日本ワインと吟醸酒へのソムリエ的視点

宮城県仙台市『和酒バル 二喬/NIKYO』のソムリエ店主が、普段の仕事からちょっと視点を変えて、めくりめく日々の日本含むワインと日本酒のマーケットについて感じた事を綴っていきます。

日本ワインと吟醸酒へのソムリエ的視点

宮城県仙台市『和酒バル 二喬/NIKYO』のソムリエ店主が、普段の仕事からちょっと視点を変えて、めくりめく日々の日本含むワインと日本酒のマーケットについて感じた事を綴っていきます。

    最近の記事

    伯楽星 宮城県産蔵の華 おりがらみ生酒R4BY「わびさびに通じる日本美」

    2002年の誕生以来、今や宮城県を代表する銘柄の一つとなりました。蔵元さんとしても「究極の食中酒」とのテーマを掲げて、どのような料理にも黒子となって引き立てる味わいの方向性のもと、レギュラークラスの高品質化を目指して毎年銘柄の進化を歩んできています。近年では2020年に1億円以上もの設備投資にて自社に導入された扁平精米機によって、見事にその効能と銘柄のベクトルをリンクさせて大きなシナジーを生み出しました。 さて、このアイテムのレギュラーヴァージョン(滓がらみではない)はR3B

      • 楯野川 上流 純米大吟醸 山形県産美山錦R3BY「美しさ、そして強さ」

        山形県酒田市の楯の川酒造株式会社さんと言えば、2016年SAKE業界史上初めて精米歩合1%に挑んだ酒蔵としてマーケットに大きなインパクトを与えました(加えてリキュールメーカーとして「子宝」ブランドでもそれより以前から大きな成功を収めていました)。また毎年のように商品ラインナップのアップデートが行なわれ、時勢を捉えたアイテム群を用意しています。原料米の大半は地元の20軒を超える契約農家さん達から仕入れていて、栽培も特別仕様になっているものも多数だとか。更には単に栽培契約を結んで

        • きき酒選手権2022~県予選と全国大会を経てのコツと練習法~

          1.きき酒選手権大会とその参加へのハードル日本酒業界には業界団体の日本酒造組合中央会が主催する全国きき酒選手権大会というイベントがあります。詳しくは下記の公式リンク先からどうぞご確認くださいませ。 簡単にいうと個々人のテイスティング能力を競うもので、業界人として酒造&酒販店関係者を除く人達が参加できます。基本的に各都道府県が予選を行なって代表の2名を決めて全国大会へ、というフローです(不参加の県もあるようで実際今回は32都道府県参加でした)。 さてさて、お読みくださっている

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          • 水端アンバサダーのソムリエが綴る、水端by風の森の2021ヴィンテージ達

            「水端」-mizuhana-は奈良県の油長酒造さんが造り出すSAKEブランドです。2021年にブランドがローンチされて、プロトタイプ的な零号が限定出荷ののち、今年2022年から正式に販売されました。 先ず、正しい情報として、詳細を知りたい御仁はオフィシャルサイトを御覧ください。 御存知の左党さんも多いかと思いますけども、油長酒造さんのメインのSAKEブランドは「風の森」です。「風の森」はモダンを極めるかのようなコンセプトで革新的なアプローチにて製造に取り組んでいらっしゃっ

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            雨後の月 限定 雄町リミテッドR2BY「至高のアロマと官能がここに」

            野球のイチロー選手が凄かった点の一つに、長年高いパフォーマンスを発揮していた事があると思います。ただ高いパフォーマンスなだけではなくて凄く高いパフォーマンスを。80~90点を取り続けるのも素晴らしい事ですけども、やっぱり90~100点を取り続けるのは人間社会で相対評価がある以上、一握りの方々しか出来ないパフォーマンスであると歴史が証明しています。 このSAKEを醸造する広島県相原酒造さんの杜氏の堀本敦志さんは紛れもなく名杜氏だと考えます。数十年前から天才と称されて、常に素晴ら

            秋田男鹿 #土と風

            2021年に設立された稲とアガベ醸造所。そこに連なるように併設されたフィンレストランがコチラです。 土と風 要事前予約制、お任せの料理コース(ジャンルは所謂イノベーティブ)8000円のみ、希望でオーダーできるアルコールペアリングとノンアルコールペアリングが5000円、単品のドリンクも数種あり、そして2人のシェフが月替わりで担当する、というのがオフィシャルアナウンスだと思っています。

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            霧筑波 ピュア茨城 純米大吟醸 しずく 本生原酒R3BY「ニュークラシック」

            令和二酒造年度102回南部杜氏自醸清酒鑑評会(吟醸酒の部)にて主席(1位)を獲得したのが醸造元の合資会社浦里酒造店さんで、製造責任者は6代目蔵元である浦里知可良(ちから)氏。御年30歳です。元々のメイン銘柄であった「霧筑波」と異なる銘柄「浦里」を2020年に立ち上げて、より一層に純地元産酒にこだわりを持って醸造を行なっています。 このSAKEは、元々「霧筑波」の銘柄名で冬季に数量限定で出荷されるアイテムらしくシリアルNo.があってR3BYは83本の極少量生産であるのが分かりま

            怒涛のチャレンジにSAKEの新時代が遂に幕を明けたと感じざるを得ません

            個人的にワインも飲みます、ビールも飲みます、レモンサワーも飲みます、本格焼酎も飲みます、クラフトジンも飲みます、カクテルも飲みます、そしてSAKEも。 数ある飲み物、そしてアルコール飲料の中でSAKEを選ぶ際の大きな魅力の一つとして旨味と甘味それらのバランス感があります。あと造り手さんの想いが感じやすく、日本人として親しみが湧きやすいというのも。 さてそんな魅力から派生して、アルコール度数が比較的高いのにも関わらずスイスイ飲める、という魅力も感じます。カクテルはショートスタ

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            早瀬浦 浦底 純米 本生滓酒R3BY「冬の海への畏怖と好意」

            モノとして、トータル的にスマートだなぁ、美しいなぁと思うものが稀にあります。SAKEにおいては、銘柄名(ブランドネーミング)、フォント、ラベルデザイン、サブタイトル(肩貼り副題であるのが多々)、スペック、ボトルデザイン、そして品質などなど。皆様もありませんか???〇〇男山という銘柄名で古風なのにスゴく可愛いらしい動物のラベルデザインで純米吟醸なんだけども吟醸香もなくシャープでキレ味が鋭い、というモヤモヤ(笑)。これは酒蔵さんサイドで、銘柄を単に銘柄名と捉えるかブランドネーミン

            ワインはサーヴする理由がありがちだけど、日本酒はオンリストされる理由があるだけがち

            ワイナリーは世界中に300,000ほどあると聞いた事があります。 そのワイナリーが各々10~30くらいのアイテムをリリースしているのが感覚的なアベレージです。 なので多く見積もると9,000,000ほどのアイテムが、毎年毎年リリースされています。 それに加えてワインというアイテムは、単なる嗜好品の枠を超え、時を重ねる事で価値を増す側面があって、まるで投資対象のように扱われる事もあります。 そのような環境もあるので相当数のアイテムが年をまたいで流通していて、想像すると1

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            富久長 純米 八反草2020二年熟成「その爽やかさ唯一無二」

            「ふくちょう」の「はったんそう」です。漢字、日本語は難しいです。先ず「富久長」は広島県の今田酒造本店さんのSAKE銘柄で、代表取締役にして製造責任者である杜氏を今田美穂さんがお務めになられています。今田さんは個人的にも二十年近く親しくさせていただいている、とても敬愛している御仁でして、2020年イギリスBBCが選ぶ世界に影響を与えた「100人の女性」に日本人で唯一選ばれた、日本が世界に誇る職人、クラフトパーソンでいらっしゃいます。今年2022年にはForbes誌が多分野におい

            ネコのタマゴfield blend A2020/ねこみみワイン「猫のような奔放さ」

            どの醸造酒、ビールもSAKEも、そしてもちろんワインもボトル差があったりヴィンテージで違ったりでいわゆる一期一会であります。そういうのは当然なんですけども、その中でも一期一会of一期一会な存在だと思い立ちましたので微力ながら記録に残したいと思いまして書き綴ります。 この時間が流れるスピード感が益々上がっているような社会において、農作物全般は太古よりさほど変わらぬ時間が流れていて、その為ワインの原料となるブドウ栽培が収穫できるようになるのは、苗を畑に植えてから概ね三年ほど掛か

            ソムリエが繋ぐ物語-2022年1月SAKEラインナップのセレクト編-

            お酒のメニューリストにはソムリエの意図がふんだんに込められています。それを今回5つほど御紹介いたします。 北仙台『和酒バル 二喬/NIKYO』のSAKEラインナップ(1グラスにてサーヴ)の大前提として ①宮城県の新澤醸造店さんと長野県の小布施ワイナリーさんのアイテムを必ずオンリストする ②ワイングラスを用いるのを基本とする ③Barスタイルのお酒がメインの飲食店である これらを挙げておきます。 1.原料が米だけで造るシュワシュワな赤いお酒 1月は言わずもがな新年初

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            カベルネ・ソーヴィニヨン&フラン2018/蔵王ウッディファーム「この年だけの奇跡の出逢い」

            2018年、山形県上山市は暑い夏を過ごしたそうで、そこから秋雨、そして台風と苦労を重ねたようです。それらを経て10月の晴天である程度は持ち直しながらも、高級ワイン用ブドウの女王とも称されるカベルネ・ソーヴィニヨンの貴賓ある色調は期待したほどには至らなかったのは想像に難くありません。収穫時のpHの高さや収穫日の遅さから、なるべく収穫日を遅くする事での大きな巻き返しを図った、若き30代の栽培醸造家の営為を強く感じます。 さてこのような場合、醸造方法をどのようにするか、実に様々な

            リアスワイン ソーヴィニヨン・ブラン2020/神田葡萄園「天地人が詰まった海のワイン」

            激動の2020年。世界中の方々がコロナ禍であっても、東北のリアス式海岸をのぞむ岩手県陸前高田市のブドウの樹々は粛々と新梢を伸ばして、果房を生らしました。良年とも呼べる温かさも受けた果房は醸造家自らによる丁寧な栽培の際のケアも相まって良質に育ち、見据えた品質から逆算された醸造的適熟の際に収穫されました。 セミアロマティック品種とも呼ばれる比較的強めの特徴香を持った品種ですから、いわゆる王道のそれであります柑橘とハーブは感じます。その中でも、まず柑橘はレモンではなく柚子、それも

            伯楽星 特別純米 山田錦R2BY「すぐに手が届く上質」

            2002年の誕生以来、今や宮城県を代表する銘柄の一つとなりました。蔵元さんとしても「究極の食中酒」とのテーマを掲げて、どのような料理にも黒子となって引き立てる味わいの方向性のもと、レギュラークラスの高品質化を目指して毎年銘柄の進化を歩んできています。直近では2020年に1億円以上もの設備投資にて自社に導入された扁平精米機によって、見事にその効能と銘柄のベクトルをリンクさせて大きなシナジーを生み出しました。ただし、スポーツカーから急にハイスペックなF1カーを与えられても完璧には