停電

暗闇に浮かぶ体育館のステージ、月光だけが僕らを照らして青白い
ステージ下の収納、パイプ椅子の隙間から取り出すのは黄ばんだ外国の絵本、開きたいのに開いたらいけない気がしてそのまま集めて重ねて重い扉を開いて退出
目覚めて教室、かわらず月光が僕らを照らしてる、黒板は新学期初日のように濃い緑でチョークの粉は見当たらず、日直の名前に覚えはなく、扉は開いたままなのに誰も廊下にでようとせずなにかに怯える
埃っぽい教室に整列した机椅子は乱れず僕らを待っている、座ったら、一生そこに留まってしまいそうで机に積もった埃を撫でる
瞬間、眩しい光が上から降ってくる、蛍光灯ではなく電球が纏まってぶらさがる天井を腕で影をつくりながら見上げれば、ひとつ、冷たいままの電球、とりかえなくちゃ、唯一見知った顔が当たり前のようにそれをまわして
死んだ電球を抱えた君は僕が知らない時代の君で、すこし幼いその顔で、いつものすこし困ったような笑顔で僕を包んだ

作品をまとめて本にしたいです。よろしくお願いします。