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『ウエスト・サイド・ストーリー』見た直後の雑記

スティーヴン・スピルバーグによる『ウエスト・サイド・ストーリー』。

もちろん、1961年に公開したロバート・ワイズとジェームズ・ロビンズによる『ウエスト・サイド物語』のリメイクである。
それも時代設定・基本プロットはそのままにリメイクされた。

見る前は2020年代の今、1960年代のミュージカル映画をリメイクする意味はなんなのか?
謎はこの一点に尽きた。
もう一つ加えると、古今東西のミュージカル映画を好み、その70%が大好物であるボクにとって1961年版の『ウエスト・サイド物語』は残りの30%に当たるミュージカル映画で、それ以前のタップの技と歌で見せた50年代のミュージカル映画から新しく、斬新に見せ、且つ革命的なミュージカル映画ではあったが、後追いでしかもDVDや配信でしか見ていないボクには妙に古臭く、不自然で、ちょっと恥ずかしい演出に思えた。それが1961年版の『ウエスト・サイド物語』だった。


それが、スクリーンでスピルバーグによる『ウエスト・サイド・ストーリー』を見始めてすぐ、いろいろと分かった。

まず、日本映画で言う所の2006年版の『犬神家の一族』や2007年版『椿三十郎』のようなほぼコピーリメイク映画とは違い、スピルバーグによるアレンジがはっきりしながら再現する部分は再現する、そういうリメイクだった。

おそらく、スティーヴン・スピルバーグの目的は2020年代の現代の映画ファンに『ウエスト・サイド物語』をスクリーンで見ていただくこと。これじゃないかと思う。
今回『ウエスト・サイド・ストーリー』を見て、1961年版『ウエスト・サイド物語』の再現シーンもスクリーンで見ることで非常に格好良く、生き生きと感じられた。1961年版と時代設定は変わらないハズなのに“古臭い”とは思わず、むしろ“レトロによる味わい”に変わり、楽しめた。
本当にわずか台詞を多くしたり、
1961年版の時は野郎ばかりでむさ苦しく、どこかダサかったジェッツやシャークスもわずかにカッコよく見える。

何よりも一番カッコ良かったのは歌とダンスである。
やはりミュージカル映画の肝は歌とダンスにある。1961年版はやたらとクルクル、ザワザワ踊るように見えたダンスも、若干クルクルを減らしながら、クルクルも手足の伸ばし、動きのキレを良くすることで、完璧に名シーンとしてリメイクされた。
圧巻だったのは前半のパーティーでのジェッツとシャークスに分かれて踊る「ブルース、プロムナード」と「マンボ」のシーン、中盤の「アメリカ」、後半の決闘前の「トゥナイト」。どれも最高のキレ、男女のパート別、歌の良さなど1961年版を遥かに上回っている。

それと本作は見る前に昨年公開されたミュージカル映画『イン・ザ・ハイツ』を見ていると感慨深さが増し増しである。どちらも移民、異邦人の物語で、土地の追い立て問題、移民居住区のアパート、窓際のラブストーリーなど通じるものがある。もちろん、後から作られた『イン・ザ・ハイツ』の方がおそらく『ウエスト・サイド物語』にインスパイアを受けた可能性が高いから、親和性が高いのも頷ける。

ミュージカル映画は作品が違えど、ミュージカル映画史に刻む意味合いで繋がりを持つ。現代に本格的なミュージカル映画を蘇らせたデミアン・チャゼル監督の『ラ・ラ・ランド』。本格的なミュージカルでありながら、数々の斬新な演出を見せた異邦人のミュージカル映画『イン・ザ・ハイツ』。そして、スピルバーグの『ウエスト・サイド・ストーリー』はクラシックなミュージカル映画をちょい足しして、歌・ダンスを豪快にし、敢えてそのまま見せた。『ウエスト・サイド物語』を『ウエスト・サイド・ストーリー』に蘇らせた。

あらゆる意味で大胆なリメイクで強烈なミュージカル映画だったスティーヴン・スピルバーグの『ウエスト・サイド・ストーリー』。今年のアカデミー賞のダークホース、いや案外賞を受賞するかも。間違いないのは、『ラ・ラ・ランド』、『イン・ザ・ハイツ』といったミュージカル映画史に並ぶ名作にまた一つ並ぶ作品が出来たことである。

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