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文芸部部誌 1号

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Twitterで知り合った有志で作った、文芸部の部誌です。 皆の個性が爆発してる作品ばかりですので、宜しければ見て言って下さい。
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2020年8月の記事一覧

【小説】玉手箱

 少女は太平洋の中心にある島の小さな家に家族四人で暮らしていた。この島には二三軒のご近所しかおらず、少女と同年代の子供も居なかった。電子機器の類は無く、住民は皆漁で生計を立てていた。何も楽しみがないような小さな島であったが、少女は家族を深く愛し、幸福を感じていた。
そんなある日のことである。彼女が島のはずれでうろうろしていると、浜に打ちあがった大きな鉄の箱を見つけた。箱は剥げかけたカラフルなペンキ

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【小説】風船病

 受験に大失敗した私は、帰りのバスで白く染まる街を眺めていた。今までの行動を顧みるでもなく、ただ外を眺めていた。不思議なことに、街はモノクロにも極彩のようにも見えるのであった。そのように見えるのは、失敗した時のあっさりした放心からだろうか、それともこれから始まる浪人生活への緊張からくるものなのか。
 街はいつも通りの賑わいであった。街灯のイルミネーション、しんしんと降る粉雪、楽しそうに笑う子供たち

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胡蝶蘭

先の、盂蘭盆に胡蝶蘭が届いた、

仏壇のそば、白い卓布の脇に

真っ白な花を咲かせ、

そこは俗世と切り離されたようであった。

胡蝶は人の魂を浄土へ運んでゆくそうである。

昔の人は洒落たことを考えるな、

そう思いながら萎れて壊れてしまいそうな

蘭の花を覗いた。

夏が去る。

夏が去る。

現在8月の下旬。残暑がまだ続いている。

夏休みもいよいよ終盤だ。

エアコンの効いたリビングでやり残した宿題と自由研究、所々が抜けた日記を完成させていく夏休み終盤。

「はっきり言ってめんどくさい。」

とは言うものの、結局は自業自得。そう自分に言い聞かせて嫌々終わらせる。宿題は答えを見ながら、日記は思い出せるところはその通りに書いて、思い出せない部分は全部空想。自由研究は、工作が好きなのですぐ

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マネー・エイジ(星新一)朗読

朗読者:千寿、カバーイラスト:ノカさん

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星新一さんのマネー・エイジの朗読です。

読み応えバツグン!噛みきれないほどの小説

読み応えバツグン!噛みきれないほどの小説

皆さんこんにちは!小説料理研究家のくろこです!
今日皆さんにご紹介する小説料理は…!

「読み応えバツグン!噛みきれないほどの小説」

です!
それでは早速レシピを紹介致します!

材料
・ひらがな・・・大3
・カタカナ・・・小1/4
・漢字 ・・・適量
・水 ・・・100cc
・強力粉 ・・・500g
・全卵 ・・・1個
・砂糖

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壁

人間は誰しも時間と壁と試練を与えられる。
時間は無限に感じられ、壁は遠く遠くに見える。
しかしどうだろう、時間は有限。
壁は時間が経つ事にこちらへ迫ってくる。
壁に潰されないためには試練を超えなくてはならない。
逃げられはしない。
壁は四方八方から迫ってくる。
壁が近くまで来ると人は焦る。
とてつもなく。
壁の向こうからは不明瞭な声。
これがどうしようもなく焦りを際立たせる。
これまでも時間はあっ

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パンがないなら

パンがないなら

しまった、朝ごはん用のパンを買っておくのを忘れた。
そうだ、パンがなければパンケーキを食べればいいじゃない。
卵白を大きめのボールに2つ分、卵黄は取り皿に入れる。卵黄にベーキングパウダーを小さじ1/4、薄力粉を大さじ3、牛乳を大さじ1、バニラオイルを数的入れて泡立て器でよく混ぜる。次に卵白を泡立てる。先に砂糖を大さじ2測っておく。卵白に電動ホイッパーを突っ込み、全体が白っぽくなるまで泡立てる。全体

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聖女の呪い(5)

聖女の呪い(5)

昼食を食べた双子はトゥレプの手伝いとして、乾燥させた薬草を薬研で細かくしたり、色々な薬を小瓶に詰めたりと、獣の足で器用に手伝いをしていた。

そんな風に作業をしていると、あっという間に日が落ちた。その途端、トゥレプの姿が溶けるようにアナグマへと変わっていく。着ていた服がその場に残らず消えてしまうのが不思議ではあるが、皆毛皮に変化しているのだろうとあまり気にしていない。

「さて、日が暮れたね。お月

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聖女の呪い(4)

聖女から受けた呪いによって、身動きの取れなくなってしまったカントとアトゥイは、仲間たちの手によってトゥレプの小屋まで運ばれたのだった。

トゥレプの小屋には闇の結界が張られているおかげで、ぐったりとしていた双子たちはたちまち元気を取り戻した。

「おばば、あの人間は一体なんなの!?」

「憐れな…とか言いながら、いきなり魔法をかけてきたんだよ!」

「そしたらいきなり人型が溶けて、狐の姿に戻っちゃ

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聖女の呪い(3)

聖女の呪い(3)

双子やトゥレプの棲むこの森は、太古の昔から魔力と呼ばれる力が満ち満ちている場所なのだ。500年ほど前、この膨大な魔力に目を付けた人間たちは、自分たちだけがその力を使えるようにと、この地に結界魔法をかけ、人よりも多く闇属性の力を持つ、魔族やエルフ、ドワーフや精霊と呼ばれる者たちが立ち入れないようにしてしまったのだ。

しかし、この魔法の影響はそれらの亜人種たち以外にも影響を及ぼした。それが森に棲む動

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