日本ワインと吟醸酒へのソムリエ的視点

宮城県仙台市『和酒バル 二喬/NIKYO』のソムリエ店主が、普段の仕事からちょっと視点…

日本ワインと吟醸酒へのソムリエ的視点

宮城県仙台市『和酒バル 二喬/NIKYO』のソムリエ店主が、普段の仕事からちょっと視点を変えて、めくりめく日々の日本含むワインと日本酒のマーケットについて感じた事を綴っていきます。

記事一覧

「dancyu MARCH2024」が寄せ鍋感が凄過ぎる

プレジデント社が発行するこの雑誌は既知の御仁も多いでしょうかと思いますけども毎年3月号が日本酒特集と銘打って書店に並びます。SAKEをメインにして酒類業界に身を置く…

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ピノ・ノワール2021/テールドシエル「飲む価値ある唯一無二性」

非常にユニークなワイナリーさんだと思っています。 社歴を言えば、創業として2015年から長野県小諸市糠地地区にてワイン用ブドウ栽培開始、2018年から委託醸造によるファ…

爆発してしまった「きき酒選手権の誤採点」には日本という国家の構造的問題が在る

大荒れの様相を呈している「第42回全国きき酒選手権大会結果における訂正とお詫び」の件。 先ずフローとしては、大手新聞メディアの毎日新聞さんが「独自」として11月2日12…

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雑誌の表紙に踊る「日本ワイン」の文字のブランドパワーは如何ほどなのか?

画像の左側から、「メトロミニッツ」は2023年時点で創刊21年目を迎えた東京とローカルをつなぐフリーマガジンでテーマは「豊かな暮らしのヒントはローカルの中にある」との…

伯楽星 宮城県産蔵の華 おりがらみ生酒R4BY「わびさびに通じる日本美」

2002年の誕生以来、今や宮城県を代表する銘柄の一つとなりました。蔵元さんとしても「究極の食中酒」とのテーマを掲げて、どのような料理にも黒子となって引き立てる味わい…

楯野川 上流 純米大吟醸 山形県産美山錦R3BY「美しさ、そして強さ」

山形県酒田市の楯の川酒造株式会社さんと言えば、2016年SAKE業界史上初めて精米歩合1%に挑んだ酒蔵としてマーケットに大きなインパクトを与えました(加えてリキュールメー…

きき酒選手権2022~県予選と全国大会を経てのコツと練習法~

1.きき酒選手権大会とその参加へのハードル日本酒業界には業界団体の日本酒造組合中央会が主催する全国きき酒選手権大会というイベントがあります。詳しくは下記の公式リ…

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水端アンバサダーのソムリエが綴る、水端by風の森の2021ヴィンテージ達

「水端」-mizuhana-は奈良県の油長酒造さんが造り出すSAKEブランドです。2021年にブランドがローンチされて、プロトタイプ的な零号が限定出荷ののち、今年2022年から正式に…

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雨後の月 限定 雄町リミテッドR2BY「至高のアロマと官能がここに」

野球のイチロー選手が凄かった点の一つに、長年高いパフォーマンスを発揮していた事があると思います。ただ高いパフォーマンスなだけではなくて凄く高いパフォーマンスを。…

秋田男鹿 #土と風

2021年に設立された稲とアガベ醸造所。そこに連なるように併設されたフィンレストランがコチラです。 土と風 要事前予約制、お任せの料理コース(ジャンルは所謂イノベー…

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霧筑波 ピュア茨城 純米大吟醸 しずく 本生原酒R3BY「ニュークラシック」

令和二酒造年度102回南部杜氏自醸清酒鑑評会(吟醸酒の部)にて主席(1位)を獲得したのが醸造元の合資会社浦里酒造店さんで、製造責任者は6代目蔵元である浦里知可良(ち…

怒涛のチャレンジにSAKEの新時代が遂に幕を明けたと感じざるを得ません

個人的にワインも飲みます、ビールも飲みます、レモンサワーも飲みます、本格焼酎も飲みます、クラフトジンも飲みます、カクテルも飲みます、そしてSAKEも。 数ある飲み物…

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早瀬浦 浦底 純米 本生滓酒R3BY「冬の海への畏怖と好意」

モノとして、トータル的にスマートだなぁ、美しいなぁと思うものが稀にあります。SAKEにおいては、銘柄名(ブランドネーミング)、フォント、ラベルデザイン、サブタイトル…

ワインはサーヴする理由がありがちだけど、日本酒はオンリストされる理由があるだけがち

ワイナリーは世界中に300,000ほどあると聞いた事があります。 そのワイナリーが各々10~30くらいのアイテムをリリースしているのが感覚的なアベレージです。 なので多く…

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富久長 純米 八反草2020二年熟成「その爽やかさ唯一無二」

「ふくちょう」の「はったんそう」です。漢字、日本語は難しいです。先ず「富久長」は広島県の今田酒造本店さんのSAKE銘柄で、代表取締役にして製造責任者である杜氏を今田…

ネコのタマゴfield blend A2020/ねこみみワイン「猫のような奔放さ」

どの醸造酒、ビールもSAKEも、そしてもちろんワインもボトル差があったりヴィンテージで違ったりでいわゆる一期一会であります。そういうのは当然なんですけども、その中で…

「dancyu MARCH2024」が寄せ鍋感が凄過ぎる

「dancyu MARCH2024」が寄せ鍋感が凄過ぎる

プレジデント社が発行するこの雑誌は既知の御仁も多いでしょうかと思いますけども毎年3月号が日本酒特集と銘打って書店に並びます。SAKEをメインにして酒類業界に身を置く者としては、毎年欠かさずチェックしまして、時に現在を切り取ったり、時に今後に活かしたり、とアレコレ得るものがある次第です。かれこれ二十年ほどは購読を重ねています(北仙台にはおおよそ十年分ほどが置いてありますのでいつでも読めますよ)。

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ピノ・ノワール2021/テールドシエル「飲む価値ある唯一無二性」

ピノ・ノワール2021/テールドシエル「飲む価値ある唯一無二性」

非常にユニークなワイナリーさんだと思っています。
社歴を言えば、創業として2015年から長野県小諸市糠地地区にてワイン用ブドウ栽培開始、2018年から委託醸造によるファーストヴィンテージのワインをリリース、そして2020年から自社の醸造所を設立して自社醸造スタート、と2000年代からポツポツと新設され始めて、2010年頃から爆発的な増加傾向にある日本のワイナリー状況から鑑みると極々一般的なフローを

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爆発してしまった「きき酒選手権の誤採点」には日本という国家の構造的問題が在る

爆発してしまった「きき酒選手権の誤採点」には日本という国家の構造的問題が在る

大荒れの様相を呈している「第42回全国きき酒選手権大会結果における訂正とお詫び」の件。
先ずフローとしては、大手新聞メディアの毎日新聞さんが「独自」として11月2日12時頃に初報をリリースしたようで、その後にYahoo!ニュースでは「いま読まれています」としてトップの一覧にも取り上げられるほどの閲覧数に14時頃なった模様(冒頭の画像の見出し)。

そこから一日さかのぼって11月1日には振り回されて

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雑誌の表紙に踊る「日本ワイン」の文字のブランドパワーは如何ほどなのか?

雑誌の表紙に踊る「日本ワイン」の文字のブランドパワーは如何ほどなのか?

画像の左側から、「メトロミニッツ」は2023年時点で創刊21年目を迎えた東京とローカルをつなぐフリーマガジンでテーマは「豊かな暮らしのヒントはローカルの中にある」との事で毎月東京メトロの各駅にて配布されています。

画像真ん中「ゲーテ」はメンズライフスタイルマガジンという事で「熱狂人生 仕事が楽しければ人生も愉しい」がテーマのようです。

そして「ワイン王国」はワイン業界雑誌としては著名なツールで

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伯楽星 宮城県産蔵の華 おりがらみ生酒R4BY「わびさびに通じる日本美」

伯楽星 宮城県産蔵の華 おりがらみ生酒R4BY「わびさびに通じる日本美」

2002年の誕生以来、今や宮城県を代表する銘柄の一つとなりました。蔵元さんとしても「究極の食中酒」とのテーマを掲げて、どのような料理にも黒子となって引き立てる味わいの方向性のもと、レギュラークラスの高品質化を目指して毎年銘柄の進化を歩んできています。近年では2020年に1億円以上もの設備投資にて自社に導入された扁平精米機によって、見事にその効能と銘柄のベクトルをリンクさせて大きなシナジーを生み出し

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楯野川 上流 純米大吟醸 山形県産美山錦R3BY「美しさ、そして強さ」

楯野川 上流 純米大吟醸 山形県産美山錦R3BY「美しさ、そして強さ」

山形県酒田市の楯の川酒造株式会社さんと言えば、2016年SAKE業界史上初めて精米歩合1%に挑んだ酒蔵としてマーケットに大きなインパクトを与えました(加えてリキュールメーカーとして「子宝」ブランドでもそれより以前から大きな成功を収めていました)。また毎年のように商品ラインナップのアップデートが行なわれ、時勢を捉えたアイテム群を用意しています。原料米の大半は地元の20軒を超える契約農家さん達から仕入

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きき酒選手権2022~県予選と全国大会を経てのコツと練習法~

きき酒選手権2022~県予選と全国大会を経てのコツと練習法~

1.きき酒選手権大会とその参加へのハードル日本酒業界には業界団体の日本酒造組合中央会が主催する全国きき酒選手権大会というイベントがあります。詳しくは下記の公式リンク先からどうぞご確認くださいませ。

簡単にいうと個々人のテイスティング能力を競うもので、業界人として酒造&酒販店関係者を除く人達が参加できます。基本的に各都道府県が予選を行なって代表の2名を決めて全国大会へ、というフローです(不参加の県

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水端アンバサダーのソムリエが綴る、水端by風の森の2021ヴィンテージ達

水端アンバサダーのソムリエが綴る、水端by風の森の2021ヴィンテージ達

「水端」-mizuhana-は奈良県の油長酒造さんが造り出すSAKEブランドです。2021年にブランドがローンチされて、プロトタイプ的な零号が限定出荷ののち、今年2022年から正式に販売されました。

先ず、正しい情報として、詳細を知りたい御仁はオフィシャルサイトを御覧ください。

御存知の左党さんも多いかと思いますけども、油長酒造さんのメインのSAKEブランドは「風の森」です。「風の森」はモダン

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雨後の月 限定 雄町リミテッドR2BY「至高のアロマと官能がここに」

雨後の月 限定 雄町リミテッドR2BY「至高のアロマと官能がここに」

野球のイチロー選手が凄かった点の一つに、長年高いパフォーマンスを発揮していた事があると思います。ただ高いパフォーマンスなだけではなくて凄く高いパフォーマンスを。80~90点を取り続けるのも素晴らしい事ですけども、やっぱり90~100点を取り続けるのは人間社会で相対評価がある以上、一握りの方々しか出来ないパフォーマンスであると歴史が証明しています。
このSAKEを醸造する広島県相原酒造さんの杜氏の堀

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秋田男鹿 #土と風

秋田男鹿 #土と風

2021年に設立された稲とアガベ醸造所。そこに連なるように併設されたフィンレストランがコチラです。

土と風

要事前予約制、お任せの料理コース(ジャンルは所謂イノベーティブ)8000円のみ、希望でオーダーできるアルコールペアリングとノンアルコールペアリングが5000円、単品のドリンクも数種あり、そして2人のシェフが月替わりで担当する、というのがオフィシャルアナウンスだと思っています。

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霧筑波 ピュア茨城 純米大吟醸 しずく 本生原酒R3BY「ニュークラシック」

霧筑波 ピュア茨城 純米大吟醸 しずく 本生原酒R3BY「ニュークラシック」

令和二酒造年度102回南部杜氏自醸清酒鑑評会(吟醸酒の部)にて主席(1位)を獲得したのが醸造元の合資会社浦里酒造店さんで、製造責任者は6代目蔵元である浦里知可良(ちから)氏。御年30歳です。元々のメイン銘柄であった「霧筑波」と異なる銘柄「浦里」を2020年に立ち上げて、より一層に純地元産酒にこだわりを持って醸造を行なっています。
このSAKEは、元々「霧筑波」の銘柄名で冬季に数量限定で出荷されるア

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怒涛のチャレンジにSAKEの新時代が遂に幕を明けたと感じざるを得ません

怒涛のチャレンジにSAKEの新時代が遂に幕を明けたと感じざるを得ません

個人的にワインも飲みます、ビールも飲みます、レモンサワーも飲みます、本格焼酎も飲みます、クラフトジンも飲みます、カクテルも飲みます、そしてSAKEも。

数ある飲み物、そしてアルコール飲料の中でSAKEを選ぶ際の大きな魅力の一つとして旨味と甘味それらのバランス感があります。あと造り手さんの想いが感じやすく、日本人として親しみが湧きやすいというのも。
さてそんな魅力から派生して、アルコール度数が比較

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早瀬浦 浦底 純米 本生滓酒R3BY「冬の海への畏怖と好意」

早瀬浦 浦底 純米 本生滓酒R3BY「冬の海への畏怖と好意」

モノとして、トータル的にスマートだなぁ、美しいなぁと思うものが稀にあります。SAKEにおいては、銘柄名(ブランドネーミング)、フォント、ラベルデザイン、サブタイトル(肩貼り副題であるのが多々)、スペック、ボトルデザイン、そして品質などなど。皆様もありませんか???〇〇男山という銘柄名で古風なのにスゴく可愛いらしい動物のラベルデザインで純米吟醸なんだけども吟醸香もなくシャープでキレ味が鋭い、というモ

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ワインはサーヴする理由がありがちだけど、日本酒はオンリストされる理由があるだけがち

ワインはサーヴする理由がありがちだけど、日本酒はオンリストされる理由があるだけがち

ワイナリーは世界中に300,000ほどあると聞いた事があります。

そのワイナリーが各々10~30くらいのアイテムをリリースしているのが感覚的なアベレージです。

なので多く見積もると9,000,000ほどのアイテムが、毎年毎年リリースされています。

それに加えてワインというアイテムは、単なる嗜好品の枠を超え、時を重ねる事で価値を増す側面があって、まるで投資対象のように扱われる事もあります。

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富久長 純米 八反草2020二年熟成「その爽やかさ唯一無二」

富久長 純米 八反草2020二年熟成「その爽やかさ唯一無二」

「ふくちょう」の「はったんそう」です。漢字、日本語は難しいです。先ず「富久長」は広島県の今田酒造本店さんのSAKE銘柄で、代表取締役にして製造責任者である杜氏を今田美穂さんがお務めになられています。今田さんは個人的にも二十年近く親しくさせていただいている、とても敬愛している御仁でして、2020年イギリスBBCが選ぶ世界に影響を与えた「100人の女性」に日本人で唯一選ばれた、日本が世界に誇る職人、ク

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ネコのタマゴfield blend A2020/ねこみみワイン「猫のような奔放さ」

ネコのタマゴfield blend A2020/ねこみみワイン「猫のような奔放さ」

どの醸造酒、ビールもSAKEも、そしてもちろんワインもボトル差があったりヴィンテージで違ったりでいわゆる一期一会であります。そういうのは当然なんですけども、その中でも一期一会of一期一会な存在だと思い立ちましたので微力ながら記録に残したいと思いまして書き綴ります。

この時間が流れるスピード感が益々上がっているような社会において、農作物全般は太古よりさほど変わらぬ時間が流れていて、その為ワインの原

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