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質問123:初級者のボールに合わせてしまって自分の本来のプレーが鈍らないか不安

質問させて頂くのは2回目です。私は卓球選手なのですが、アルバイトでコーチの仕事をしています。コーチというかお相手といった感じです。初級者のボールに合わせてしまって自分の本来のプレーが鈍らないか不安です。競技力向上のためにはコーチはやらないほうがいいのでしょうか?

回答


▶英語をしゃべれない英語教師

 
確かにコーチ役をやっていると、競技者としてゲームでも、つい対戦相手の打ちやすいところへ返球してしまうというプレーをやりがちかもしれません。
 
返球コースもそうですし、相手のペースに合わせてあげたりもする。
 
相手に時間がなければゆっくり打ち返したり、速い打ち合いには速く応じて合わせてあげたり。
 
英語をしゃべれない英語教師みたいなものです。
 
「授業」はこなせるけど、「実践」では通用しない
 

▶ラリーの本質は「続ける」のではなく「続いてしまう」

 
しかし卓球にせよテニスにせよゲームでは、ラリーを続けることではなく、1球でも相手に続けさせないようにして仕留めるのが基本的には目標。
 
「基本的には」と但し書きするのは、1球では決め切れない場合、1本つないで相手からの甘い返球を誘うという組み立てもあるからです。
 
ラリーの本質は、相手の打ちやすいところに返して打ち続けるのではなくて、相手の打ちにくいところへ返してなお、「続いてしまう」という打ち合いです。
 
オリンピックの卓球競技を視聴していると、ラリーが速すぎてなお、決まらないから、まさに「続いてしまっている」印象です。
 

▶相手と「生のコミュニケーション」を取る


なので、コーチ役を務めるのと同時に、やはり相手の打ちにくいところに打つ、ペースを変えたりする、競技者としての練習も併せて取り組まれるとよいと思います。
 
またそういう練習を通じて、相手も上達します。
 
英語教育で言えば、教科書を読むだけではなく、相手と生のコミュニケーションを取るのです(テニスと英会話のそっくりすぎる共通点と、「10倍速超」の習得法)。
 
プロテニスプレーヤーが相手のコーチ役ばかりしていたら、やはりツアーでは通用しませんからね。
 

▶派手な高速ラリーも地道な「1000球ラリー」の賜物


とはいえプロテニス選手でも、現役を引退してコーチを経験してからのほうが上手くなった、現役時代は打てなかったショットが打てるようになった、という元プロテニスプレーヤーがたくさんいます。
 
コーチ役も「勉強になる」と前向きな気持ちで務めると、前向きな進歩になると思います。
 
先述したように一発で仕留めるばかりではなく、相手の打ちやすいコースや打ちやすいペースに合わせるラリー練習も有効。
 
オリンピックで目の当たりにする卓球選手の派手な高速ラリーも、「1000球ラリー」などの地道な練習があっての賜物ですからね。

ラリー練習で相手の取りにくいところへばかり返していたら、それはやはり練習になりません。
 
一方新しい経験を積むチャレンジにより、人は変化・進化します。
 
なので相手役をしないほうがいいということは、ありません。
 
たとえばテニスでは、ロジャー・フェデラーはヒッティングパートナーとして、ジュニア時代の錦織圭を指名したことがありました。
 
フェデラーにとっての練習以上に、錦織にとってよい経験だったに違いありません。
 

▶教える側が教わっている

 
私もテニスの上達について、このテニスゼロを通じていろいろお伝えしていますけれども、実は読者さんから私の方こそ、いろいろ教えてもらっています。
 
これは決して、謙遜やきれいごとを言っているのではなくて、本当に情報というのは、発信するところに集まってくるのです。
 
テレビ番組に情報が寄せられるのは、情報を発信しているからです。
 
情報発信量が少なければ、私のような中年男へ積極的に情報をくれる人は多くいません。
 
もちろん私が教えてもらうからといって、読者が上手くいかなかった場合は(私の場合、具体的には読者のテニス上達が達成されなければ)、私が応じなければなりません。
 
それが情報発信者の「責任です。
 

▶求められていない「アドバイス」は厳禁

 
最後にひとつだけ私からお願いしたいのは、求められてもいない「アドバイス」は不要。
 
不要どころか「厳禁」とさえ言えます。
 
立場の違いはあるにせよ、コーチと生徒は、「人として対等」。
 
アドバイスを「してあげる」ふうになると、ややもすれば上下関係になってしまいがちです。
 
人は変えられない」の教えのとおり、求められてもいないアドバイスによって相手が、「悪く変わる」ことはあったとしても、「良く変わる」ことなどありません
 

▶「教え魔」の自己肯定感


卓球でもテニスでも仕事でも家庭でも、コーチでも上司でも親でも、「教え魔」はいます。
 
「良かれと思って」「親切心で」とは言うけれど、彼ら彼女たちは自己肯定感が低いからこそ、上に立ちたがります。
 
「ありのままの自分」では自分を肯定できないから、人に教える優越感を通じて、自分の価値を確認したいのです。
 
しかしそれは求められてない以上、あたかも上に立って、下(と決めつけている相手)を踏みつけているのです。

▶教えなければ「自然上達」は起こる

 
もちろん、求められたアドバイスには応じるのが、コーチや上司、親、そして情報発信者の「責任」。
 
そこの峻別には、自覚的でいてもらえればと思います。
 
カバの母さんではないですが、優れたコーチはあえて教えません
 
木の上に立って見ていれば、学ぶ側は「素のまま真っ直ぐ」でいられるから、驚異的な「自然上達」が起こります

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero