さえも独り占めしたいって思ってしまうくらい離したくないんだ

if

君は死んだ、幸せになった、幸せにしてくれた、それでもやっぱり昨日までの君がすきです、今日からの僕もそんなに変わらないよってすこし困った顔で笑いかけてくるけれど、捨てたんでしょ、昨日までの自分、要らなくなったから捨てた、幸せになったはずなのに、もう一度こちら側に戻ってきてほしいと願ってしまう、そんなの我儘でしかなくて君を不幸にするってわかっているよ、僕も一度死んでみようか、そして「はじめまして」から

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