マガジンのカバー画像

聖書と信

219
聖書はひとを生かすもの、という思いこみだけで、お薦めします。信仰というと引かれそうですが、信頼などの信として、ひとや世界を大切にする思いが、少しでも重なったらステキだな、と思いつ…
運営しているクリエイター

2023年10月の記事一覧

見えざる教会

見えざる教会

聖書を直接読めるということは、古代においては特別な能力の持ち主であっただろう。殆どの人にとって、聖書は「聞く」ものだったと思われる。いまでも、礼拝説教を私たちは「聞く」。
 
音声は、時間と共に一方向に届けられる。絵画と違って、音楽はその芸術性において、どうしても時間性が関わってくる。音声も同様だ。聖書を目で読むとなると、1行前に戻ることもできるが、聞くとなると、そうはいかない。つまりは、ぼーっと

もっとみる
『主が、新しい歌を 加藤さゆり説教集』(加藤常昭編・教文館)

『主が、新しい歌を 加藤さゆり説教集』(加藤常昭編・教文館)

説教者を知らなくても、編者の名前から検討がつくだろうと思う。日本で説教を最も重視し、説教塾を立て、何百人もの牧師の説教に対する考え方をつくりかえた加藤常昭氏の妻である。
 
2014年8月、本書の発行後間もなく召された。
 
1964年の大きな手術以来、多くの病を担い続け、もはや治療不可能という事態になり、本書が編まれた。夫常昭氏の、感情溢れんばかりの、しかし結局は信仰に溢れた形の、「まえがき」や

もっとみる
化学反応

化学反応

CHEMISTRY(ケミストリー)というツインボーカルユニットがある。美しいハーモニーと共に、数々の名曲を世にプレゼントしてくれた。20年以上の音楽活動歴がある。一時数年間、活動休止の時期があったが、近年再び2人ででも活動している。「男子ボーカリストオーディション」で選ばれた2人が組まれてCHEMISTRYとなったのだが、それは「化学」の意味をもつ言葉である。つまり、1+1=2でしかなかったことが

もっとみる
『人権思想とキリスト教』(森島豊・教文館)

『人権思想とキリスト教』(森島豊・教文館)

雑誌「福音と世界」で著者を知った。「人権」というキーワードと、聖書への関心が、ほどよくブレンドされているように感じた。その筆者の本があるというので、読んでみたいと思った。そういうわけである。
 
社会学については私は詳しいわけではない。しかし日本において「人権」という言葉が、何か欧米とは違うような、もやもやとした感覚を抱えていたから、ここで一度「人権」というものについての考察から学んでみたい、と思

もっとみる
『凜として生きる』(平塚敬一・教文館)

『凜として生きる』(平塚敬一・教文館)

キリスト者として、何かしら重荷を負うというものがあるという。どうしてだか分からないが、そのことのために心血を注ぐしかない、という思いで生きるのだ。生きることが、考えることが、すべてそれのために営まれている、という気持ちになる。
 
著者にとり、「教育」がその重荷であるのだろう。しかも、「キリスト教教育」である。キリスト教を信じさせる教育だという意味ではない。教育する側が、キリスト教精神を以て教えて

もっとみる
安息日とは何か

安息日とは何か

安息日とは何だろう。ずっと気になっている。そもそも「安息日」の「日」は何と読むのがよいのだろうか。聖書により、「び」「にち」「じつ」と、なんと3種類あるのだ。
 
もちろん、それは「休みの日」である。キリスト教徒は、日曜日を安息日だと呼ぶ。元々は、旧約聖書の時代に、神が世界を創造したときに7日目を休んだことから、7日目を人間も安息せよと命じたことに基づく。但し、このときには土曜日が安息日であった。

もっとみる
書くこと

書くこと

「問題をよく読みなさい」とだけ生徒に言っても、「読んでるよ」としか答えようがない。しかし、現に読み間違いがあり、なかなかなくならない。
 
文が実は読めていない、という衝撃的な事実を提示したことで、『教科書が読めない子どもたち』といった本は、一時的に話題を蒔くことができた。だが、事の深刻さは世を変えるほどには至っていないように見える。その本を著した新井紀子氏は、AIの研究家である。その研究過程で、

もっとみる