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映画「アップグレード」から考えるカラダの未来

「おおぉ、無名ながら傑作!!でも未来のカラダはどこまで進化するんだろう・・・?」

この作品を観終わった時の純粋な感想です。映画「アップグレード」は2019年公開のSFサスペンスアクション映画。低予算で作られた映画ながらも、張り巡らした伏線を回収する緻密な脚本、リアルな近未来を表現した映像美、アイデア満載のカメラワークなど見所満載の一本です。

この映画は純粋にSF映画として楽しめるだけでなく、未来に起こり得るテクノロジーと人間の関係についても示唆を与えてくれます。

先日、「トランセンデンス」でAIについて考えました。

今回の「アップグレード」もAIが暴走するという点は「トランセンデンス」と少し似ていますが、今作のテーマは「カラダ」です。人間のカラダがテクノロジーでどこまでアップグレードできるのか。「トランセンデンス」よりも、現実味を帯びたストーリーから、未来の我々の生活を少し覗き見ることができます。

映画「アップグレード」とは

舞台は近未来のアメリカ。自動運転車が走る世の中でクラシックカーの整備技師というテクノロジーを信じていない男、グレイが主人公。グレイは妻と車で移動中、自動運転車のOSが突然誤作動。車はナビとは違う道を走り、猛スピードで事故を起こす。命からがら車から脱出したグレイは、謎の一団に襲われ脊髄損傷の重傷を負ってしまう。そして同時に最愛の妻も失う。全身まひになった彼は絶望のどん底に落とされる。そんな彼を救ったのは、クラッシックカーの修理依頼をしていたクライアントの一人、エロンというIT企業の若き社長。彼は「ステム」と名付けた新開発のAIチップを首に埋め込むことで、再び動けるカラダに戻れるとグレイに提案する。手術の結果、損傷した神経系の代わりにステムが首から下を制御することに成功。グレイは再び体の自由を取り戻し、謎の一団に復讐を誓う。しかし、「ステム」が暴走し・・・。


この映画はSF要素満載のサスペンス映画です。カラダ乗っ取られ系の映画では「ヴェノム」が有名ですね。日本では漫画原作の「寄生獣」も人気です。自分の中に別人格が生まれ、ぶつかりながら、時に協力して成長していくところは今作も同じ。ただ、これらの作品と違う点はその相棒が「ステム」というAIであるということ。無生物のAIはどこか不気味で暴走しかねない怖さがあります。

果たしてグレイはステムと協力しながら復讐を達成できるのか。是非ご覧いただければと思います。

カラダをアップグレードする技術

この映画は全身不随の人間がテクノロジーで再び動けるカラダを取り戻す物語。そして、元に戻る以上に超人的な強ささえ手に入れてしまいます。いわゆる「強化人間」です。

AIは周囲の環境を即座に分析、さらに過去の格闘技術のデータから学習し、プロの殺し屋を凌駕するほどの強さを身に付けます。全身まひで動けない人間が一瞬にしてスーパーヒーローになってしまうグレイは困惑しながらも復讐を目指して行動に出ます。

こうしたテクノロジーを使って身体的にできなかったことができるようになる、というのは実は身近にあります。電動の車いすは移動を叶えていますし、重い荷物を運べるようになるパワーアシスト「マッスルスーツ」は重労働をサポートします。ウェアラブル〇〇という言葉はどんどん増えていますし、スウェーデンでは手にマイクロチップを埋め込み、乗車券や入退室管理などに利用されています。テクノロジーで人間が拡張する未来はこの先も加速します。その先には「人間を超える」ということが容易に起こりえます。

2012年オリンピックのロンドン大会。陸上・短距離に南アフリカのピストリウスが出場して、世界中の注目を集めました。この選手義足ながらパラリンピックではなくオリンピックの方に参加し話題となりました。2016年のリオ大会では、右脚ひざ下義足でありながら走り幅跳びに8m40の大記録を持つドイツのレームが出場を目指しましたが、競技において義足のバネがどれほど影響しているか証明が不十分だとして参加はかないませんでした。しかし、この先、障害者がテクノロジーを利用することで健常者を超えることは容易に起こり得るのです。 

そうなった時に「どこまでが人間のカラダ」と言えるのか、曖昧になってきます。人間は力を求めます。アップグレードする先に、この映画が描く怖さも未来には潜んでいるといえます。

まとめ

「アップグレード」は映画として非常によくできた作品です。有名な俳優も登場しないため、先入観なく楽しめる一本です。

低予算でできた映画にはアイデアが詰まっています。この映画も進化しすぎていないリアリティのある未来描写や、AI感を感じさせるユニークなカメラワーク、アクションシーンなどアイデアがぎっしり詰まっているので、見ごたえたっぷりです。

この作品を見ると「AI」や「テクノロジー」に対する無限の可能性を感じるとともに、何とも言えない怖さを同時に感じることができます。一方でAI技術はあくまで計算機であり、人間のように頭を使って考えるといった人工知能としてのAIはこの先も生まれない、という説もあります。この真意はまだ分かりませんが、技術を使うのは人間です。テクノロジーで人が豊かになれるかどうかは、使う人間次第ということです。

人の生活の質をアップグレードするようにテクノロジーは活用して行きたいものです。盲目的にロボットに振り回されるのではなく、考えて選択できる人でありたいと思いました。(既にスマホが人を振り回す存在になりつつある気がしますが…)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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