記事一覧
◆日記◆ ムカートテロリン
ムカートテロリンという水槽がある。
ポータブルCDプレーヤーほどの大きさのプラスチックの水槽で、平たく、蓋はドーム状に丸みを帯びている。
この中に砂利や水草と一緒に小さな魚を1~2匹入れる。
それを一個単位で販売し、そのまま持って帰って頂くというのがムカートテロリンのビジネスモデルである。
中に水が入っていて、しかもプラスチックの蓋には気密性がない。
持って歩くたびに水がゆらゆら揺れ、平たい水槽
◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店13「さなえの失敗」
このは「はい、これで大丈夫」
このははさなえの足に包帯を巻き、ぽんとその場所を軽く叩く。
さなえ「いたた。これ大袈裟じゃないですか?」
このは「靴下履くとズレるでしょ。このくらいでいいんだよ。
ったく、しょうがないなあ面倒かけて」
さなえ「……すみません。おばあちゃん、怒ってました?」
このは「いや、怒ってはいない。『間違いは、誰にでもあるぅ~♪』って歌ってた。今、さなえん家に電話しても
◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店12「お墓参り」
このは「はなびー、お墓参りどうする?」
畳に転がって漫画を読んでいたはなびが、面倒くさそうに返事をする。
はなび「あー、もうそういう時期か。でもコ〇ナ禍だしなぁ」
このは「去年どうだったっけ?」
はなび「あれ? 行ったっけ? あ、行った行った行った! 十周年」
このは「十回忌ね」
はなび「ちげーよ、十回忌なんてねーから。一周忌、三回忌、七回忌で、次は十三回忌」
このは「なんなんめっち
◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店6「がんばれ、はなびくん」
学校からの帰り道。
バス通りを歩き、マッサージ屋さんのあたりに差し掛かると急に足が重くなる。
やがて視界に映る「ホシゴイの森喫茶」の小さな看板。
もう何度目になるだろう、はなびは俯いたまま路地を通り過ぎ、コンビニを通り過ぎ、交番を通り過ぎる。
あの日以来、居場所がない。
学校でも同級生にからかわれるし、家に帰ってもさなえがお店にいたりする。
心の休まる場所を求めて、バス通りから遊歩道に入って行く。