記事一覧
"Fog" by Carl Sandburg 意訳か誤訳
霧
カール・サンドバーグ
霧が 来る
ちいさな猫足を 忍ばせ
座して 見下ろす
港と街を 静かに
腰を据えた
のち
前進
(日本語訳詩 : 牛田悠貴)
"Sudden Light" by Dante Gabriel Rossetti 意訳か誤訳
※スマホの場合は横向き画面推奨(行の関係で)
突然の光
ダンテ・ケイブリエル・ロセッティ
ぼくは以前 ここに来たことがある それなのに
一体いつ どうやって来たのか 言うことが出来ない…
知っているんだ 扉の向こうには草原があって
つよく 甘い 香りがすること そしてあの
ため息の音 岸辺では光が灯っていることも 知っているのに…
あなたは以前 ぼくのものだった——
そ
“Crossing the Bar”(1889) by Alfred Lord Tennyson 意訳か誤訳
砂州を越えて
アルフレッド・テニソン
黄昏 宵の明星
わたしを呼ぶ 澄んだ声よ!
どうか海へと 漕ぎ出でる時
砂州に嘆きのないことを…
それでいて 果てなき海原より寄せくる姿
再び還る頃には まるで 眠りながらの作法のように
音も 泡沫もたてない波の
満ち満ちた潮汐(しお)であるように…
薄明 暮の鯨音
そしてまた 此の夕闇にも!
わたしが舟へと 乗り入れる時
"The Star" by Charles Bukowski 意訳か誤訳
『スター』
チャールズ・ブコウスキー
俺は酔ってた そして奴等は
俺を運転席から引っぱりだして
手錠を掛け
そのまま横倒した
車道で
雨の降る車道で…
奴等 並んで突っ立つ
黄色い雨合羽の
サツどもだ 3
台もの車両から降りてきて…
服に水がずぶずぶ浸み
込んできやがった
俺は見上げた
雨越しに
月を
思えば
俺は
六十二歳
俺の存在は
俺自身によって
守られたのだ それ
“Sweet Dancer”(1938) by William Butler Yeats 意訳か誤訳
舞姫
ウィリアム・バトラー・イェイツ
まいひめ あちら
ちらちら 木の葉
庭場のうえの 其のまたうえの
つるり刈られた 葉上(はうえ)で舞うよ
にがい青春 さようなら
観客さまにも またさらば
それよか あの娘(こ)の くろい雲にか
舞妓サンヤア、甘ァイ舞妓!
見知らぬ 男ら 母屋(おも)より いでて
まいひめ あちらへどうぞと 言えども
言ってはならぬ 言ってはならぬ
狂っ
"Broken Heart" (1969) by Alexander Spence 意訳か誤訳
壊れた心 アレクサンダー・スペンス
壊れてしまった心が いとおしいんだ
大地の上で壊れてしまった心
ぼくの肋骨に刺さりっぱなしになった刃物が
みつかったらいいな
木に吊るされて やさしく吹かれている
いっぽんの縄
みんな知らんぷりだろうね
それから かみさま
その右手
御手のおわりを
受け取ることにするよ
みずうみのなか
舌も動かない 渇いたカウボーイのように
飛
『百年の孤独』 メモ的感想
すこし時間ができたので、久しぶりにガルシア=マルケスの『百年の孤独』を再読。
『百年の孤独』は、やっぱり相変わらず面白くて、再読とはいうものの、とても新鮮な気持ちで読めました。
むしろ、初めて読んだ大学生の時は(そもそもの読書体験の少なさもあって)ストーリーよりも、「語りそのもの」に呑まれてしまっていたので、今回改めて読んだ時に、「あれ?こんなエピソードもあったのか!!」というような発見もあっ
2018年時点、日本初紹介。20世紀ラテンアメリカの作家五人
今回は、野々山真輝帆[編]、彩流社の『ラテンアメリカ傑作短篇集〈続〉 中南米スペイン語圏の語り』(2018)に、収められた作品の中から、それまでに邦訳が無かった作家5人の作品について紹介したいと思います。
『ノクターン』(リカルド・グィラルデス、1915)
韻文で展開されるストーリー。
あくまでも、「詩のような小説」であって、「小説のような詩」ではないと思いました。明確にストーリーを語ってい
『太鼓に踊る』 アルトゥーロ・ウスラル=ピエトリ (本の感想と見せかけた、ベネズエラの郷土芸能のはなし)
アルトゥーロ・ウスラル=ピエトリの短篇小説『太鼓に踊る』を読んだので、今日はそれについて。
まだまだ邦訳が少ないベネズエラの作家。ちょっと作品発表年すら判然としてないので、情報求む。
(1928年説と1949年説が…笑)
そういえば、実はベネズエラの正式な国名は《ベネズエラ・ボリバル共和国》。でも長くてめんどくさいから、ここでは「ベネズエラ」で通させて下さい。
〈シモン・ボリバル〉を無条件に英
『その女』(1932) フアン・ボッシュ
今回は読書感想というよりは、ちょっとメモとか備忘録みたいな感じになっちゃいますが…。
ドミニカ共和国の作家、フアン・ボッシュの短篇『その女』を読みました。(「ドミニカ国」ではなく「ドミニカ共和国」の作家。)
マルクス主義に傾倒しながら、同国で一時期大統領も務め、キューバのフィデル・カストロとも親交があったというボッシュが、23歳の時に書いた作品です。
初出版はキューバの雑誌でなのだとか。
作
『三度目の諦め』(1947) ガブリエル・ガルシア=マルケス
コロンビアの作家、ガブリエル・ガルシア=マルケスの処女短篇『三度目の諦め』を読みました。
とても読みやすいし、めちゃくちゃ面白い!!というのが、僕の率直な感想。
ガルシア=マルケス本人は、あまりこの時期の自作短篇を気に入ってはいないそうですが…。
ただ、それもそのはず。なんと言っても、『三度目の諦め』は、彼がまだ大学生の時に書いた小説なのですから…!
僕からしたら、天才すぎる…。という感想し