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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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#コロナ禍

『凜として生きる』(平塚敬一・教文館)

『凜として生きる』(平塚敬一・教文館)

キリスト者として、何かしら重荷を負うというものがあるという。どうしてだか分からないが、そのことのために心血を注ぐしかない、という思いで生きるのだ。生きることが、考えることが、すべてそれのために営まれている、という気持ちになる。
 
著者にとり、「教育」がその重荷であるのだろう。しかも、「キリスト教教育」である。キリスト教を信じさせる教育だという意味ではない。教育する側が、キリスト教精神を以て教えて

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『目的への抵抗』(國分功一郎・新潮新書)

『目的への抵抗』(國分功一郎・新潮新書)

中動態の話からこの著者の本に触れ、その見るアングルが楽しく、また説き聞かせる口調が読みやすいせいもあり、何冊か拝読してきた。その中動態が責任とつながるという切り口は、とてもフレッシュであり、かつ考えさせられた。この著者により、新たにまた新書という手軽に入手できる本が発行されたので、すぐに読みたいと思った。
 
よく見ると「シリーズ哲学講話」とあるので、また続きが出てくることを期待しているが、さしあ

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『説教 十字架上の七つの言葉』(平野克己・キリスト新聞社)

『説教 十字架上の七つの言葉』(平野克己・キリスト新聞社)

ようやく手に入ったのが、5月。3月の発行以来、待ち焦がれていた。
 
副題に「イエスの叫びに教会は建つ」とあるが、すべて看板に偽りなしであった。加藤常昭先生の弟子として、日本の説教をいま背負っているような人の、実に意外なことだが、初の説教集である。これを期待しないで、何を期待すればよいのであろうか。
 
時は2020年、イースターを前にした2か月の間。覚えておいでだろうか、新型コロナウイルス感染症

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『光を仰いで』(朝岡勝・いのちのことば社)

『光を仰いで』(朝岡勝・いのちのことば社)

コロナ禍の中で出版へと至ったことは間違いない。そのすべての願いが、コロナ禍に結びつけられる必要はないが、間違いなく半分は、コロナ禍における教会に注がれる神の力を思っている。残りの半分は、やはりその影響の中であることが多いであろう、個人の心に向けてである。「おわりに」で著者はそのような意味のことを記している。

 

2021年のクリスマス期に語られたメッセージが、本書の殆どを占めている。それぞれは

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『新型コロナと向き合う』(横倉義武・岩波新書)

『新型コロナと向き合う』(横倉義武・岩波新書)

2020年半ばまで日本医師会の会長をしていた人が、2020年からのコロナ禍における医療活動の実情を明らかにした新書である。発行は2021年10月。ニュースの表には現れてこない政府と医師会との関係ややりとりも随所で描かれており、貴重な記録となっていると見受けられる。
 
そして特に「かかりつけ医」という立場から、最後は今後の医療との関わりとして、「かかりつけ医」の重要さを力説するものとなっている。

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『現代思想2020年11月号 特集・ワクチンを考える』(青土社)

『現代思想2020年11月号 特集・ワクチンを考える』(青土社)

様々な論者が力のこもった文章を載せてくれる「現代思想」、テーマに関心が強ければ時々買うことにしている。新型コロナウイルスの感染拡大の年の秋に編まれたそのテーマは、ズバリ「ワクチン」。その後、ワクチンが供給され始めた頃に私がこれを読みたいと思い、手配した。が、実はこの編集がなされたときには、ワクチンが本当に接種されるのかどうか、未定だったのだ。それは常識的にはそうである。あまりにも治験期間が短すぎる

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『現代思想2021 vol.49-4 教育の分岐点』(青土社)

『現代思想2021 vol.49-4 教育の分岐点』(青土社)

共通テストや35人学級というふうに大きく変化を見た昨今の教育界。さらに、2020年春からの新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一斉休校という、前代未聞の事態を経験して、教育の現場はどうなっているのか。一種の雑誌であるから、全体としてまとまりがあるわけではないが、多岐にわたる声が集められる。特別な主張を手を変え品を変え出してくるのではないが、編集の方針というものはあるだろうから、一定の方向性を保ちつつ

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