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美術館のすすめ

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美術館の展示レビューです
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#イベントレポ

実はずっと前から始まっていたのかもしれない、旅のこと(DIC川村記念美術館にて)

実はずっと前から始まっていたのかもしれない、旅のこと(DIC川村記念美術館にて)

「行きたいなぁ、でも遠いしなぁ」
「行きたいなぁ、でも仕事があるから」

人は、つい行動しない言い訳を作ってしまう。そして、今日も昨日と変わらぬ1日を過ごしてしまう。もし、あのとき、あの日、行動していたら。そんな瞬間は誰にでもあるものなのかもしれない。

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繁忙期真っ只中の前職での昼休み、サンドイッチを片手にスマホでとある美術館のHPを眺めていた。

「明日、有給を取れば行ける、、、。でも無理

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春はあっという間に手からこぼれ落ちていく

春はあっという間に手からこぼれ落ちていく

桜の季節が終わった夜の上野公園は、お花見のときの人混みが嘘かのようにひっそりとしていた。人も少なく、美術館だけが明るい。静かな上野公園もいいな、と思いながら国立西洋美術館に向かう。

ひっそりと暗い闇の中、ロダンの≪地獄の門≫が煌々と光に照らされていた。

夜に見る彫刻は、不気味なほどの美しさを放っている。

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そして、4月がやってきた(東京国立近代美術館にて)

そして、4月がやってきた(東京国立近代美術館にて)

3月31日、夜。
私は竹橋の東京国立近代美術館にいた。絵の前で頭を空っぽにして息を吸う。
絵と向き合うときだけは、今日の晩御飯のことも、仕事のことも、週末のことも、出さなければいけないゴミのことも全て忘れて、今ここに集中している気がする。

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3月31日は、社会人になってから何度

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「I'm in the pink.」忘れられない絵

「I'm in the pink.」忘れられない絵

忘れられない出会いは人生で何回あるだろう。
私の人生に影響を与えた人はたくさんいて、それは友人だったり同僚だったり夫だったりするのだけれど、忘れられない絵との出会い、というのもある。きっとそれは誰かにとっては音楽だったり、本だったり、映画だったり、スポーツだったりするのだろう。

いくつかの記憶に残る絵があり、今でも追いかけ続けているいくつかの絵がある。ある日、あの時、あそこにいなければ出会えなか

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東京駅とアーティゾン美術館と自画像の話などを

東京駅とアーティゾン美術館と自画像の話などを

天気の良いとある日、私は東京駅にいた。東京駅にはいつだってたくさんの人がいる。ここからどこかへ行く人、ここへ帰ってくる人。東京駅にいると、まるでちょっと空港にいるかのような非日常感がある。私以外の全員がものすごいスピードで動いていくような、自分だけがここに取り残されているような不思議な感覚に囚われながら仕事へ向かった。

仕事を終えて、あまりにも天気の良い日だったのでそのまま帰宅するのがもったいな

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人生、ずっと考え中(国立新美術館にて)

人生、ずっと考え中(国立新美術館にて)

六本木で降りたのは久々だ。前に来たのはいつだっけ、と記憶をたどる。いつだかの夏、幼馴染と六本木の国立新美術館に来た。カフェのテラスでお茶をしたのがとても気持ち良かったことを覚えている。青々とした夏の緑と夏の風。夕方になってもまだ明るい空。

もうあれから何年経っただろう。ここ最近の私は、記憶とその頃に見た美術館の展示が結びついていることが多い気がする。まるでそれは、高校生のときに散々自転車に乗りな

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