影浦つとむ

元ひきこもり系フォークシンガー。演劇人。物書き。陰謀論者。 soundcloudにて弾…

影浦つとむ

元ひきこもり系フォークシンガー。演劇人。物書き。陰謀論者。 soundcloudにて弾き語りとかDTMの音楽をアップしたりもします。 soundcloud.com/user-961267690

マガジン

  • おばあちゃんの喫茶店

    おばあちゃんが経営する、小さな喫茶店。 一緒に住んでいる孫のこのは、はなび。 何気ない日常のやり取りを切り取った短編連作。 脚本に近い書き方の短編小説です。 特に先の展開とか考えず、のんびり気が向いたら続きを書いたりします。 おばあちゃん 喫茶店の店主 星野このは 姉 高校生 星野はなび 弟 中学生 さなえ はなびの同級生 宇野 喫茶店の客

最近の記事

◆日記◆ 「ありがとう」と「当たり前」

「ありがとうの反対語は当たり前」という言葉がある。 何かをしてもらうことを当たり前にしてしまっては、感謝の気持ちが無くなっていく。 してもらえなかった時に、怒りが生じてしまうことすらある。 当たり前とされていることの多くは、善意や礼節によって維持されている。 だから、感謝を忘れないようにして隣人愛的な文化を育んでいこう、というものだと解釈している。 一方で、インドにおいては当たり前のことに対しての感謝が失礼になってしまうことがあると小耳に挟んだ。 「困っている人を助けるのは

    • ◆日記◆ 「男の性欲」について

      ツイッタートレンドで「男の性欲」が上がっていました。 そのことについて思うことをいくつか。 ■性嫌悪と性暴力 性暴力の被害者の多くは女性です。 そのことにより、女性は男性の性欲に対しての嫌悪を抱きやすいという現象が起きているのではないかと思っています。 日本において、性暴力は可視化されているとは言えません。 多くは裁かれず表沙汰になっていないのが現状のようです。 これをしっかり可視化できるようにすること、被害女性が告発できるよう、適切に保護される方法を模索するべきではな

      • ◆日記◆ ムカートテロリン

        ムカートテロリンという水槽がある。 ポータブルCDプレーヤーほどの大きさのプラスチックの水槽で、平たく、蓋はドーム状に丸みを帯びている。 この中に砂利や水草と一緒に小さな魚を1~2匹入れる。 それを一個単位で販売し、そのまま持って帰って頂くというのがムカートテロリンのビジネスモデルである。 中に水が入っていて、しかもプラスチックの蓋には気密性がない。 持って歩くたびに水がゆらゆら揺れ、平たい水槽の中でじわじわと零れて魚は弱っていく。 そういう欠陥を持った商品でもある。 そ

        • ◆日記◆ 安倍晋三氏の襲撃事件について思ったこと

          安倍晋三氏のご冥福をお祈りいたします。 自分は政治家としての安倍氏を支持していませんでしたが、殺されていい人なんていないと思っています。 安倍晋三氏を撃ったのは山上徹也氏です。 しかし、この社会が撃たせたとも言えるのかもしれない、と思いました。 山上氏の境遇は、社会から見捨てられたいわゆる「無敵の人」と言ってもいいのかもしれません。 責任の一端はそういう境遇を生み出した社会にもあるし、社会を構成する一人として自分にも責任があると考えています。 こんな境遇の人を作ってはい

        ◆日記◆ 「ありがとう」と「当たり前」

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        • おばあちゃんの喫茶店
          16本

        記事

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店16「納豆と自由」

          このは「ちょっと待ったぁーーーー!」 はなび「えっ? ななな、なに?」 はなびは納豆をかき混ぜる手を止めた。 畳の部屋は、家族の食卓でもある。 今は大きめのちゃぶ台が広げられ、はなびとこのはが席についている。 不穏な気配を感じたのか、キッチンからおばあちゃんが顔を出した。 おばあちゃん「え、なに? ケンカ?」 このは「ケンカ? いいえ違います。これは聖戦です」 おばあちゃん「聖戦がろくでもあった試しはないんだよねぇ……。どうしたの?」 このは「はなび。あんた今、納

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店16「納豆と自由」

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店15「かみきられた」

          はなび「姉ちゃん、風呂空いたー」 パジャマ姿のはなびが畳の部屋にやってくる。 スマホ画面を見ながら返事をするこのは。 このは「んー。あれ、はなび髪切った?」 はなび「かみきられた」 このは「その言い方だと誤解を招きそう。へー、いいじゃん。やっぱおばあちゃんすげえな」 はなび「はやく風呂入れよ」 このは「ちょっと後ろ向いて」 眉をしかめながらも後ろを向くはなび。 このは「うなじも綺麗じゃん。写真とっていい?」 はなび「ダメに決まってんだろ、パジャマだぞオレ」

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店15「かみきられた」

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店14「八朔とおそなえ」

          はなび「もおーっ! おばあちゃーん! なんでそういうことすんのー!」 このはが2階から降りてくると、お店の方で言い争っている声がする。 テーブル席にははなびの姿。 カウンターの方には、おばあちゃんが困ったような顔で立っていた。 このは「なに、またケンカ……?」 おばあちゃん「ちがうの」 はなび「いや、ケンカじゃねーんだけどさぁ。何度言っても同じことすんだもん」 このは「ああ……。平和っていいなぁ。戦争してたらこんな風にはいられないよ。平和で良かったね?」 はなび「

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店14「八朔とおそなえ」

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店13「さなえの失敗」

          このは「はい、これで大丈夫」 このははさなえの足に包帯を巻き、ぽんとその場所を軽く叩く。 さなえ「いたた。これ大袈裟じゃないですか?」 このは「靴下履くとズレるでしょ。このくらいでいいんだよ。 ったく、しょうがないなあ面倒かけて」 さなえ「……すみません。おばあちゃん、怒ってました?」 このは「いや、怒ってはいない。『間違いは、誰にでもあるぅ~♪』って歌ってた。今、さなえん家に電話してもらってるから。お母さんに迎えに来てもらって一緒に帰るんだよ?」 さなえ「むう」

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店13「さなえの失敗」

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店12「お墓参り」

          このは「はなびー、お墓参りどうする?」 畳に転がって漫画を読んでいたはなびが、面倒くさそうに返事をする。 はなび「あー、もうそういう時期か。でもコ〇ナ禍だしなぁ」 このは「去年どうだったっけ?」 はなび「あれ? 行ったっけ? あ、行った行った行った! 十周年」 このは「十回忌ね」 はなび「ちげーよ、十回忌なんてねーから。一周忌、三回忌、七回忌で、次は十三回忌」 このは「なんなんめっちゃ詳しいじゃんキモい」 はなび「だから去年は十周年」 このは「今年は十一周年

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店12「お墓参り」

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店11「悪いニュースといいニュース」

          さなえ「このは先輩、なんかいいニュースないんですか?」 このは「は?」 休憩に入るや否や、さなえはちょっと苛立ってこのはに尋ねた。 このはは畳の部屋の座布団にあぐらをかいて座っている。 このは「うーん……。今日も元気でしあわせだぁー、とか?」 さなえ「ニュースですかそれ。 こないだの星野のやつもそうじゃないですか、中央値のやつ」 このは「おっ、呼び捨てか?」 さなえ「……その、はなびくんの。あれだって、その、ホームレスの人の話からって聞きました. なんかこう、悪い

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店11「悪いニュースといいニュース」

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店10「中央値と平均値」

          おばあちゃん「お花を見に行ってきたのよ、新宿に。この前」 このは「へえ」 お店の営業が終わり、おばあちゃんとこのはは洗い物や片付け物をしている。 テーブル席のひとつでは、はなびが教科書とノートを広げて塾の宿題をしているようだ。 このは「あれだよね、なんだっけ、有名なフラワーアレンジメントの」 おばあちゃん「そうそうそうそう、栗屋崎さん。素敵だったわぁー。すごい笑顔が素敵で、人当たりよくて」 このは「花は?」 おばあちゃん「花も良かったわよぉー、そりゃ。 でもやっぱ

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店10「中央値と平均値」

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店9「作っても作ってもカレー(後編)」

          しゅんしゅんとお湯の湧く音が聞こえる。 静かな喫茶店の店内。 おばあちゃんが慣れた手つきでティーポットやカップを用意している。 三人のこどもたちはカウンターに座り、おばあちゃんのノートを覗き込んでいた。 さなえ「思ってた以上にまじめな話でびっくり」 はなび「おばあちゃんがそこまで考えてるとは思わなかった」 このは「そういや、お店始める前の話だけど」 はなび「え、なに」 さなえ「ここって、どのくらいやってるんです?」 このは「五、六年くらい前じゃないかな。私がまだ小

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店9「作っても作ってもカレー(後編)」

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店8「作っても作ってもカレー(前編)」

          おばあちゃん「もーだめ! 勘弁してちょうだい!」 このは「おばあちゃん、どうしたの!?」 おばあちゃん「作っても作っても、作っても作ってもカレー……作っても作ってもカレー……」 このは「おばあちゃん!?」 おばあちゃん「こんなことがしたくてお店を始めたんじゃないのあたしは!」 このは「おばあちゃん、落ち着いてぇーー!」 はなび「なに、なんの騒ぎ」 はなびが居住スペースから顔を出す。 営業を終えた店内に、絶望の眼差しで天を仰ぐおばあちゃんの姿。 はなび「どったの

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店8「作っても作ってもカレー(前編)」

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店7「ジャナイカ先輩」

          このは「あー、もうめんどくせーなぁ」 スマホをいじりながら、このはは小さく毒づいた。 寝転がって漫画を読んでいたはなびが、怪訝そうな目を向ける。 はなび「なに? どったの」 このは「え? うそ、口に出てた?」 はなび「姉ちゃんって、そういうお漏らし多いよな」 このは「あのさー、バスケ部の先輩なんだけど」 はなび「姉ちゃんバスケやってたっけ?」 このは「練習がきつくて一週間でやめたやつ。 あと身長とかセンスとか、色々足りてないということがわかったので。 ていうか『

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店7「ジャナイカ先輩」

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店6「がんばれ、はなびくん」

          学校からの帰り道。 バス通りを歩き、マッサージ屋さんのあたりに差し掛かると急に足が重くなる。 やがて視界に映る「ホシゴイの森喫茶」の小さな看板。 もう何度目になるだろう、はなびは俯いたまま路地を通り過ぎ、コンビニを通り過ぎ、交番を通り過ぎる。 あの日以来、居場所がない。 学校でも同級生にからかわれるし、家に帰ってもさなえがお店にいたりする。 心の休まる場所を求めて、バス通りから遊歩道に入って行く。 曲がりくねった小道を行くと、その先にはちょっと大きな公園があった。 はなび「

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店6「がんばれ、はなびくん」

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店5「本当のいいねの裏返し」

          さなえ「このは先輩、いいねが欲しいです!」 このは「ん? いいねいいねいいねいいね!」 さなえ「に゛ゃーーーっ! 違う!」 髪をワシワシかき乱され、さなえは座っていたカウンターから飛びのいて威嚇の姿勢を取る。 このはは何事もなかったかのように、スマホの画面に目を戻す。 奥のテーブルには何組かのお客さんがいて、さなえはちょっと決まり悪そうにこのはの隣に座り直した。 さなえ「ツイッターでいいねが欲しいんです!」 このは「は? なんで?」 さなえ「なんでって……嬉しいか

          ◆小説◆ おばあちゃんの喫茶店5「本当のいいねの裏返し」