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【1話完結小説】因果

「この子達がいるから貴女は連れて行けないの。ごめんね」
弟1と手を繋ぎ、弟2を抱っこ紐で体にくくりつけ、母は笑顔で言った。

待って…!待って…!お母さん…!!

30年後。

母が生活保護受給の申請をしたらしく、役所が娘である私を探し当て経済的援助を打診してきた。30年ぶりに会った母は、私にとっては見知らぬおばさんも同然だった。一応孫を見せるつもりで息子達を連れて来たものの、母は興味もないようで全く話は弾まなかった。早々に本題を切り出す。

「この子達がいるからお母さんの面倒は見られないの。ごめんね」
息子1と手を繋ぎ、息子2を抱っこ紐で体にくくりつけ、私は言った。

「…なんだかこのシーン、デジャヴだわね」
母が卑屈な笑いを浮かべた。イライラした。

「…デジャヴじゃないよ。こういうのは因果応報って言うんだよ。もう二度と会うこともないと思う」
そう告げると私は母の自宅アパートから逃げるように立ち去った。

ぐずる息子達をなだめすかして、夕暮れの道、家路を急ぐ。母の住むみすぼらしいアパートから早く、少しでも早く離れたかった。

因果応報。…果たして私が今日母を見捨てたこの因果は、いつどのように我が身に巡ってくるのだろうか。カラスの声が気持ち悪いくらいに響き渡る。息子達が驚いて泣き出す。私も不意に泣きたくなった。その場に立ち尽くす。どうすればよかったのだろう。地面がぐらりと傾いた。秋の日暮れはいやに早い。

振り返っても闇、行く先も闇____。

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