カタユリ

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晩夏

夏の夕暮れ、蝉の鳴き声が鈴虫に移り変わる中 私は夜の散歩で、夏の晩を感じた。 夏休み最終日の様な締めに追われた忙しさと 夏を遊び残した寂しさ、 秋になり、草木が枯れたら育ったものが実るかなと 少しずつ秋色に染まる景色を眺めて、 秋を想った。

    • 胡蝶蘭

      先の、盂蘭盆に胡蝶蘭が届いた、 仏壇のそば、白い卓布の脇に 真っ白な花を咲かせ、 そこは俗世と切り離されたようであった。 胡蝶は人の魂を浄土へ運んでゆくそうである。 昔の人は洒落たことを考えるな、 そう思いながら萎れて壊れてしまいそうな 蘭の花を覗いた。

      • 風鈴

        夏になると風の音を聞きたくなる 涼げな音色を奏でるのを聞いていると 暑さの中に一瞬の静けさを感じるからだ。 私は久しぶりに近所の神社を参拝していた。 そこは暑くになるとあまたの数の風鈴が参道に並ぶ。 ー風の通り道だー そう思いながら夏を祈りに歩き出した。

        • 紫陽花

          そろそろ祖父の一周忌である。 しとしとと雨が降るこの時期 私はカタツムリのようにじっとりと家に籠り 過ごしていた 連日の様に、お焼香をあげに来る客人を片目に 煙の立ちこめる中顔を出しては挨拶をする日々を送っていた ある日、近親の叔母が家に立寄った 叔母は今年で還暦を迎える。真っ青なワンピースを纏い 叔父を連れ、近況報告がてら来たようだ。 まるで、紫陽花のような人だな 私はそう思いながら 煙の匂いが染み付いた洋服を衣替えしなくてはなと 洗濯機を回す