マガジンのカバー画像

医療のこと。医者人生のこと。

20
医療に関する個人的な意見を呟いています。研修医さん向けの記事も時々。
運営しているクリエイター

#女医

仕事に全振りしていた女医が、出産して知った「生活を営む」ということ

仕事に全振りしていた女医が、出産して知った「生活を営む」ということ

出産して、たくさんのことが変わった。

それまでできていたことができなくなったり、必要なかったことが必要になったり。自由な時間はより少なく、できることもまた少なく。誰かの手を借りることが増え、助けを求めることも多くなった。総じて出産前の自分よりも「弱くなった」「できなくなった」と感じる機会が増えた。

それでも、出産することで、子どもを生み育てることで、初めて理解できるようになったことがあった。そ

もっとみる
週5フルタイムをやめます。

週5フルタイムをやめます。

「体力のない医者選手権」なるものが開催されたら、ぶっちぎりで1位になる自信があります。

医者の仕事は体力勝負。長時間手術や当直など。マラソン選手のように、長時間にわたって一定レベルの仕事をすることが求められます。体調が悪くても、眠たくても、目の前の患者さんには関係ありません。必要があれば食事や睡眠をすっ飛ばしてでも仕事をすることは、少なくありません。

そんな激務にも関わらず、多くの医師は涼しげ

もっとみる
乳がんのセルフチェックしていますか?

乳がんのセルフチェックしていますか?

こんにちは。女医ワーママのあおです。

突然ですが、乳がんのセルフチェックをご存知ですか?

私は数年前から、1ヶ月に1回、簡単なセルフチェックをしています。
妊娠・授乳中はなぜか自分のバストに触るのが嫌になってしまい、お休みしていましたが、先日、息子が卒乳をしたのを機に、1年半ぶりに再開しました。

今日は簡単にできる乳がんセルフチェックをご紹介したいと思います。

なぜセルフチェックが必要か。

もっとみる
「誠実な翻訳者」という役目。医師が情報を発信することについて。

「誠実な翻訳者」という役目。医師が情報を発信することについて。

先日、オンライン上でちょっとしたプレゼンをする機会がありました。
参加していただいたのは、同世代の方々。テーマは『予防接種』について。
私が個人的に興味を持って調べたことをシェアする形式でした。

そもそも、私は予防接種の専門ではありません。感染症内科医でもなく、公衆衛生にも携わっていません。医師免許を持った、ただの一般人です。

医師という専門家が「専門外」の医療情報を発信する。

その過程で生

もっとみる
30代の「ピア・エデュケーション」 妊娠・出産を拗らせた女医は、覚悟を持てない。

30代の「ピア・エデュケーション」 妊娠・出産を拗らせた女医は、覚悟を持てない。

今日は、なんとも言えない、後味の悪い話を書こうと思う。
これは読み手の方のことは一切考えていない、ただ、自分の思考を整理するためだけの文章だ。だから読み終えてもスッキリはしないだろうし、書き手に対する評価が悪い方向に変わるかもしれない。とても自分勝手な文章になっていると思う。

とりわけ、不妊治療を経験された方には、本当に、本当に申し訳ない内容になっているかもしれない。だからくれぐれも、お気をつけ

もっとみる
緊急避妊薬がほしかった、24歳の春。

緊急避妊薬がほしかった、24歳の春。

にわかに緊急避妊薬が話題となっている。

緊急避妊薬とは、避妊に失敗した時や性被害にあった時に服用する、避妊のための薬剤だ。アフターピルとも、緊急避妊ピルとも呼ばれている。72時間以内に内服することで、約80%の確率で妊娠を防ぐことができる。

緊急避妊が必要な場面というのは、ある日、突然やってくる。それは誰が悪いとか何が悪いとかでなくて、本当に事故のように訪れる。

だからこそ、緊急避妊薬を知っ

もっとみる
不同意堕胎致傷について思うこと

不同意堕胎致傷について思うこと

つい先日、飛び込んできたニュースに、私は耳を疑いました。

医師が知人女性に対して、同意を得ないまま堕胎手術を行った、という事件。

この報道を知ったとき、私はとても、やるせない思いをしました。

今日はこのことについて書きたいと思います。

はじめに

この事件では、まだ医師は容疑者にすぎません。

裁判で有罪判決が出ない以上、その医師は有罪ではありません。今後、事実関係が明らかになる過程におい

もっとみる
エビデンスは、誰かを殴る道具ではない

エビデンスは、誰かを殴る道具ではない

今日は、久しぶりに「女医」らしいことを書こうかと思う。まあ、そんな大それたことは書けないので、ごくごく一般的な医師が、ごくごく一般的に知っている範囲内のことになってしまうのだが。

今回のテーマは「エビデンス」について。

最近、「エビデンス」という言葉をよく耳にするようになった。サイエンスや研究の世界だけではなくて、そうでない方も口にされているのを聞く。新型コロナウイルスの広がりとともに、様々な

もっとみる
「持たざる女医」の生存戦略

「持たざる女医」の生存戦略

ひと昔の女医は、育休が取れなかったらしい。

40代、50代の出産経験のある女医さんと話をすると、決まって「出産したら仕事は辞めるものって言われていた」「育休なんて取らせてもらえなかった」という言葉が出てくる。ほんの10年ほど前のことだ。

では、彼女たちがどうやってキャリアを継続したかというと、出てくるのは「実家」「じじばば」「開業」「フリーランス」「非常勤」という言葉。産休後はすぐにフルタイム

もっとみる
性教育ってなんなんだ?

性教育ってなんなんだ?

緊急避妊薬(アフターピル)の薬局販売を、政府が検討し始めたらしい。

緊急避妊薬(アフターピル )、政府が薬局での販売を検討へ。実現求める強い声 / HUFFPOST

報道を知った時、「やっとか」というため息に似た安堵が漏れた。アフターピルの国内認可から10年。道のりはあまりにも長かった。女性性に対する人権というものが極端に蔑ろにされるこの国で、本当に”前進する”とは思っていなかった。心のどこか

もっとみる
少女たちは、1万円の薬を買えたのだろうか

少女たちは、1万円の薬を買えたのだろうか

緊急避妊薬、というものがある。

緊急避妊薬。アフターピルとも呼ばれるこの薬は、避妊に失敗した時や性被害にあった時に、72時間(3日)以内に内服することで、約80%の確率で妊娠を防ぐことができる。

望まない性行為や妊娠から、女性が自分自身の身を守る、数少ない、おそらく唯一とも言って良い手段だ。

この緊急避妊薬が日本で認可されたのは2011年。たった9年前だ。

日本初の緊急避妊薬「ノルレボ錠」

もっとみる
勝ち負けにこだわっていた? 復職面談を振り返っての反省。

勝ち負けにこだわっていた? 復職面談を振り返っての反省。

こんにちは。女医ワーママのあおです。

今回は少し、情けない話になります。
とある件を通して、過去の自分の言動を反省した内容です。少しでも「あわないな」と思われた方は、回れ右してくださいね。

では。

先日、こんなことがありました。

育休復帰をするにあたり、私は何度か上司と面談をしました。そのことを話したとき、不意に別の上司より「自分の希望ばかり言っている」と指摘され、動揺してしまいました。

もっとみる
「子持ちの女医は完璧な医者になれない」に対する、5年越しの反論。

「子持ちの女医は完璧な医者になれない」に対する、5年越しの反論。

こんにちは。女医ワーママのあおです。

「ガラスの天井」や「マミートラック」という言葉があります。

男性と同じ学校を出て、就職して、働いていたのに、気が付いたら目の前には壁がある。性別や出産で、思っていたのと違う道が用意され、歩かされている。
そんな経験をされた方は、多いのではないでしょうか。

タイトルに書いた言葉。

「お母さんをしながら、完璧な医者にはなれないよ」

というのは、実際に私が

もっとみる
同級生。医者夫婦。なぜ夫は、妻に時短勤務をすすめたのか。

同級生。医者夫婦。なぜ夫は、妻に時短勤務をすすめたのか。

こんにちは。女医ワーママのあおです。

先日、公開したこちらの記事。

公開後、さまざまな共感やご意見、疑問などをいただきました。反響の大きさに驚くと同時に、とてもありがたく思っております。

記事で引用した『普通の門』と『ピンクの門』の例え話。
これは、ちきりんさんのブログからお借りしたものです。

『普通の門とピンクの門』 - Chikirinのブログ

そしてふと、気が付いたのです。

もっ

もっとみる