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成瀬は天下を取りにいく 宮島未奈

成瀬は天下を取りにいく 宮島未奈

本屋大賞、おめでとーございます。いや、取るって思ってましたよ。抜群に面白うございましたもの。誰でも読めるし。嫌味がないし。読んで、気持ちいいし。そりゃね、人間の暗部を抉り出すのが文学かもしれませんけど。まず、読んで面白くないとね。別に人間の暗部なんて、知りたくもない人も多いだろうし。文学なんていらなくて、読んで元気と勇気と生きる希望がもらえたら、もうそれでいいし。ああ、それにしても、読めばみんな滋

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三木三奈さん

三木三奈さん

うむむ。アタクシ推しの三木三奈さん、落選。て、候補作は読んでないんですけど。落ちても読むぞー。早く単行本になんないかなぁ。今回で二回目? 三回目? 六回候補になったら、アガリでしたっけ。じゃ、まだ、あります。次回作、期待。

芥川賞受賞作には、だいたい四パターンがあるような気してます。
1、新風俗。
戦争とかアプレとか太陽族とか老人問題とかコンビニとか性風俗とか地震とか。かつてない新しい風俗を書い

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東野圭吾のこと

東野圭吾のこと

言わずと知れたベストセラー作家である。出せば売れる人である。一時期、熱心に読んでいたが、今は余り読まない。読めば必ず面白いが、あの三作を越える作品に出会えないからである。
三作とは、
「秘密」
「白夜行」
「容疑者Xの献身」
いずれも傑作だ。それぞれ映像化されていて、これがまた全ていい。ちなみに演者は

「秘密」小林薫、広末涼子
「白夜行」山田孝之、綾瀬はるか、武田鉄矢
「容疑者Xの献身」福山雅治

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埴谷雄高の「死霊」のこと

埴谷雄高の「死霊」のこと

あらかじめ言っておきます。全く読めてません。何かを期待している方は、ここでおよしください。

「はにやゆたか」である。「はにわゆたか」ではない。「死霊(しれい)」である。「死霊(しりょう)」ではない。
日本語には、こういうのは多い。「工場」が「こうば」と「こうじょう」、「草原」が「くさはら」と「そうげん」、「自然」が「しぜん」と「じねん」。意味するところ、イメージがまるで違う。書く時はルビをふるべ

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藤沢周平のこと

藤沢周平のこと

 テレビの「必殺シリーズ」とか「木枯らし紋次郎」「座頭市」とかで育った世代なんで、時代劇では、アウトロー的な主人公が好きである。大人になってからは「鬼平犯科帳」もなかなかよいなと思うようになった。中村吉右衛門の所作や台詞まわしに痺れたのだ。歌舞伎役者は基礎が違う、とひとり納得した。

 じゃ、本でそれを求めるかと言うと、これが求めない。アウトローものはあまり読まない。座頭市は子母沢寛の短編しかない

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井伏鱒二のこと

井伏鱒二のこと

井伏鱒二と言えば、「山椒魚」と「黒い雨」である。代表作があるのは素晴らしい。ツーと言えばカー。打てば響く気持ちよさ。
「漱石」
「はい。こころ」
「太宰」
「はい。人間失格」
てな具合。
だが、井伏先生の二作には、いろいろ味噌がついている。

「山椒魚」は、名作の誉れ高い短編だが、全集に入れる時、何十年も皆んなに読まれてたのに、ラストを変えちゃった。これに野坂昭如が噛み付いた。発表して、何十年も経

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ドストエフスキーのこと

ドストエフスキーのこと

 ロシアの大作家と言えば、トルストイとドストエフスキーである。偉大である。が、私はトルストイを読了したことがない。「戦争と平和」は上巻の半分くらいで挫折した。「アンナ・カレーニナ」は最初の床屋のとこで挫折した。ほんの十数ページである。私は戦争も不倫も興味なかったのである。
 ドストエフスキーは面白かった。「罪と罰」「カラマゾフの兄弟」「悪霊」「白痴」「虐げられし人々」は読んだ。「地下室の手記」は、

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安部公房のこと

安部公房のこと

 ここのところ短編小説を書いていた。20枚くらいのもんなんで、筆が乗れば一日で書けるが、筆が乗らない。続けて書くと、発想が枯渇することがわかった。何事も無理してはいけない。昨日、本を段ボールに入れて持ち上げたら、腰をやった。無理はいけない。今後は、週一ペースで行きたい。その他の日は、また本の話やらなんやらくだらないことを書こうと思う。
 で、今回は安部公房。偉い作家である。死んじゃわなければ、ノー

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処分できない本

処分できない本

私は読み終わった本には無頓着だ。古典の本とか、後でまた見る機会のあるものは取っておくが、それ以外は大概処分する。特に小説などは、真っ先に処分する。二度読むことは、殆どないからだ。時々家人から、読もうと思ってたのに、なんでもかんでもすぐ売っちゃう、などと怒られる。読みたいんなら、断ってサッサと自分の本棚に確保すればいいのである。私とて、他人の本棚から本を取り出して売りゃしない。
では、小説の類のもの

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本が好き、悪口言うのはもっと好き  高島俊男

本が好き、悪口言うのはもっと好き  高島俊男

 高島俊男の本はだいぶ読んだが殆ど忘れた。「お言葉ですが……」シリーズとか「漱石の夏休み」とか「李白と杜甫」とか、「漢字と日本人」とか。随分楽しませてもらったことは覚えている。最初に読んだのは本書である。
 だから、どれで読んだか分からんが、李白と杜甫で覚えているのは、
1、李白は酔っ払って玄宗皇帝の前にでて就職をふいにした。殺されても仕方ないのに、それは許された。詩がうまかったから。
2、李白は

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詩の自覚の歴史 山本健吉

詩の自覚の歴史 山本健吉

 恥ずかしながら、大伴坂上郎女って知りませんでした。この時代の郎女いうたら、石川郎女。大津皇子といい感じで相聞歌を交わして、草壁皇子には返歌しない、つまりコケにした石川郎女。もしかしたらいなかった、大伴家持の創作かもしれへん石川郎女。だけしか知りまへんでした。はい、浅学の身です。
 大伴坂上郎女は、家持の叔母さんなんです。女性では額田王の次に万葉集に載った歌が多いんですってね。
 本書の後半、筑紫

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京都発見 梅原猛

京都発見 梅原猛

梅原猛は「隠された十字架」とか「水底の歌」で有名な哲学者、歴史学者だ。推論がすぎると、歴史学者とは認めない人もいる。私は面白ければいいので、名称には拘らない。

哲学者としては、仏教哲学を書いたものが面白い。角川ソフィア文庫の仏教の思想シリーズはどれを読んでも面白い。ちなみに私が最初に読んだ本は中公新書の「地獄の思想」だった。当時は地獄に興味があったのだろう。鬼太郎も好きだったし。

さて、本書で

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さようならギャングたち 高橋源一郎

さようならギャングたち 高橋源一郎

衝撃といえば、この本ほど衝撃的だったものはない。ただ内容を紹介するのが、とても難しい。

読むととても楽しくて、それでいて言葉とか認識とか、詩とか小説とか文学とか表現することとか、そうしたことを深く考えさせられる。

新しかった。村上春樹を初めて読んだ時も新しいと思ったけれど、高橋源一郎も間違いなく新しかった。誰も書いたことのない、誰も読んだことのない文学が、そこにあった。

高橋源一郎という作家

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藪原検校 井上ひさし

藪原検校 井上ひさし

井上ひさしには名言が多い。毎日朝起きると、名言をひとつ考えるのが日課だったそうだ。それは嘘だが、それくらい多い。

むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことはあくまでもゆかいに

これは中でも有名なもので、仙台文学館に行くと色紙やファイルにして売っている。お立寄りの際は、ぜひ購入を検討してほしい。

話を

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