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音楽のこと|Thank you for the music

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「わたしの人生を豊かにしてくれてありがとう」の意を込めて、さまざまな音楽にインスパイアされ創作した短編小説やエッセイをお届けします。
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#thank_you_for_the_music について

「わたしの人生を豊かにしてくれてありがとう」の意を込めて、さまざまな音楽にインスパイアされ創作した短編小説やエッセイをお届けします。
#thank_you_for_the_music のタグからお探しくださいね。

(ちなみに“thank_you_for_the_music”は大好きなバンド、bonobosの曲からいただいた名前です)

詩「スペル」

詩「スペル」

言葉は心を越えないものであってほしいと
願ってはいるけれど
ときどきうっかり
越えてしまう

越えた言葉で
傷つけた記憶が
わたしの傷となって
とどまり続ける

あの子に背負わせたもの
たったひとつの後悔が
今、わたしを生かす

全力のわがままと
ひまわりのような顔で
放つ言葉は
「愛している」

頬を落ちるしずくの温もり
ゆるむeyesと漏れる声

小さなてのひらのステージで
ねぇ、いっそ
踊り

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エッセイ「燃え殻2」

エッセイ「燃え殻2」

まだ明るさの残る帰り道。桜島を右手に、会社に通勤していたあの頃と同じ道を走っていた。

すこぶる疲れていた。
新しく習う仕事を覚えるのに頭をフル回転した一日だった。終わってからも何も考えられず、音楽もかけないままハンドルを握っていた。

はあー。疲れは、思考をネガティブに寄せる。今日とは関係ないはずの不安まで大きくさせた。

気持ちを切り替えたくて、radikoを流すことにした。「お気に入り」に登

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jacob collierを聴いたら目の奥がゆるんで開かれる感覚があった。そしたら、小説の構成の、新しくてしっくりくるアイデアが一つ浮かんだ。

【ライブ感想文】「春、の歌を頼りに」折坂悠太ツアー2024あいず《4/17福岡DRUM LOGOS公演》

【ライブ感想文】「春、の歌を頼りに」折坂悠太ツアー2024あいず《4/17福岡DRUM LOGOS公演》

*おことわり
当日の記憶だけを元に書いています。曲目・曲順はその通りでなく、ライブレポ風ではありますが、あくまで個人の感想です。どうぞおおらかに見守っていただけますように。

開場、中へ入る。
フロアに流れるのは、ソウルやジャズが中心のジャンルレスな音楽。開演 30分前で、すでに結構埋まっている。まだ少し見える床の、白と黒の格子模様。白の部分が夕陽色に染まる。

ほの暗いステージの上には、サーキュ

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「あなたと話したい」〜昨年後半の、とても幸せな日々について。

「あなたと話したい」〜昨年後半の、とても幸せな日々について。

1.出会ってしまった

音楽家である彼と出会ったのは、去年の夏のこと。彼は音楽にあかるい人たちや、ほんものの言葉や表現を好いているような人たちから一目置かれた存在で、彼の歌や彼じしんを慕う人々が、この世にはたくさんいる。

私は数年まえから、彼の音楽を聴きはじめた。通勤の車の中や、お風呂の中で。怖くなったり心穏やかになったりしながら、ほとんど毎日を彼の音楽とともに過ごした。そうしてとうとう、彼に会

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【ことばの栞】2023/12/20
「歌い手とお客さんっていう感覚よりは、何か一つの課題に取り組んでいる同志のような、そんなふうな関係でいられたらうれしいなあと思っています」
(歌手・折坂悠太さん)

声、とは / 森山直太朗 20thアニバーサリーツアー 素晴らしい世界

声、とは / 森山直太朗 20thアニバーサリーツアー 素晴らしい世界

季節はすっかり秋深くなったこの頃ですが、今年の夏に私が体験した“きらめき時間”の中から、綴ってみようと思います。お盆の入り、8月13日に行われた森山直太朗さんのコンサート霧島市民会館公演を観に行ったことについて。

(※この先、演奏曲目などに触れています)

私の暮らす町からほど近い、霧島市民会館。国宝・霧島神宮を擁する、鹿児島県霧島市の市街地にあります。おそらくもう何十年も前に建てられた1フロア

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曽我部恵一エッセイ本「いい匂いのする方へ」感想

曽我部恵一エッセイ本「いい匂いのする方へ」感想

2日前、サニーデイ・サービスのライブに行って曽我部恵一さんのエッセイ本を買いました。そして本日、一気に読みました。感想を書いてみます。

最後まで読み終わり、もう一度パラパラと本をめくった。
あれ、あれ!? 
冒頭にある写真たちが、読む前に見たときと全然違って見える。

文章を読む前、曽我部さんのお家(たぶんだけど)が写っている!とわくわくして、そのおしゃれさにドキドキした。
電球色の灯りの下みた

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エッセイのような詩「ギター」

エッセイのような詩「ギター」

ギターの音が、トゥルトク、ポコポコという水の泡に聴こえて、すっかり魚になった気分だ。透き通った浅い海の底にいる魚か、部屋の隅にある水槽の中の魚か。泡が、水をめぐらす。

ギターはほんものの木でつくられているはずなのに、水の泡は、人工的な音をしている。
海ならばダイバーが近くにいるような、水槽ならば酸素を排出する装置があるような。

私は水の中で、上からの屈折したあかるさを感じている。
上がりたい、

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「いのちはめぐる」Jacob Collier/DJESSE.4 〜ジェシー4部作の完結に寄せて〜

「いのちはめぐる」Jacob Collier/DJESSE.4 〜ジェシー4部作の完結に寄せて〜

重なり合う声で幕を開け、重なり合う声で幕を閉じたジェシー4部作。

はじめてその音に触れたときの踊り出したくなるような興奮と感動は、一度も止むことなく、とうとう終わりを迎えた。
そして、迎えたはずの終わりが始まりだったと分かるとき、すべてのいのちは循環し、永遠に続くのだという真理にたどり着く。

わたしの中で、わたしの外で、「全体」を形づくるそれぞれの「一部」が、互いにめぐり、めぐらせながら生きて

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エッセイ「燃え殻」

エッセイ「燃え殻」

仕事からの帰り道、まあまあ長い運転時間に、スマホでradikoを開いた。くたくたの体でも聴けるようなテンションのものがいいなあ。検索しながら目に入ったのは、「燃え殻」さんの番組。なんとなく聴いてみようという気持ちになって、再生ボタンを押した。

ラジオでは、おそらく燃え殻さんが選んでいるのだろう音楽が流れ、彼自身によるエッセイの朗読があった。昔、テレビ局のバックヤードで働いていたこと、その頃は組織

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JACOB COLLIER / Little Blue リリースと新作アルバム完成に寄せて

JACOB COLLIER / Little Blue リリースと新作アルバム完成に寄せて

数日前から、コロナにかかりました。
はじめ、刺激の少なくなった日々に癒やされ、しだいに、生まれてくるネガティブがよどみとなって体に溜まるようになり。どうにも良くならない体調に、少しばかりあせります。

頭は痛いし、鼻がつまって息はできない。
なにより刺すような喉の痛みで、毎度の水分補給もゆううつです。

小さな画面を見ると気分が悪くなってしまうので、なるべくスマホを見ないようにしているのですが、音

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ジェシー1

ジェシー1

なにかがはじまりそうな、
もうすでにはじまっているような、
必要最低限の音でつくる静けさが
進みゆくなにかを待っている

張り詰めた空気と安らぎが同時にたゆたう中、
重なり合う声
心拍のごときリズム

からの、
爆発!で
エネルギーが一気に溢れだす

これは日本の古い民謡にあるメロディーではないのか
らっぱと笛によるファンファーレ、
うねりが連れていく先に差しこむのは


そこでついに歌!
言葉

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