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【収集用】逆噴射相撲教習所マガジン

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逆噴射プラクティスのぶつかり稽古を集めます。テッポウ禁止。
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#逆噴射小説大賞

「最後の魔法!恋の千秋楽」

「最後の魔法!恋の千秋楽」

『うっちゃり~~!! またも奇跡の逆転で14連勝!』

魔女から願いが叶うまわしを受け取った私は連戦連勝! ついに千秋楽で「あの人」の胸を借りることになったの。でも、このまわしは願いを叶える度に短くなる呪いが……。たいへん!土俵でまわしが外れちゃう!?

『明日の取り組みでは全勝同士で横綱との決戦を……』

でも、ここまで来たからには”誓い”にかけてあの人に全てをぶつけてやるんだから!

物語は先

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一人相撲 精霊の呪い

一人相撲 精霊の呪い

一人の力士が前に出る。これから一人相撲がはじまるようだ。
精霊と相撲をし、精霊に勝たせ、豊作や繁栄を約束させる、そういう儀式らしい。

「迫力あるね、あの人」

「元関取って書いてあったよ」

最初は興味がなかったものの、力士の迫力におされて、今では早くはじまらないかと期待している。
行司の長い語りが終わり、力士が構えた。

「のこった!のこった、のこった!」

押しつ押されつの一進一退の攻防、回

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2100年の千秋楽

 相撲は神々に奉納する神事であった。その伝統は千年以上の時を経ても脈々と受け継がれた。今年も両国国技館は満員御礼である。会場はタニマチ・クラブ会員で寿司詰めだった。

 行司が先導し、きらびやかな化粧廻しに身を包んだ力士たちが土俵に上がった。そしてエレクトロニック・ダンス・ミュージック風のイントロが流れ始める。今年の千秋楽を締めるのは、幕内42の『恋のTIRI☆CHOUZU』だ。

  告白の痛み

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心・技・体・直結ニューロンブースト

幕内力士稲妻は付き人二人の間で目を閉じ腰を下ろしていた。4勝6敗で迎える11日目、新入幕としては勝ち越しの可能性が残るだけ上出来だが、彼の若い精神は打ちのめされていた。

勝ち星はほぼ同期の力士からで、中堅以上には子ども相撲めいてあしらわれた。心技体全てが未熟。唯一武器と呼べる物は、付き人とのニューロン直結による未来予測だけだった。

「任せろ。今日の芝山ともやったことがある」

左手の兄弟子、幕

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アポカリキシ・クエイク

アポカリキシ・クエイク

「あれは、ただの地震ではない。『釈迦ヶ嶽雲右衛門』がロサンゼルスに現れたのだ」

谷松と名乗った老人は、そう、ぼくに告げた。

「………一応は知ってますけど、あれですか? あの大惨事が、その、江戸時代の力士によって?」
ぼくは彼の正気を疑った。そんなニュースは当然、どこにも見当たらない。

「そうだ。彼らは『見えない』。普通の人にはな。大地のエネルギーを感じ取れ……」
「帰って下さい! うちは仏教

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菜園相撲

 ほどよく耕された土俵で巨体がぶつかりあった。桜島関の手にはタキイ種苗の耐病総太り青首ダイコンの種、金町関の手にはサカタの種の紅小カブの種。両者とも定石通りだがスタイルは真逆だ。

 桜島関は重量を活かし、金町関を突き出さんと両手突っ張り。種を三点撒きにする。黒マルチの穴に適確に三粒ずつ、そして遅効性IB肥料の基肥。重く、そして精密な攻めだ。

 一方、金町関は素早さを活かして桜島関をかわし、条蒔

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大武芸者時代

私、縁ノ宮 術流はやや緊張しつつもその館の玄関をくぐった。館に足を踏み入れた瞬間、ひりひりと刺すような視線を感じる。幾人もの強者の気配がした。

「縁ノ宮さま、ですね?こちらで受付を、あなた様が最後の到着者でございます」
いつのまに現れたか、館の執事が声をかける。手元の名簿に視線をやれば、そこには知られた数々の武芸者達の名前がずらりと並んでいた。

これから始まるは、日本各地に古くから存在する【本

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横綱、最強の証明。

横綱、最強の証明。

横綱猫闘将は考える。

協会には何も話していない。
泣いて止めた親方と女将さんも振り切ってきた。
もちろん、事が露見すれば廃業間違いナシだろう。

――それでも、俺は横綱の強さを例え土俵の外であっても証明したかった。
舞台は満員の東京ドーム。申し分ナシだ。

先月引退したばかりの元大関、玉ノ肌が総合格闘技に挑戦した。
結果はイタリアン柔術の前に手も足も出ず敗北。
世間は口を揃えて

「倒されて関節

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俺と横綱の無限土俵 ~世界一短いタイムリープ~

俺と横綱の無限土俵 ~世界一短いタイムリープ~

初顔合わせは上手投げにて瞬殺。
十五戦にして叩き込みで初金星。

撒いた塩が煌めく。満員御礼の熱気が肌に伝わる。

現人神の存在感が世界を塗り潰す。

発揮揚揚!

やられた!思った時には既に廻しを引かれ、よろめくことすら出来ない。数秒の攻防、天地逆転。

これじゃダメだ。これじゃ――

幻の決まり手、襷反りに敗れたのは三十ニ番目。

撒いた塩が煌めく。満員御礼の熱気が肌に伝わる。

直前の対戦を

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シンクロニシティ相撲

 虎伏山と熊野龍の因果は根源たる集合的無意識下より来るものである。両者に頻発する偶然は、一般的な因果律を超越した非因果的連関の原理による偶然、即ちシンクロニシティであると解釈される。

 故に、心理学者はユングの超心理学を再考せざるを得なくなった。特にパウリ=ユング書簡は慎重に顧みられなければならない。近年の研究ではレックス・スタンフォードによるPMIR理論、及び適合行動理論が共時性理論を補完しう

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「国技館ロイヤルランブル」

「国技館ロイヤルランブル」

《NHK中継終了の18時までに土俵上の総重量が400kgを下回ったら国技館を爆破する》という脅迫電話を間に受けた日本相撲協会が急遽ロイヤルランブル制を導入。常時三名以上がぶつかる熱戦に観客は総立ちとなった!

取り組みが決着し力士が一人になれば爆破。されどテレビ中継を止めても爆破。苦肉の策だがこれが大いに受けた。

入れ替わり立ち替わり力士たちが土俵に乱入していく。番付差や同部屋対決の禁止もな

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転校生、徹

いいベルトしてんじゃん。見せろよ。
部長の水嶋にはこのふざけた転校生が何もかも気に食わなかった。
何が入部したい、だ。何が相撲部だ。
ここは俺たちのたまり場。真面目に稽古するやつなんざ、必要ない。
だから張り手一発、それで分からせてやる。
そのはずだった。

構えて踏み出した瞬間、転校生のベルトが僅かに光る。
踏み込みで爆ぜる土俵。
ただの張り手で、水嶋の巨体は砲丸の如く壁を抉った。
「こっちで、

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決死アイドル究極相撲

決死アイドル究極相撲

「お前らも何か考えろよォ!もういっそデスゲームか!全員ここで死ぬか!そしたらニュースは俺達の話題で持ちきりだ!視聴率は全国ネットで実質100%!あのクソ野郎も満足だ!」

 私達にカメラを向け喚く男はどこぞの番組制作下請けのD。高視聴率SNSバズ間違いなしの単発番組を極限低予算かつ特急で上げろとアホな局員から無茶を言われ、とにかく売れる演者をと、若手アイドル5人を召集した。
 しかし128連勤中の

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機動強襲装甲力士マテバ

機動強襲装甲力士マテバ

その日もマテバは飲んだくれていた。
適当な店で酒を飲む。相撲中継が始まれば変えさせる。
それがマテバの毎日だった。
その日までは。
「よぉ、探したぜ」
「エッ!?オヤカタ大佐!?」

夜の街を二人は歩く。
「まったく。元装甲化力士兵(アーマードリキシ)ともあろうもんが情けねえ」
「元装甲化力士兵だからですよ。敗戦で部隊は解散。お決まりの戦争アレルギーで戦場帰りは大相撲にも戻れねえ。安い恩給で酒

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