かわせみ

Minecraftを本職としておりました。よかったら読んでいってください。

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最近の記事

放置されていた宿題

ふと、こうやって文章を書くことがある。その動機はおおよそ他者の創作を見て感化されて行き場のない感情を芸術へと昇華させようという、なんということはないありきたりなものである。 しかしいざ書いてみると、これぐらいは書けるだろうと思っていた分量や質には程遠く、どうにも納得のいかず全身がむず痒くなるような有様の何かが出来上がってしまう。それはそうだ、普段から文章を書いていないのだから。幾度となく挑戦し、呆れて紙を破り捨てることを繰り返したであろう彼らとは違って、この文章は赤子のよう

    • 【日記】梅雨晴れの散歩道

      平日の朝。多くの人間が会社や学校で机に向かっている中で、私は自宅近くの河川敷をあてもなく歩いていた。日々の引き籠り生活に疲れた私は、陰鬱を晴らすため梅雨の休暇中に訪れた太陽に遭いに行ってみることにした。 河川敷では平日だというのに野球をする少年たちの声が聞こえた。随分と音域が高かったから小中学生だったはずだ。こうも表現が曖昧なのは他人の視線に酷く怯えている私の観察力不足にある。私は常に否定される恐怖に怯え、周りのことを正確に観察できないでいる。幸いなことに、彼ら野球少年と年

      • 旅先日記①(呉編)

        写真は 呉、歴史の見える丘にて 私は旅行する時、知らない街をぶらりと訪れることがある。理由の一つ目は、そこの人間がどう生きているのかという興味である。旅行は有名な場所を歩き回るだけでなく、その土地の人間を観察することも良い楽しみ方だと考えている。旅というのは往々にして非日常への欲求の現れであり、その快楽は日常との比較によって満たされるものである。なればこそ、自分と他人の日常の違いを比べてみることは意外な発見や故郷への郷愁を思い起こさせる。今の自分を見つめるきっかけにもなる。

        • 【小説】泥濘に咲く

          私が彼女を発見したのは、とある沼地を旅しているときだった。真っ白のワンピースを身に纏って佇む少女は、この薄汚れた荒涼の地にふさわしくないように見えた。恐ろしさもあったが、それよりも何故という疑問が私の頭を支配していた。 興味は尽きず、私は彼女に近寄りながら再度観察した。彼女の足は震えており、薄ら寒い霧はその白い肌から熱を奪っていることが想像できる。異様な出立ちも相まって、彼女は儚くも美しい姿に映った。今にも倒れそうな彼女を見て足は自然と前へと進んでいた。 「大丈夫

        放置されていた宿題

          小説:故郷 解説

          こちらは私の書いた小説「故郷」の解説となっております。民俗学的知識を中心として、私の解釈なども含めつつ解説を進めます。 まず、主人公が旅好きである理由。 日常的に使われるスーパー、散歩ついでに寄っていきそうな社、近所の子供が遊んでいる公園、そういった場所を巡りながら、地元の人間に溶け込んでみる。 彼はこの行動から、故郷を探しているとも言っていい行動をとります。観光が目的ではなく、自分が居て自然と思えるような場所、つまり居場所を求めることが彼の旅の目的です。 なぜ集落に

          小説:故郷 解説

          【小説】故郷

           物心ついたときから旅をすることが好きだった。旅といっても観光地を見てはしゃいだり、美味しいご飯に舌鼓を打ったり、という旅ではない。それよりも地元の人間が通っているような、生活になじみ深いような場所に足を運ぶことが多い。日常的に使われるスーパー、散歩ついでに寄っていきそうな社、近所の子供が遊んでいる公園、そういった場所を巡りながら、地元の人間に溶け込んでみる。そうやって一日を過ごしていると、人や文化を深く知ることができて興味深い。観光地などの表側では見られないほんとうの素顔を

          【小説】故郷

          【小説】夢とりどり

          星を見ることが好きだ。中学生頃から真夜中の空を見上げることだけが僕の楽しみだった。元から一人でいることが好きな質だったが、星空は僕に無類の安心を与えてくれた。だが別段星そのものに興味があるかと言われればそうではない。知っているのはせいぜい夏の大三角などの授業で習うような星だけ。流星群などのロマンチックなものに惹かれるわけでもない。星は好きだが、追いかけるほどのものとは思っていなかったのだろう。ただ唯一変わらないのは、見上げるたびに「あの星にでも行けたらな」と思ってしまうこと。

          【小説】夢とりどり

          【小説】ねがいごと

          これから毎日小説を書こうと思います。余談ですが、私は一日坊主の常習犯でして、次の日には何かまた別のことを始めては辞め…を繰り返しております。一体いつまで持つか見ものですね。 ※ 忙しい時期は期間を決めて休止します。主に期末試験や帰省などですね。 ねがいごと 七月中頃の話である。つい最近まであった雨に代わって、太陽は熱を降らせていた。私が近所の商店街をぶらぶらと歩いていたその時、花屋の路地裏に二三枚の色紙が落ちているのを発見した。興味のまま近づいてみると、それは短冊であっ

          【小説】ねがいごと

          【随筆】公正世界仮説について

           この間、公正世界仮説という言葉について解説していた動画があったため、少し考えてみる。差し当たって、私は自身の幸福を満たすためだけに思考している、という前提を記しておく。そして私は哲学の類には深く足を突っ込んだことはないため、主観からの論考になる場合が多い。つまり、個人の意見である。  公正世界仮説とは、世の中が公正であり、相応しい行動をした場合は相応しい結果が、悪を成したら悪が帰ってくる、とい信じられている思考である。日本においては四字熟語、「自業自得」がその代表例であり

          【随筆】公正世界仮説について

          霞桜

             彼は恋人と別れた。些細で突発的なきっかけは、長く続いた関係を終わりに導くには他愛無く、受け入れ難いものだった。バスは満開の薄紅を縫って走ってゆく。両脇に立ち並ぶ桜たちが枝を重ねているのを見て、奏汰は再び溜息をこぼすのだった。  初恋だった。彼の経験からは、何が最善だったのか分からない。関係を続けていくことが最善だったのかすらも、今の頭では考えることすら叶わない。まだ青い彼にとって大きすぎる喪失は、その思考すらも混濁させていた。  泥濘に埋もれるような無力感と共に、彼は坂

          新年のあいさつ

          遅ればせながら明けましておめでとうございます。今年も惰筆ながら細々と書かせて頂きますので、どうぞよろしくお願いします。 今年は多くのことを学ぶきっかけになりました。 まず社会学・倫理学と出会えたこと、そこから自分というものを分析できたこと。 寮生活を通して自分がどのような人間であるかということ。 深く考えすぎて追い詰めてしまったのか、鬱になりオンデマンドの授業すら受けられないという始末でした。 残念ながら文筆に積極的に取り組むことは出来ませんでしたが、今年こそ!…とはいき

          新年のあいさつ

          【小説】晩夏、神田川と猫

           進学のために上京して数か月が経った。当初こそ新鮮だった体験も今では日常となり、いつしか私の生活に退屈を生み出す原因となっていた。  晩夏の真昼、私はすっかり冷たくなった風を受けながら神田川の辺を歩いていた。川岸に植わる桜の枝垂れ一節々々はとても美しく、それらを眺めながら歩くのは私の日常における数少ない楽しみであった。今日のような晴れた日には、淡い緑から洩れる光が浅い川底に輝き、黄色がかった葉は夏の終わりを告げるかのようにはらはらと舞っている。ここらに住んでいる者からすれば至

          【小説】晩夏、神田川と猫

          【小説】玉手箱

           少女は太平洋の中心にある島の小さな家に家族四人で暮らしていた。この島には二三軒のご近所しかおらず、少女と同年代の子供も居なかった。電子機器の類は無く、住民は皆漁で生計を立てていた。何も楽しみがないような小さな島であったが、少女は家族を深く愛し、幸福を感じていた。 そんなある日のことである。彼女が島のはずれでうろうろしていると、浜に打ちあがった大きな鉄の箱を見つけた。箱は剥げかけたカラフルなペンキが塗られており、表と思われる部分にはボタンが一つあった。彼女はこの異物を両親に報

          【小説】玉手箱

          【随筆】「常識」の歪みについて

           私は社会というものが心底嫌いだ。文化や規模によってその価値観は変わるだろう、だが常識を求めてくる点ではどこも同じだ。常識が適応される範囲、それはあまりにも多岐にわたる。  常識を求める人間の心理は何か、これが全く分からない。社会の成立ちに相俟って出来た認識から生まれ落ちたのが常識だろう、ある程度同じ尺度を持った人間が共有している思考のことである。社会構築主義的に考えるならば、このようになるだろう。はたまた、アインシュタインはこう述べている。 「常識とは十八歳までに身につけた

          【随筆】「常識」の歪みについて

          【小説】風船病

           受験に大失敗した私は、帰りのバスで白く染まる街を眺めていた。今までの行動を顧みるでもなく、ただ外を眺めていた。不思議なことに、街はモノクロにも極彩のようにも見えるのであった。そのように見えるのは、失敗した時のあっさりした放心からだろうか、それともこれから始まる浪人生活への緊張からくるものなのか。  街はいつも通りの賑わいであった。街灯のイルミネーション、しんしんと降る粉雪、楽しそうに笑う子供たち。そのいずれも、私の心情とはかけ離れているものだった。それらを見て、暖房の効いて

          【小説】風船病

          不条理と反抗―カミュを繙読する

           カミュ著「シーシュポスの神話」を読んでいて、思ったことを書く。メモ帳のようなものなので、読者の参考になるかは怪しい。  私はもともと深く考える人間ではなかった。それが文学に変えられ、今ではある程度深みのある思考ができるようになった。しかし、この本は私のキャパシティを大きく上回る難解さである。  ではカミュの用いる基本的な単語について記述する。  まず「不条理」…これは理屈にならぬ理屈、だったり、筋道の通らぬ論証、と解釈できる(新潮文庫:清水徹の訳注より)。これ以上の抽

          不条理と反抗―カミュを繙読する