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質問103:どうやったら周りを気にせずプレーできる?

高校でテニスを一年間やっているんですが、僕だけまったくうまくなりません。
球だしの時は他の部員に“動きがかたい”と言われ、後輩にまで馬鹿にされています。

どうやったら周りを気にせずに無意識にプレーができますか?周りが誰もいないオートテニスでビデオで撮影したところ、そんなに動きがかたくありませんでした。しかし、これでは全く意味がありません。

アドバイスをお願いします。

回答


▶フォームを意識すると出る「わざとらしさ」

 
動きがかたいのは、フォームを意識しながら打つときに、よく見受けられる症状です。
 
たとえば「手首を使う」「ヒザを曲げ伸ばす」「腰をひねる」などというフォームへの意識は、それらが「手首限定」「ヒザ限定」「腰限定」の部分的なアドバイスですから、何も意識せずに全体が連動してバランスよく振れている調和の取れたスイングに、「わざとらしさ」を強いるのです。
 
オートテニスでは、アドバイスする人がおらずノビノビと振れて、そういうわざとらしい動作が出にくかったのかもしれません。
 
とはいえ、そんな感じでプレーするのが、最もご自身らしいのですけれども。
 

▶「人目」は不安や緊張を強いる最大級の要因


それから、オートテニスではそんなに硬くないのに、球出しのときには、ほかの部員に硬いと言われた。
 
それは、仰せのとおり、「周り(人目)」が気なっていたのです。
 
人目が気になるというのは、実際には人に見られていない日常生活でも、緊張を招いたり、不安を煽ったりする最大級の要因です。
 
「あの人に嫌われたのではないか?」などという不安は、あの人に見られていなくても気になる「人目」と言えます。
  

▶自分のテニスが人にどう見られるか……

 
テニスでは、試合はもちろん練習も、人に見られるのがデフォルトですから、なおさらです。
 
今回の件では実際に、球出しされたボールを打ち返す自分のプレーが、ほかの部員に「見られていた」ケースです。
 
その自分のプレーが、ほかの部員に、後輩に、どう思われるだろうかと考える不安。
 
その緊張感が、硬い動きとなって現れたのでしょう。
 
ナチュラルな動きができていたオートテニスでは、人目から自由だったから、ご自身らしい動きが現れました

「しかし、これでは全く意味がない」とおっしゃる。

具体的な対策を提案します。

▶馬鹿にしてくる相手に「ギブ」する

 
どうすれば、人目から自由になれるでしょうか?
 
人目が気になるのは、受ける(テイクする)ばかりだからです。
 
そうではなくて、与える・施す(ギブする)のです。
 
つまり、視線を自分に向けるのではなく、視座を180度引っくり返して、動きが硬いとわざわざ指摘してきたり、馬鹿にしてきたりする後輩などの、相手側へ向けるのです。
 

▶馬鹿にしてくる相手に「集中」する

 
具体的には相手の表情や身振り手振り、あるいは口調や声のトーンなどに、できるだけ細かく観察眼を向け(与え)ます
 
薄ら笑う表情だったり、こちらを直視できずに目が泳いだり、声が上ずったりするなどの変化に、微に入り細を穿ち、集中します。
 
すると、「馬鹿にする相手は自分が優位に立ちたいだけなんだな」などという相手の怖れが見て取れるから、こちらに余裕が生まれます
 
集中せずに何となく対応していると、そういう現実的な情報が読み取れず、自分のなかの思い込みだけで馬鹿にされた「腹立たしさ」が募りかねません
 

▶自分が幸福のとき、人は人を馬鹿にはしない

 
馬鹿にしてくる相手は、これは断言しますけれども、怖れているのです。
 
なぜなら自分が本当に幸せなら、わざわざ人を馬鹿にしたりする必要はないからです。
 
自分の結婚式の当日に、人を馬鹿にする人なんて、滅多にいません。
 
それは幸せの絶頂のさなかだからです。
 
ウエディングベルが鳴るさなか、「くたばっちまえ」と心の中で呟いたのはもちろん結婚式の当事者ではなくて、招かれた式場の最後列に座る参列者のほうだったはずです。

 

▶人の幸せが「不安を煽る」とき

 
ただ、人の幸せを目の当たりにして参列者が「そう思う」のも、人として当然の反応だったりします。
 
それは他人の幸せを見て「それに比べて自分はどうなるのだろうか……」といった不安が煽られるからです。
 
「人の幸せは喜ぶものだ」という押しつけが強いと、強ければ強いほど、押しつぶされてしまいかねません。

むしろ「人の幸せを喜べない自分は、なんて器が小さいのだろう」などと自己肯定感を損ねます。

シュガーの『ウエディングベル』を改めて視聴して、すごい歌詞だと感動したしだいです。

▶木梨憲武の「素直」


「人の幸せは喜ぶものだ」

その圧力がとりわけ、日本では強いと私は感じています。
 
とんねるずの木梨憲武が帝京高校サッカー部時代、レギュラーから外されて、スタンドで応援する立場となった。
 
彼は素直(素のまま真っ直ぐ)に吐露します。
 
「(帝京が)負けちまえ」と。
 
何もありのままの自分の気持ちを、偽らなくていいのです。
 
彼は「自己肯定感が高い」と思います。
  

▶馬鹿にしてくる相手は「不幸のさなか」

 
自分が本当に幸福のとき、他人を馬鹿にしたりしないとお伝えしています。
 
こちらでご紹介したヤナ・ノボトナ。
 
女王シュテフィ・グラフを、あと一歩のところまで追い詰めながらも大逆転を許し、再びウイルブルドン決勝の舞台を踏むと、今度は天才少女として台頭してきたマルチナ・ヒンギスにも苦杯をなめた。
 
翌年、3度目の正直でついに優勝した暁に、負かした相手のナタリー・トージアに対して「動きが硬かったわね」などといって馬鹿にするとは、到底考えられません
 
ノボトナは、幸せの絶頂のさなかにいたからです。
 
綺麗事ではありません。
 
木梨憲武が、不幸なときに「負けちまえ」、ノボトナが、幸福のときにトージアを讃える。
 
人として当然の反応です。
 
むしろ「人の幸せは喜ぶべきだ」こそ、綺麗事です。
 
ですから馬鹿にしてくる相手というのは、その度合いが強ければ強いほど、「不幸のさなかなのだ」と納得しておくと、さらにご自身は余裕が持てます
 
馬鹿にする表情の中に潜む、上ずった声、荒げた態度、不安げな様子が見て取れるはずです。
 

▶自身も怖れているのです

 
一方で、幸せと怖れは光と影の相関です。
 
人に見られて動きが硬くなるのは、それは、ほかの誰でもないご自身が、他人を馬鹿にする目で見ている裏返しかもしれません。
 
ご自身も、怖れているのです。
 
というのも、動きが固いという部員の指摘に対して、「馬鹿にしやがって!」などという感じ方になるならば、それは「攻撃されるかもしれない」不安に怯えているのです。
 
もしかすると、部員によるご自身を思いやったアドバイスだったかもしれません(求めてもいないアドバイスは、教え魔よろしく暴力ですけどね)。
 
ですから「怖れないテニス」
  

▶馬鹿にされても馬鹿にしない

 
繰り返しになりますが、もし本当に相手が馬鹿にしてきたのだとしたら、集中して現実的な情報収集を行ない、「相手はよっぽど怖れているんだな」と客観視して落ち着ければ、こちらに余裕が生まれます
 
すると、馬鹿にしてくる相手を「お気の毒」とさえ、思いやれます。
 
、やる、根持ちなどを司る大事なが、文字どおり「毒されている」のですから。
 
だからといって、相手に向かって「よっぽど不幸なんだね」などと言い返す必要はありません。
 
そうすると、今度はご自身が「馬鹿にする不幸の側」に回ってしまうからです。
 

▶テニスも「ギブ」でプレーすると上手くいく

 
視線をギブするというのは、実はテニスのプレーそのものにも役立ちます
 
心の視線を自分に向けて「人からどう見られているだろうか」と不安視するのではなく、目の視線をボールに向けるのです。
 
そうすれば、「自分は人からどう見られているだろう」という他人の視線から、自由になれます。
 
何しろ「自分は人からどう…」ではなくて、視線は「自分からボールへ」向けられているのですからね。

ベクトルを逆転できます。

「そうはいっても気になる」というなら、相手の表情や声色、トーンなどを如実に観察したのと同じように、微に入り細に穿って、ボールの「回転」や「毛羽」を見切ってください
 
人目が気になる思いを、集中力を以って打ち消すことができるのです。
 
そうするとこちらでお伝えしている「受け身の秘められた真価」が現れます。

「ギブ」と「受け身」というと、逆のような印象かもしれませんけれども、「ギブ」すると「テイク」するというのが循環の法則です。

▶ナチュラルな動きが現れる

 
仮に、周りの人がフォームや動き方に関してアドバイスしてきて、それに従わざるをえないのであれば(従う必要もないと思いますが)、それは素振りのとき、ボールを打たない練習のときだけにとどめてもらい、実際に打つときには、フォームや動き方についてご自身は、一切気にしないようにしてください。
 
そうして、人目がないオートテニスで確認されたご自身本来のナチュラルな動きが現れれば、やがて他人もとやかく言ってこなくなるでしょう。
 
ご自身が、人のアドバイスをきちんと聞く性格だからこそ、周りよりも上達が遅れてしまいます。
 
テニスの実用書やネットのテニスレッスン動画などをよくご覧になって、研究熱心なのかもしれません。
 
でも周りのテニスが上手くなっていく人は、そういう研究は、案外していないのです。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero