マガジンのカバー画像

宛先のない手紙 vol.2

389
ほぼわたしの考えを垂れ流すエッセイのようなもの。その2。
運営しているクリエイター

2018年5月の記事一覧

わたしたちは融け合えない

わたしたちは融け合えない

群像劇が好きだ。群像劇とまでいかなくとも、主人公以外の登場人物たちが「生きている」ものが好きだ。

「生きている」と感じられるかどうかは、完全なわたしの主観だけれど、今パッと思いつくのはこのあたり。(完全なる好みです)

・ハイキュー!!
・鋼の錬金術師
・彼氏彼女の事情
・CRAZY FOR YOU
・金色の野辺に唄う
・レミゼラブル
・半分、青い
・大河ドラマ(すべてではないけれど)

映像も

もっとみる
欠けている部分が自分を作る

欠けている部分が自分を作る

NHKの朝ドラ、「半分、青い」が好きだ。主人公(と実家家族)のキャラクターがなかなかに濃いこともあって、シリアスな展開中もさほど湿っぽくならないところが、朝に見るドラマとしてもいいなと思っている。

主人公の鈴女(すずめ)は、幼い頃の病気がきっかけで、左耳が聞こえない。高校生の頃の就活で、彼女はそのことを常にオープンにしていた。

そのせいかどうかは定かではないけれど、事実、鈴女は13社受けた会社

もっとみる
大樹にはなれないけれど

大樹にはなれないけれど

心のぐちゃぐちゃが体に及んで、倒れていた。子どもが持ち帰ってきた学校の便りも読めていない。何なら封書は封も開けられていない。

浮き沈みが激しい自分とは小学校高学年頃からの付き合いだから、ある意味で「慣れ」てはいる。それでも、つらいものはつらいし、避けられるものなら避けたい。慣れはただの「ああ、ヤバイな」という気づきにしかならなくて、避ける技術は一向に上がっていない気がする。

目覚めていると本当

もっとみる
ロバの耳と叫ぶ穴の場所

ロバの耳と叫ぶ穴の場所

くだらないことでも、真面目なことでも、悩んでいることでも、嬉しいことでも、人には「今、これを言いたい!」ということが、たぶん日々多かれ少なかれあるものだと思っている。

それは、時に「この人に伝えたい」であることもあれば、「とにかく言葉にしたい」というときもある。そうした止むに止まれず叫びたい言葉を、少年は穴の中に叫んだ。「王様の耳はロバの耳ー!」と。

現代に生きるわたしたちにとって、時にこの穴

もっとみる
手放しの「ありがとう」は危ない

手放しの「ありがとう」は危ない

ありがたいは、「有難い」と書く。「ある」ことは当たり前ではない。「ありがたいなあ」と思う感情を持つことは、慢心しないためにも必要で、大切なことだと思っている。

そして、初心を思い出し、冷静な気持ちを保つためにも、「ありがたい」は有効な感情だと思う。たとえば、わたしの場合、息子ふたりを授かって、彼らが元気に育ってくれていることは、「ありがたい」ことだ。当たり前に思ってしまいがちだけれど、決して当た

もっとみる
お金は目の前ではなく先にある

お金は目の前ではなく先にある

お金が好きだ。でも、稼ぐのは好きじゃなかった。

物欲はそれなりにある。だから、お金は必要で、「生きていけるだけあればいい」とまでは達観していない。ノストラダムスの予言の話を友人としながら、「恐怖の大王じゃなくて札束降ってきたらいいのにね」と言っていた小学生だった。結局、札束はもちろん恐怖の大王も降ってはこなかったけれど。

いつだって、やりたいことやなりたい職業がお金と結びつけられなかった。「こ

もっとみる
誰かの“自己責任”を問わない

誰かの“自己責任”を問わない

自分で選んできた。結婚も、出産も、仕事も。

仕事を始めたきっかけこそ家計的にやむを得ないというものではあったけれども、それでも働くことを決めたのはわたし自身。誰かに何かを強制されたわけではない。

自己責任という言葉が、少し苦手だ。「自分で選んだんじゃん」と他人が誰かに放つ言葉が嫌いだ。

「決めたのはわたしだ」という意識は、本人が持ってさえいればいいと思っている。決めたのはわたしだけれど、それ

もっとみる
“引き受け癖”という輪郭

“引き受け癖”という輪郭

「人が嫌がることもやったで賞」

小学校卒業前にもらった賞の名前だ。クラス全員が、クラスメートひとりひとりの強みや長所を考えて、その中からひとつを表彰するという企画だった。

学校祭りでやったお化け屋敷。誰もやる人がいなくて「やるよ」と言った口裂け女。当日は目一杯口紅を引かれて爆笑されたっけ。(失敬な)

卒業前の最後の参観、学年発表会でやった劇。こちらも、ナレーションだけでよかったのに、誰も手を

もっとみる
ギスギスがキラキラに変わった

ギスギスがキラキラに変わった

変わったのは、場所ではない。わたしがそれだけ変われたのだろう。

1年と数ヶ月前、わたしは三足のわらじを履いていた。

その頃、ライターの世界に飛び込んでみたばかりだったわたしは、元々やっていた仕出し弁当と夕刊配達とをまだ掛け持ちしていたのだ。

当時は次男がまだ入園前。今考えてみても、一体どうやって過ごしていたのか自分でもわからない。若かったのかな。ギリギリ二十代だったし。

今日の取材先は、そ

もっとみる
疳の虫をつまみ封じる

疳の虫をつまみ封じる

子どもの頃から、目と目の間のあたりに、少しだけ青く血管が透き通って見える。

「疳の虫が強い子によくあるんだわ」

祖母は言った。“疳の虫が強い”とは、気性が荒いといったらいいのだろうか。夜泣きやかんしゃくがひどい子どものことを指すようだ。

“疳の虫”と血管との因果関係はわからないけれど、確かにわたしは疳の虫が強い子どもだったらしい。虫封じをしてもらいに神社に行ったという話も聞いている。

長男

もっとみる
「正誤」の中にある「好き嫌い」

「正誤」の中にある「好き嫌い」

久しぶりに、高橋優の「素晴らしき日常」を聴いていた。

始めの社会風刺から最後の人間賛歌に畳み掛けていく歌詞とメロディーが、発売当時から好きだ。久しぶりに耳にしても、やっぱり「いい」と感じた。

性善説派と性悪説派とがいる。わたしは前者寄りの人間だ。

どんなに「うわ、ないな」と思っても、「いやいや、何か事情があったのでは」と「よんどころない事情」を探してしまう。

基本的に「いい人だろう」から入

もっとみる
孤独を飼い慣らす

孤独を飼い慣らす

「“ひとり”を好み、“独り”を怖がる若者たち」

高3の秋、AO入試の一次試験用に書いた小論文のテーマだ。携帯が当たり前のものになり、そこで起きるコミュニケーションの変化について、携帯を持っていない高校生として書いたものだった。

高3当時、携帯を持っていない人はかなりの少数派だった。そのことが関係しているのかどうかはさておき、二次試験の面接で教授たちに「小論文がおもしろかった」と言ってもらえたこ

もっとみる
手持ちのカードでまずは戦え

手持ちのカードでまずは戦え

「そんなこといっても、現実難しいもんね」「いや、無理無理」「別にそこまでしてしたくないし」

わたしはネガティブ寄りな気質だけれど、この手のネガティブに触れると、体がぞわっとする。

「無理」「好きじゃない」「したいわけじゃない」「できるわけがない」……こうした発言は、繰り返すうちに悪い方に意識を傾かせてしまう。そして、吐露したところで、本人の気持ちが楽になるわけでもない。

「つらい」「しんどい

もっとみる
小さな棘の痛みを自覚する

小さな棘の痛みを自覚する

「がんばってね、母親の務めだよ」

こんな些細なひとことが、チクっと心を刺した。

嫌味な言い方ではなかった。単純に励ましてくれたのだということはわかっている。けれども、数ヶ月前に言われたこの言葉は、まだわたしの心に残り、チクチクと小さな痛みを与え続けている。

きっと、「親の務め」だと言われていれば、トゲは残らなかっただろう。「母親の」という言葉は、じわじわと心に染み込ませられていく洗脳に近いも

もっとみる