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3分で読める小説

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1〜3分で読める!〜1800字以内の創作小説
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#短編小説

【1話完結小説】隣人

【1話完結小説】隣人

ある春の朝、私はむずがる3歳の息子をマンション下の公園に連れて行こうといつもより早い時間帯に玄関を出た。
出たところでちょうど隣室のドアも開いた。このマンションに越して3ヶ月、隣人と初めての遭遇だった。今から出勤するのだろう。パンツスーツとヒールが板についたアラフォーと思われる女性だ。
「あ、おはようございます」
思わず声をかける。何度か引っ越しの挨拶に伺ったのだが、タイミングが悪く今まで会うこと

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【1話完結小説】お母さん型AI

【1話完結小説】お母さん型AI

家に帰るとお母さん型AIが台所から明るく声をかけてきた。
「お帰りなさい!今日の夕飯はカレーですよ」
言いながら、手慣れた仕草でテーブルの上にミルクたっぷりのカフェオレと手作りクッキーを素早く並べる。
「今日も疲れたでしょうから、まずはおやつでもどうぞ。食べる前にちゃんと手を洗ってくださいね」
言われなくても外から帰れば当然手ぐらい洗うが…お母さん型AIは帰ってきた家人にそのように一声かけるプログ

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【1話完結小説】感情

【1話完結小説】感情

パタン。
「ふぅ」

読み終えたばかりの小説を閉じて僕は思わずため息をついた。

家族愛がテーマの短編集だった。どの話もとても良くできていて、読書中何度も涙が溢れた。
なのにどうして。
どうして僕はそれらを他人事だと捉えてしまうのだろう。自分と家族の間には、小説の中みたいな愛や思いやりに満ちた出来事は起こり得ないと考えてしまう。
小説を読みながら泣くことはあっても、リアルの世界でそんな風に大きく感

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【1話完結小説】良い母親

【1話完結小説】良い母親

子供を持ってからずっと、「良い母親」の影が私を執拗に追ってくる。

そいつは時に私の母親の顔だったり、近所のママ友の顔だったり、情報番組のコメンテーターの顔で私をじっとりと見つめてくるのだった。
私が子育てで何か失敗をする度に、「昔の母親はもっと我慢強かった」「そんな接し方じゃ全然言うこと聞かないでしょ」「最近のお母さんは孤立しがちだから地域コミュニティをもっと活用すべきですね」としたり顔でまくし

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【1話完結小説】木瓜

【1話完結小説】木瓜

介護ベッドの上から爺さんが叫ぶ。
「婆さんや、ご飯はまだかね」
隣の部屋からヨタヨタと杖をついた婆さんが近付いてきて優しく答える。
「嫌ですよお爺さん、さっき食べたじゃないですか」
「何!?ワシはまだ食っとらんぞ!昨日からもうずっと食っとらんぞ!さてはお前ワシを殺すつもりだな!?この人でなしが!」
瞬間湯沸かし器のごとく急に激高した爺さんは側にあった湯呑みを掴み婆さんに投げつけようとしたが、その腕

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【1話完結小説】何者

【1話完結小説】何者

彼女がぷりぷり怒りながらやって来てまくしたてる。
「知らんけど、が流行ってるんやって。よその地域の言葉を面白おかしく使わんで欲しいわ。ホンマ腹立つ。大体軽い気持ちで“使ってる私(俺)、おもろない?”って思ってんのが見え見えでめっちゃムカつく!そんなんに飛びつく人って絶対自己顕示欲強いアホやねんで。ほんで飽きたらすぐ使わんくなんねやろ」




…アレ?僕は不思議に思って尋ねた。
「この流れだ

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【1話完結小説】Trick or Treat or …

【1話完結小説】Trick or Treat or …

気だるい仕事帰り。僕はホームセンターに寄ってからいつもより少し遅い時間に最寄駅に降り立った。ライトアップされた駅前通りは浮かれた若者達の仮装行列でごった返している。今日はハロウィン。いつからこんな得体の知れない行事が市民権を得たのだろう。何が楽しいのかちっとも分からない、最低最悪の日だ。

若者達に圧倒されつつ駅前通りを抜け、ふらふらと住宅街に辿り着く。さすがにここまで来ると、ハロウィンの喧騒が嘘

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【1話完結小説】リクエスト

晩御飯の鍋が煮えるまで少し暇だったのでスマホをいじっていると、写真フォルダに覚えのない動画が入っていた。3分間のその動画を再生してみる。どうやら、今日の夕方スーパーへ行くため運転している私を助手席から撮影したものらしい。

「…あっぶな!このオバハンなんで急に車線変更すんのよ、下手くそは運転すな」
「お母さん口悪すぎ」

「まったく、雨降ってるし寒いわー」
「そうだね。僕、夜はお鍋が食べたいな」

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【1話完結小説】プレッピー

【1話完結小説】プレッピー

耳を澄ませてよくよく聞いていると
クルックー
と鳴いている公園の鳩たちの中に一羽だけ
プレッピー
と鳴いている鳩がいた。きっと良いところの出身なのだろう。育ちの良さを感じさせる佇まい。優等生的なカラーリング。
どうか周りに流されずそのままを貫いて欲しいと願うばかりだったが、一週間後、公園へ行くとどの鳩もみんな
クルックー
と鳴いていた。
やはり生き物というのは周りに染まってしまうものなのか…と僕が

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【1話完結小説】因果

【1話完結小説】因果

「この子達がいるから貴女は連れて行けないの。ごめんね」
弟1と手を繋ぎ、弟2を抱っこ紐で体にくくりつけ、母は笑顔で言った。

待って…!待って…!お母さん…!!

30年後。

母が生活保護受給の申請をしたらしく、役所が娘である私を探し当て経済的援助を打診してきた。30年ぶりに会った母は、私にとっては見知らぬおばさんも同然だった。一応孫を見せるつもりで息子達を連れて来たものの、母は興味もないようで

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【1話完結小説】存在認識

【1話完結小説】存在認識

小学校が小学校であるのは、そこに小学生や先生達が居て、彼らが「僕は小学生だ」「私は小学校教師だ」「ここは小学校である」と認識しているからにすぎない。
その証拠に、放課後になって生徒達が帰り、スポ少の野球少年達が帰り、遅くまで明日の授業の準備で残っていた最後の先生が引き上げてしまうと、途端にソレは小学校ではなくなってしまう。ソレを“小学校”として見る者が一人もいなくなった時、ソレが小学校でいなければ

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【1話完結小説】Q.E.D.

【1話完結小説】Q.E.D.

 僕はキミにとってポケットティッシュみたいな存在だ。
 いつも探せば必ずその辺にあるから大事だとも思わないし、最悪なくなっても困らない。しかも使い勝手で言えばBOXティッシュの方が断然便利だから、出先だとか本当の本当に困った時しか頼りにしない。気が付けばいつも鞄の底でヨレヨレになってて、そうなるともうみすぼらしいから新しいポケットティッシュと交換するんだ。ただ、使いもせずに捨ててしまうのは何となく

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【1話完結小説】西瓜人生

【1話完結小説】西瓜人生

僕の人生は、まるで種の多い西瓜を食っているようだと思う。思い切り楽しみたくても、口中で種を選り分けるのに手一杯。そしていくら慎重にやっても失敗して、時にガリリと固くて苦い種を噛まされてしまう。そんなことの繰り返しだ。

そして最近、僕はもっとショックなことに気付いてしまった。周りの奴らをよく見れば、そもそも西瓜じゃなく苺やメロンを手にして優雅に食っているじゃあないか。奴らは種のことなど気にせずに思

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【1話完結小説】蝉

【1話完結小説】蝉

毎年夏になると蝉の鳴き声がして、「ああ夏が来たな」なんてぼんやり思うものだが、今年の蝉の声は少し違った。

「ほらほら夏が始まるよ!なんでもできる夏が始まるよ!君がその気になればなんだってできる夏がさ!いつまでも暗い部屋にこもってないで早く家から飛び出そうよ!僕らもずっと暗い土の中にいたから分かるんだけどさ、やっぱり明るくて広い外はサイコーなんだぜ!好き好んでそんな暗い部屋にずっといるヤツの気がし

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