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紅の言の葉

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四角に収める言葉遊戯
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百の一瞥より一の熱視線

百の一瞥より一の熱視線

見つけてくれたら御の字
一銭の得にも成りません
情も光もありゃしません
読んで得来て幸は余所へ
数多が御用をお待ちです

足並みを揃える柔はなし
浮世に馴染む意気もなし
無虜と配慮の差は大きく
頓着の有無も極端がゆえ
針に触れたなら再来あれ

百の一瞥より一の熱視線
抜き飛ばし斜の百ならば
一字一句追う一の眼差し
その人格も罪も恥も枝葉
愚かな末節など百も承知

散り際にこそ美ありき

散り際にこそ美ありき

執着に囚われた男の醜態
出処進退を見誤る愚かさ
屍蝋のようなその振舞い
動揺しては裾を引っ張り
狼狽しては手を離さない
卑劣だ嬌態だ手練手管だ
その言葉のすべて受容し
自らの狡猾と冷酷を認め
汚れ穢れ廃れを確と見た
どれだけ憎まれてもいい
一生涯を以て恨むがいい
契りや縁など陽炎も同然
未来永劫続くもの等無い
此れぞ心を欺いた顛末か
我が目の曇りにすら眩暈
去り際に姿を現した本性
本当は気づいてい

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白露の告白

白露の告白

君の寝室から見える沙羅双樹になる
そんな白昼夢で僕は夢か現か微睡む
君が瞳を閉じた後の真夜中に祈るよ
どうか甘い夢を唇には淡い微笑みを
白が夜を越えるまで僕は此処にいる
朝になれば白露になって消え失せる
何の心配もいらない安心して欲しい
君の白肌は僕が守る傷一つ許さない
僕は毎晩花になり君の寝息を見守る
君の庭の聖なる白き花弁は僕なんだ
だからどうか僕を忘れないで欲しい
君が望む白夜にも必ず連れて

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純白の見返り

純白の見返り

純白のドレスは完膚なきまでに美しく
其の有り余る美しさこそが作る距離感
そこに落とされた唯一点の染みこそが
人々の視線を誘い世間を振り向かせる
清きものの澄みを世は美しいとするが
其清きは遠くから眺めるからこその美
その中に棲み続けるには難く息苦しい
潔癖な部屋は騒めきを齎し安は得難い
純白の衣服は心配を齎し気を遠ざける
穢れ染みを避けるからこその清廉潔白
その純潔を守るために捧げる人生如何
染み

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リコリタ

リコリタ

世の為に献げる血も涙もありゃしません
他が為に此の命を献上するなど罰当たり
人の役に立ちたいなど微塵も思いません
他人を幸せにしたいなどお為倒しも上等
他が為より我が為に生きる此の人生です
其の様にして世間が幸福を得る結果顛末
其れを信じられぬのなら其の道を不乱に
我が身を削り歯を擦り美麗な骨粉を墓に

賊塞の祝祭

賊塞の祝祭

煙草は唯の害悪と云うが
悪を悪としか映せぬなら
毒もただ罪と罰の生産物
唯一つの眼鏡しか持たぬ
それ以外は全て悪と評す
その眼鏡が剥奪する微酔
嗜みの粋も貫禄も哀歓も
君の清さには讃歌を贈る

セヴンスターを握り締め
夜の歓楽街で酒瓶を割る
其れは宛ら往年の名男優
特別な夜には葉巻を咥え
攻めを崩さず勝ちを抜き
短かい望みをモノにした
古い男が重ねた生の歴史
時代の趨勢を生で見た瞳
君が世に生を受

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屹立礼賛

屹立礼賛

君を勃たせる琴を探せ
その線を成す物を弄れ
自分を勃たせた世界で
身を震わせ血を巡らせ
快感に溺れて痙攣せよ
自分に萎えている内は
世界も小さく萎んだ侭

わたしには出来ませぬ
わたしには解りませぬ
なんて恥ずべきこと哉
其は奥ゆかしきご尤も
是ぞ清楚で可憐な乙女
君の美しき衣よ侭あれ
その下の柔肌に幸あれ

君に奉る

君に奉る

白が混ざった顎髭
手に刻まれた年輪
横幅を擁した肩幅
抱擁するような目
琥珀がかった瞳孔
気持ちを語る背中
わたしを慈愛する
欠片たちの存在や
わたしに奉納する
その集合体こそが
自愛を支える支柱
その柱が立つお社
その社を参拝して
この身を奉り捧ぐ
それが即ち私の業

Sorry, we are closed

Sorry, we are closed

女であり雌である
不可抗力完全降伏
女の肉体の感度の
余すことない享受
この柔い感受性は
その中で守られて
まるごと導かれし
温く湿った小部屋
ここにいれば安心
誰も入ってこない
外の世界の現実は
夢幻の外のはなし

ラットの視点盲点

ラットの視点盲点

檻の中のラットは延々と
回し車の中を走り続ける
そうやって走っていれば
餌が貰えるから我慢する
錠も鍵も存在していない
最初からそうだった檻だ
扉の施錠を確認するなど
今のラットには想像の外
ましてや逃げるも論の外

バイバイ時間売買

バイバイ時間売買

時間売買の切符は完売
この人生の目的地まで
必ずわたしが嚮導する
乗客だった時の過去は
根こそぎ燃料に変えた
君の電車には乗らない
進む路線は自分で創る
行先の心配など御無用

嘘と本音の真実

嘘と本音の真実

嘘だから複雑にする
嘘だから美麗にする
嘘だから言いやすい
本音こそがシンプル
本音こそが穢らしい
本音こそが言い難い

影と光

影と光

人気が欲しいのなら無視を
裕福が欲しいのなら貧困を
人脈が欲しいのなら孤独を
突き抜けたいのなら批判を
勝ちを得たいのなら負けを
飛び抜けたいのなら嫉妬を
影を受け入れる覚悟なしに
光を手に入れることは不可

自由の国の不自由

自由の国の不自由

本心では違うことを思っていても
みんなと同じことを言っておけば
誰も攻撃してこない花咲く世間話
こんな自由な国に生まれておいて
自らの手で自らの言動を奪う搾取
世間を見張り自分をも見張る監視
正しさスゴさを見せたいのは保身
みんなを幸せにしたいなんて傲慢
他人を幸せにするよりまずは自分