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#哲学

【政治学講座2】政治学とは【体系的知識】

【政治学講座2】政治学とは【体系的知識】

政治学講座(たぶん全十回くらい)参考文献 中村菊男 著,政治学 改訂第3版,2010

第二回 政治学とは↓動画(簡略)版↓

政治学は国家と称する無形観念の性質および作用を考定する一種の形而上学にして、その範囲最も広漠なるものなり。

故に、学海広しといえども、その進歩の緩慢迂回なる此の学の右に出るもの有らず。学派多しと言えどもその支離滅裂する、またこの学の如きものあらざるなり
(カール・ラート

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保守主義から見る現代の正義

保守主義から見る現代の正義

保守主義の見地において、無知のヴェールには欠陥を認めることが出来る。
無知のヴェールとはジョン・ロールズが「正義論」にて唱えた”誰もが自分を含めた個々人の背景を全く無視した場合に、どのような選択が最良と考えられるか”という思考実験である。

この実験の結論として、自分のステータス、社会的地位や財産・人種・年齢・性別・職業他を知らない人間が自らの幸福を願う場合には、結果的に社会を構成する全成員に対し

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飯塚幸三氏と「名誉」による社会の正常化機構

飯塚幸三氏と「名誉」による社会の正常化機構

エドマンド・バークは「名誉」を「公共精神に適う行いに対する報酬」、とくに公職者に対する金銭的私益と切り離された報酬であるとした。

この場合の「名誉」の源泉は国民にあり、公共精神に適う行い、即ち国民の意見に寄り添い国民の幸福を増進する行いをする者には名誉が与えられ、反対に国民の意見に反発し国民の幸福を減退する行いをする者には不名誉が与えられるという具合である。

これによって、名誉を得、不名誉を避

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【電子書籍】『保守主義の超克』・『大和心とは何か』がkindleに並びました。

【電子書籍】『保守主義の超克』・『大和心とは何か』がkindleに並びました。

○保守主義の超克

保守主義はフランス革命に対するアンチテーゼに端を発し、冷戦以降、共産主義の脅威に対抗する思想的主柱として西側諸国の主要の政党の多くがこれを奉じてきた。日本でも自民党をはじめとした多くの政治家がこれを奉じ、保守を標榜する論者も数多く存在している。彼らは保守主義こそが日本を守ると言うが、しかし、保守主義は本当に日本を守るものなのだろうか?

本書はエドマンド・バークについての諸研究

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不当な差別を「差別」、正当な差別を「区別」と呼んではダメなのか?

不当な差別を「差別」、正当な差別を「区別」と呼んではダメなのか?

SNS上で『差別の本来的な意味は差をつけて区別する事であり、正当な差別も存在する以上、不当な扱いを伴わない差別(区別)を「区別」と呼び、「差別」の語を不当な物とするのはおかしい』という意見を何度か見かけました。

しかし、現代日本では自然言語的に差別(区別)する際に不当な扱いが行われる場合を特に「差別」と言い習わし、不当な差別以外の分別を「区別」と呼んで、その差別が不当か不当でないものかを呼び分け

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正しさ・善という価値の相対性について

正しさ・善という価値の相対性について

正も善も本質的に一個人の物たりえない。

何故なら人間は常に自分を取り巻く社会の影響を受けて生き、自分の価値観を構築し続けているからである。

つまり、「自分が正しいと思っている事」を自分が何故正しいと思っているかといえば、その「正しさ」は、それまでの人生で触れた森羅万象、自らが所属した、あるいは触れた事のある共同体から影響を受け、自らも考えた結果として得心したものだからである。これは善も同じであ

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「パスカルの賭け」はカルトを推奨する?

「パスカルの賭け」はカルトを推奨する?

「パスカルの賭け」とは、神の存在非存在と信仰についての論考である。

信仰をしても神が存在しない場合は無意味。

しかし、もし神が存在すれば、不信心では地獄に落ちるため、信仰しておいた方が得であるという”功利的”な側面から信仰の重要性を説いたものである。

後世のゲーム理論にも似ているが、現代に生きる読者であれば、この命題を正とした場合にパスカルが想定していない問題が生じてしまう事にお気づきであろ

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